楽天Kドリームスプレゼンツ「プッシュアワード」。
8月23日、『2025全日本自転車競技選手権大会トラック』で史上初の開催がされた。
「PUSH(プッシュ)」とは?
プッシュとは、スプリント種目の予選として行われる200mフライングタイムトライアル(200mFTT:ハロン)のスタートで、選手をトラック上に送り込むため、コーチやチームスタッフが選手を押すこと。
「コーチのプッシュがタイムへ影響する」という世界トップ選手の声もあり、実はレースにおいて非常に重要な役割を持つ(と一部では言われている)。
なお2024年から競技ルールの変更により、「バンクの下部」からプッシュはスタートし「安全地帯のみ(ブルーバンドまで)、パーシュートラインを越えてはならない」範囲でのみプッシュが可能である。
プッシュアワードとは
そんな「プッシュ」を何となくのフィーリングで採点し、勝手に賞を授与し始めた事が起源のプッシュアワード。国際大会では各国のコーチがそれぞれ独自のスタイルでプッシュを行っており、過激に飛び上がったり、カエルの様に跳んでいたりとバラエティ豊かであった。そこにMore CADENCE編集部がプッシュの写真ばかりSNSに上げていた所、UCI公式などもプッシュに注目をする様になった経緯もある。
表向きの評価基準は以下の3点。
実際は「なんとなく」もとい審査員の独断と偏見で選ばれる。
① 芸術点
② 技術点
③ 消費カロリー(なんとなく見た感じ)
優勝候補筆頭:ロバート・K・ハンソン(チーム楽天Kドリームス)
大会の優勝候補に挙げられていたのは、ロバート・K・ハンソン。ナショナルチームの通訳として活躍しているが、「プッシュ」を含めて様々な役割をこなす。国際大会で得た経験値と、選手と同じような肉体から、下馬評では有利とされていた。
繰り返すプッシュの嵐

表彰対象となったのは、女子と男子のエリートカテゴリーの予選。女子は9人、男子は24人の選手が出走した。
会場や中継では、各選手の走りの後にリプレイが放映され、脇本雄太選手が評価を続けていく。新たな全日本選手権のコンテンツが作られていく瞬間だ。
なお、チーム楽天Kドリームスは合計7人、鹿屋体育大学が6人、JPCAとJIKは5人の選手がエントリー。
プッシュをするチームのコーチやスタッフたちは、徐々に疲弊していく……。
奇跡の回転 竜巻旋風脚のようなプッシュ
そんな中、男子エリートカテゴリーの序盤に奇跡が起きる。
4番目に出走した岩谷駿之介(鹿屋体育大学)をプッシュするのは、福永隼人。
片手で選手をプッシュする独特なスタイルで力強く走り出すと、加速してワンジャンプ。
着地と同時に右手で力強く選手を押し出し、自身は反動でクルっと回転。
審査員・脇本雄太も度肝を抜かれ、「おー!これは芸術点が高いですよ!」の一言が飛び出す圧巻のパフォーマンスを見せた。
その後も、繰り返されるプッシュ。
優勝候補筆頭のロバートもチーム楽天Kドリームスの選手たちを最後に4回連続でプッシュし、力強いパフォーマンスを見せて審査員にアピールを続けていく。
審査では票が割れたものの、最終的に史上初のプッシュ王者に輝いたのは福永隼人。
初代王者の栄誉を得ることとなった。
映えあるチャンピオンジャージが
この日の大会プログラムの最後には、表彰式が実施され、優勝の記念としてチャンピオンジャージが新田祐大選手から贈呈。
さらに副賞として、有限会社芹澤ライスセンター提供の「ひのひかり」が10㎏、そのご飯のお供に株式会社ケイドリームス 顧問の高崎正嗣氏より「食べて美味しかったおかずセット」が贈られた。
初代チャンピオン・福永隼人 インタビュー
第1回の優勝者として選ばれて、とても嬉しく思います。
プッシュにはすごく力を込めているので、今日も靴紐を固く結び、決意も堅くして臨みました。
岩谷選手からも「今日のプッシュは良かった」とコメントをいただいたので、貢献度としても芸術点としても、とても良いプッシュができたと思っております。ありがとうございました。
審査員・新田祐大 コメント
脇本選手も「おーっ」と声を出してしまうくらいのステップと、竜巻旋風脚を思わせるような回転、その後の笑い。そして、フィジカルの部分も評価しました。具体的には、両手ではなく片手で押していた。これは、パワーがないとできないことです。
あとは、「やってやったぞ」という顔ですね。自分の投げ方にプライドを持っているんだろうなと感じました。安心して見ていられる、素晴らしいプッシュだったと思います。