日本チームのメダルラッシュに沸いた『2024世界選手権トラック』(デンマーク・バレラップ)。
過去の挑戦の歴史を振り返りながら、連続企画の第4弾。
これまで金メダル獲得の3種目を取り上げてきたが、それ以外にも「史上初」となったメダルが2つある。
第4弾では、銅メダルを獲得した男子チームスプリントをフィーチャーする。
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正式採用は1995年
この種目が世界選手権で正式採用されたのは1995年。
当初は「オリンピックスプリント」の名称で実施され、2002年より「チームスプリント」と改称された。
世界選手権でメダルに近づいたのは、オリンピックの正式種目として採用開始された2000年開催のイギリス・マンチェスター大会。
長塚智広・伏見俊昭・神山雄一郎の布陣で挑むと、「45秒553」のタイムで予選を通過、続く対戦でも「45秒586」という記録を出し3-4位決定戦へ進出。
対したスペインにわずかに及ばなかったが、4位という結果となった。
2004年のアテネオリンピックでは本種目初となる銀メダルを獲得した日本チーム。
しかし2000年から毎年出場していた世界選手権では初出場時以来、10年以上も順位決定戦に進むことは叶わなかった。
メダルへの手応えと、同時にぶつかる高い壁
再び表彰台に近づいたのは2012年。
雨谷一樹・渡邉一成・中川誠一郎の布陣で出場した日本チームは、予選で「44秒039」という日本記録の快走を見せると、予選上位チームの失格もあり、3-4位決定戦に進出。
順位決定戦では、「44秒の壁」を打ち破る「43秒896」というタイムでこの日2度目の日本記録更新を実現するも、ニュージーランドにわずかに及ばず4位。
メダルへの手応えとともに、日本記録更新の走りでも届かぬ表彰台への高い壁も同時に味わう結果となった。
2022年、長迫・太田・小原での初挑戦
その後も毎年日本チームがこの種目に挑むが、なかなか表彰台への道が開けぬまま迎えた2022年。
長迫吉拓、太田海也、小原佑太のチームで、初めて世界選手権のチームスプリントに挑戦。
アジアチャンピオンとして迎えたこの大会、予選でこのメンバーでのベストタイム(当時)となる「43秒135」というタイムを計測するも、第1走と第2走の交代時にルール違反があったとして失格。
悔しい結果に終わってしまったが、たしかな手応えを得て、以降主要大会ではこの3人による出場を重ねていくこととなる。
2023年には『ネーションズカップ第1戦』の予選で当時の日本新記録「42秒742」を樹立(最終結果は4位)、第2戦では銅メダルを獲得するなど、タイムとともに世界との距離を縮めていく。
2023年、満を持して挑んだ世界選手権だったが、1回戦でフランスに敗れ敗退。
パリ2024オリンピックでは日本記録を2度更新するも、メダルには届かず。
【パリ五輪】日本新再び 進化を証明したが5位 優勝は2回世界新でオランダ 男子チームスプリント1回戦〜決勝/自転車トラック
悔しさを胸に、これまでとメンバーを変えることなく望んだ2024年の世界選手権。
予選で「42秒998」というタイムを出すと、1回戦でも「42秒744」でコロンビアを下し、メダル決定戦へと進出。
メダル決定戦への進出自体、世界選手権の舞台では2012年以来12年ぶりとなる快挙ではあったが、大一番でもパリ五輪2位のイギリスを振り切り、史上初のメダル獲得に至った。
さらなる高みへ
ここまで、四半世紀にわたる「世界選手権・男子チームスプリント」の戦いを振り返ってきた。
長く世界の壁に跳ね返されてきた末のメダル獲得は快挙に違いないが、先日のレース後のインタビューで各人の口から語られたのは、「悔しい」「(銅メダルは)最低限」といった言葉。
2025年の世界選手権ではさらに新しい扉を開け、「史上初の金メダル獲得」という姿を見ることができるかもしれない。
参照:
2023年版 競輪年間記録集(PDF)
Tissot Timing | World Championships Result
UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS – PALMARES – ELITE
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