日本チームのメダルラッシュに沸いた『2024世界選手権トラック』(デンマーク・バレラップ)。
デンマークでの日本チームの活躍を機に、過去の挑戦の歴史を振り返る連続企画の第3弾。
第3弾で取り上げるのは、山﨑賢人が金メダルを獲得した男子ケイリン。
“日本発祥”の種目だが、今回の金メダルの獲得はじつに37年ぶり・2度目。
そんな「世界選手権・男子ケイリン」における挑戦の歴史を紐解いていく。
▼第1、2弾はこちら
【徹底検証・世界選手権】佐藤水菜の女子ケイリン金メダルは本当に史上初なのか? 挑戦の歴史を紐解く
【徹底検証・世界選手権】「世界史上初」を実は達成していた窪木一茂のスクラッチ金メダル
“発祥の国”の実力を見せる80年代
男子ケイリンが世界選手権の舞台で実施されるようになったのは1980年から。(女子は2002年から)
オリンピック正式種目としての採択より、20年先にスタートした。
初年度に出場したのは、競輪選手として活躍していた藤巻昇(6位)・藤巻清志(7位)の兄弟。翌81年に出場した久保千代志が3位となり、この種目で初めてのメダルを獲得。
さらにその82年には北村徹が、85年には現・日本競輪選手養成所所長の滝澤正光が銅メダルを手にした。
複数のメダルを獲得するものの“世界一”の座にはわずかに届かなかったが、歓喜の瞬間まではそう時間がかからなかった。
井上茂徳、本田晴美の2人が挑んだ1987年。
本田が金メダル、井上が銅メダルを獲得。
日本発祥の種目で初の金メダルがもたらされたうえ、表彰台に日本人が2人並ぶという、“黄金期”ともいえる瞬間が訪れた。
長く表彰台から遠ざかる時期を経て……
以降、89年に佐古雅俊が銅メダル、93年に吉岡稔真が銅メダルを獲得するも、他国の躍進もあり、この年を最後に表彰台からは遠ざかることとなる。
久々のメダルとなったのは、2018年のオランダ・アペルドールン大会での河端朋之(銀メダル)。
『東京2020オリンピック』へ向けた強化プログラムも実をつけはじめ、じつに25年ぶりのメダルが日本にもたらされると、ここから日本の躍進がまた幕を開けることとなる。
翌2019年には、新田祐大が銀メダルを獲得。
河端朋之、新田祐大という前2年の銀メダリストに、脇本雄太を加えた強力な3人が出場した2020年にも脇本が銀メダルを獲得。
日本勢が3年連続で銀メダルを獲得という快挙を遂げることとなる。
新たな力の躍動の末に掴んだ頂上
河端朋之、新田祐大、脇本雄太が競技から退いた、直後の2021年大会。
松井宏佑とともに、世界選手権に挑んだのは山﨑賢人。初挑戦にして決勝の舞台へと勝ち上がり、5位という結果を残す。
2023年には太田海也と中野慎詞がこの種目に初出場。
決勝へと駒を進めた中野慎詞が、混戦の表彰台争いを制して銅メダルを獲得。
頂上まであと一歩。2021年以降、次々と新たな力が躍動するなか、山﨑賢人、中野慎詞、太田海也の3人で挑んだ2024年。
『2024アジア選手権トラック』を制し“アジアチャンピオン枠”として出場した山﨑賢人が決勝に進出。
前年覇者のケビン・キンテロ(コロンビア)やジェフリー・ホーフラント(オランダ)ら並み居る強豪を打ち破り、既報のとおり見事金メダルを獲得。
1987年以来じつに37年ぶりとなる、歓喜の瞬間が訪れることとなった。
“黄金期”の再来
ハリー・ラブレイセンの3連覇(2020-22)など、2020年以降はオランダ勢の活躍が目立つこの種目だが、2018年以降日本は銅:1/銀:3/金:1と5つのメダルを獲得。しかも、すべて異なる選手が獲得している。
そして、山﨑賢人が久々に手にした世界一の称号。
“黄金期”は、まさに今でありこれから、と言えるのかもしれない。
来年以降にも期待が高まる。
参照:
2023年版 競輪年間記録集(PDF)
Tissot Timing | World Championships Result
UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS – PALMARES – ELITE