金メダル3つを含む6つのメダルを獲得、ケイリンでは男女でアルカンシェルを獲得するなど、日本チームの好成績に沸いた『2024世界選手権トラック』(デンマーク・バレラップ)。
デンマークでの日本チームの活躍を機に、過去の挑戦の歴史を振り返る連続企画の第2弾。
第2弾で取り上げるのは、窪木一茂が史上初の金メダルを獲得した男子スクラッチ。「先にフィニッシュした人が勝ち」という単純なルールから、“トラックで行われるロードレース”とも表現される種目だ。男子は15km、女子は10kmで実施される。
それでは「世界選手権・男子スクラッチ」における挑戦の歴史を紐解いていく。
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男子スクラッチも2002年から実施
男子スクラッチが世界選手権の舞台で実施されるようになったのは、奇しくも女子ケイリンと同じく2002年から。開催地は2024年大会と同じデンマーク・バレラップ。
記念すべき初開催に出場したのは飯嶋則之。結果は12位。
これが、世界選手権におけるスクラッチのはじまりであり、日本人選手挑戦の幕開けとなった。
飯嶋は翌年2003年にも出場(19位)。2004年には内田慶(11位)、2006年には西谷泰治(17位)が挑むも、入賞には届かなかった。(2005年への出場はなし)
2010年に初のメダルを獲得
日本人選手が男子スクラッチで上位フィニッシュし始めるのは、盛一大以降の時代。
自身の初陣となる2007年ではDNFという結果に終わった盛だったが、翌2008年にも出場すると、終盤でスパートをかけトップに立つ走りを見せ、日本人初となる1桁台の最終6位でフィニッシュ。当時の日本人最高成績を収めた。
参照:keirin.jp
翌2009年は5位とさらに成績を上げた盛は、連続4年目の出場となる2010年大会で見事銅メダルを獲得。これが、世界選手権・男子スクラッチにおける初表彰台獲得の瞬間となった。
順調にステップアップを続け、日本人選手の初挑戦から8年でメダル獲得に成功した男子スクラッチ。
さらなる飛躍が期待されるも、翌2011年の盛一大の出場(DNF)を最後に、10年間日本人選手の出場はなかった。
空白の10年を打ち破った窪木一茂
“空白の10年”ともいえる期間から、再び時を刻み始めるきっかけとなったのは窪木一茂の登場。
和歌山県庁職員として働きながらトラック競技/ロードレース選手として活動。リオ五輪に出場したほか、2018年の『全日本選手権トラック』では5種目優勝を果たす活躍ぶりを見せていた窪木は、2021年に「世界選手権・男子スクラッチ」へ初出場。いきなり5位という好成績を残した。
その勢いのまま、2022年には盛一大の銅メダル(2010年)を上回る銀メダルを獲得。日本選手による史上最高成績を更新した。さらに翌2023年には2年連続で銀メダルを獲得することに成功。
2023年、優勝したウィリアム・ティドボール(イギリス)との差はわずか自転車1つ分ほど。
2年連続となる日本人最高成績にも、「悔しい!」とレース後に語っていた。
パリ五輪も経験し、さらなる進化を続け迎えた2024年。
結果はご存知のとおり、残り3周ほどで仕掛け集団を突き放す強い走りを見せ優勝。
見事リベンジを果たし、「世界選手権・男子スクラッチ」で初となる金メダルを日本にもたらした。
男子スクラッチ3年連続で表彰台は「世界史上初」
初挑戦から4回目で、日本史上初の金メダル、そしてアルカンシェルを獲得した窪木一茂。
日本人選手にとって初の金メダル獲得という快挙もさることながら、「5位→2位→2位→1位」と安定して上位を獲得し続けている強さは特筆もの。
実は「世界選手権・男子スクラッチ」において3年連続でメダルを獲得したのは、世界で見ても窪木が初。
もはや、スクラッチにおいて“最強”と表現してもおかしくないほどの成績を残しているといえるだろう。
『2024世界選手権トラック』の直前に実施したインタビューでは「まだまだ強くなれる」と語っていた窪木。今後の挑戦からも目が離せない。
参照:
2023年版 競輪年間記録集(PDF)
Tissot Timing | World Championships Result
UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS – PALMARES – ELITE
窪木一茂 | Kazushige KUBOKI Official Web Site