ここからはMore CADENCEで過去に行ったインタビューを元に、さまざまな選手の「トラック競技のきっかけ」をご紹介しよう。
お兄ちゃんの大会を応援に行って、じいちゃんに付き合わされ、学校で道に迷って……等々、さまざまな「きっかけ」はあなたのヒントになるかも?
酒井亜樹
BMX→トラック競技
競輪選手を目指して高校の自転車競技部に入っていた兄(酒井拳蔵(大阪/109期、S級2班))を応援しに行く際、大会会場となっていた岸和田競輪場で隣接するBMXコースと出会う。BMXレーシングで日本一にまで上り詰めるも、トラック競技に声をかけられたことを機にトラックへ転向。
BMX仕込みの「スタートの速さ」は、チームスプリントの第1走として大活躍。現在はトラック競技のナショナルチームで活動しつつ、競輪選手も目指している。
中村妃智
競泳・バスケ→トラック競技
幼少期からスポーツを楽しみ、競泳やバスケを行なってきた中村。高校では陸上競技部に入るつもりが、校内で道に迷って辿り着いた先が自転車競技部。そこで勧誘され、自転車競技の道へ。中長距離種目で活躍し、東京2020オリンピックにはマディソンの代表選手として出場した。
現在は競技者の第一線からは退き、自転車イベントなどで活躍中。
キックバイクスクール開催しました🎄
そしてnew冬用ウエアです🩵❄️ pic.twitter.com/vpI71cg0Uv— 中村妃智 Kisato Nakamura (@kisatonakamu) December 9, 2023
眞杉匠
野球・ソフトテニス→トラック競技→競輪
栃木県内で生まれ育った眞杉は地元の自転車の名門・作新学院高校に入学。だが、最初から自転車をやるつもりではなかった。
「『自転車をやりたい人は作新』って感じで、自転車部に入るために作新に来た1年生が多いんですが、自分は5月末の、体験入部が終わったくらいの時期に部活を見に行ったんです。そこですでに入っている1年生に『なに今更来てんの?』って目で見られ……『なんだぁ?やっつけてやる』って気持ちになって、入ることにしました」
その後眞杉は学生時代に国体で1kmTT7位などの成績を経て、競輪選手に。2023年はG1タイトルを2つ獲得と、トップ選手の1人になった。
太田海也
ボート→トラック競技・競輪
ボート競技でインターハイ優勝の成績をおさめ、そのまま大学でもボートを続けると思いきや、壁にぶつかって競技を離れてしまった太田。大学を中退し、自転車ショップで働きながら通勤や地域の練習会で自転車に乗り込むうちに「これを仕事にしたい」と考えるように。一念発起し競輪選手養成所に入所するとみるみる頭角を現し、トラック競技のナショナルチームにも所属することとなった。
2023年シーズンは世界の舞台で複数のメダルを獲得。競技スタートから2年足らずでパリオリンピックを現実的に狙える位置に立った。
脇本雄太
科学少年→トラック競技・競輪
今や競輪界の顔となっている脇本だが、少年時代は運動とは縁のない生活を送っていた。研究者になりたいと思って入学した科学技術高校は自転車の名門でもあり、ここで友人に「一緒にやらないか」と自転車部に誘われたのがきっかけ。
部活で成績が出るようになり、競輪選手という道が見えてきたことで「稼いで親孝行をしたい」という思いが強まった。その後競輪選手となり、トラック競技でも日本代表として活躍する。
東京2020オリンピックを機に、トラック競技の第一線からは引退。現在は競輪のトップ9人S級S班として活躍を続ける。
佐藤水菜
趣味の自転車→競輪・トラック競技
健康のために競輪場で競技用自転車に乗っていた父の姿を、幼稚園の頃から見ていた佐藤。自身にとって「遊び場」だった競輪場で自分が自転車に乗るようになったのは中学3年生の頃からで、自転車競技部のない高校に進学したものの、「遊んでくれるおじさんたち」である地域の自転車仲間と交流しながらタイム計測や大会出場、ロードバイクでの遠出を楽しんでいた。
高校卒業のタイミングで競輪選手の道へ。2020年、かねてよりあたためていた「また競技をやりたい、大会に出たい」という思いを叶え、ナショナルチームに加入。世界選手権で2年連続銀メダル(2021、2022)を獲得し、パリオリンピックを見据える。
一丸尚伍
自転車・水泳・トライアスロン→トラック競技・ロードレース→競輪
トラック競技選手だった祖父のトレーニングに「練習後のジュース目当てで」付き合っていたという幼少期。中学までは水泳やトライアスロンをやる傍ら、地元で行われる自転車レースにも出場していた。
「大分は自転車好きの人たちが多くて、バンクを使った『チャレンジザバンク』っていうような、色々な種目のあるレースがあって、そこにはジュニアクラスもあったから。そういうのも見つけて出たりとかして。あと、シマノ鈴鹿ロードにも毎年出ていました」
高校以降はロードレースとトラック競技両方で活動し、ナショナルチームメンバーとして世界の舞台を経験。現在は競技の第一線からは退き、競輪選手として活躍している。
太田りゆ
陸上→競輪・トラック競技
陸上で大学進学するも、家庭の事情で競技を続けられなくなった太田。人生を模索する中、ガールズサマーキャンプ(現:トラックサイクリングキャンプ)で初めてブレーキのない競技用自転車に乗って「これだ!」と思ったことをきっかけに、自転車未経験で競輪学校(現:競輪選手養成所)へ入学。在学中にナショナルチームに声をかけられ、競技の世界でも活動をスタートした。
現在はガールズケイリン選手兼ナショナルチームメンバー。パリオリンピックを出場を目指す。
垣田真穂・池田瑞紀
タレント発掘事業→トラック競技
現在自転車トラック競技ナショナルチームに所属する2人は、共にタレント発掘事業をきっかけとしてトラック競技を始めた同い年ペアだ。
さまざまな競技を体験し、適性を見極めていく「タレント発掘事業」。地域主導のもの(例:みしまジュニアスポーツアカデミー)から大規模なもの(J-STARプロジェクト)までさまざまなものがあるが、普段体験する機会の少ないトラック競技のようなものこそ、こういった「適性をはかる」プロジェクトでなければ見つけにくいものだろう。
2人はタレント発掘事業で自転車競技への適性が見出され、高校自転車競技部での活躍を経てトラックナショナルチームに加入。現在はオリンピック出場を目指して邁進している。
各選手の「きっかけ」にはそれぞれのインタビューへのリンクも付記している。各々興味深いバックボーンを持つので、興味があればぜひご一読を。