2022年の世界選手権で個人パシュート日本記録を更新、そして2023全日本選手権でチームパシュートの日本記録更新に貢献した松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)。元来タイム系種目で力を見せてきた松田だが、全日本選手権ではオムニアムで優勝して周りを驚かせた。
松田はこれまでロードレースに勤しんでおり、トラック競技に腰を据えてからはまだ1年程度。この1年でどのような変化があったのか、目の前に迫るアジア選手権にはどのような姿勢でいるのか、話を伺った。
2023年シーズンの成績
開催月 | 大会名(開催地) | 成績 |
2月 | ネーションズカップ第1戦 (インドネシア・ジャカルタ) |
チームパシュート:8位 |
3月 | ネーションズカップ第2戦 (エジプト・カイロ) |
チームパシュート:8位 |
5月 | 全日本選手権トラック (伊豆ベロドローム) |
個人パシュート:優勝 チームパシュート:優勝&日本新記録(3分52秒532) オムニアム:優勝 マディソン:3位 エリミネーション:4位 スクラッチ:4位 ポイントレース:2位 |
とんとん拍子のトラック競技生活
Q:今回の取材に当たって以前させてもらったインタビューを振り返ったんですが、ナショナルチームに入ってすぐの段階で「まずは日本記録を塗り替えたい」とお話ししていました。実際に2022世界選手権でそれを達成しましたが、ご自身として順調だと感じますか?
順調ですね、びっくりするくらい。日本記録を塗り替える嬉しさはありましたけど、まだまだいきたいな、とは思っています。
Q:あまり騒がれるの好きではない?
そうかもしれないです……「ちょっとみんな静かにしておいて」みたいな(笑)
Q:全日本選手権トラックのオムニアムで優勝して、みんなから讃えられたりしたんじゃないですか?
それが、あんまりないんですよね。その時わーっとなって、あまり膨らまない感じ。僕自信がSNSなどで発信しないからということもあるかもしれません。そんなとっつきやすいと思われてないと思うし……コアなファンはいてくれますが、軽めのファンの方はあまりいないですね。
レースを「俯瞰」する
Q:『2023全日本選手権トラック』のオムニアム、優勝後のインタビューで「まさか取れるとは」と話していましたね。
はい。ラスト10周を切ったあたりで「最後の倍ポイントを獲ったら勝ちなんじゃないかなあ」と思っていきました。
Q:タイムトライアルが得意だった松田選手がレース系にも果敢に挑むようになる、その変化って何かきっかけはあるんでしょうか?
特にないですが、スプリント力が上がったのか、普通にレースが組み立てられるようになったのだとは思います。勘違いじゃないと良いですけど(笑)
これは慣れもあるでしょうし、一旦自転車から離れた時があって、その時から「俯瞰して見る」ことができるようになったとも思います。「あの場面でこうすれば良かったんだ」というのが分かってきました。これまで難しく考えてごちゃごちゃなっていたのが、「こうすれば良いってだけじゃん!」となってきました。整理整頓できるようになったと言いましょうか。
Q:今、レース系種目をしていて楽しいですか?
実を言うとそんなに好きではないのですが(笑)、組み立てはできるようになりましたね。負けん気がある方ではないので……
Q:松田選手にとって、レース系種目はどういうものですか?
水ものだと思っています。僕の走ってるラインがあと1車線ズレれば優勝者が変わってたかもしれない、あと1メートル集団を引いていたら、2メートル手前で上がっていたら……ほんの些細なことで結果が変わるものです。僕はそういった部分の嗅覚みたいなものがあまりないので、苦手感はありますね。誰かに利用されたり、利用したりといったことが得意ではないから、そこを克服できれば、とは思います。ヨーロッパのように毎週オムニアムができるような環境ではないし、少ない機会だからこそ全日本選手権のように、たくさんの人に見られる場面で、もっと自由にやりたいという気持ちはあります。
Q:あまりフリーダムにはなれない?
フリーダムに行こうとは思っているのですけれど、レース系種目って「実力があるのに上手くいかない」みたいなことが起こりがちで、それがあまり好きではないです。
Q:根本的な問題ですね(笑)
(笑)そりゃあ、たくさんレースがあれば「次はこうしよう」とすぐに修正できますけど、そうはいかないですからね。トラック競技は場数が少なすぎるし、自分自身の経験も少ないです。まだ自信がありません。