ここからは、全G1およびGP制覇の瞬間を振り返っていく。
雨中の初戴冠 2023オールガールズクラシック

初のG1制覇となったのは、2023年10月の『オールガールズクラシック』(松戸競輪場)。
激しい雨が降る中で行われた決勝。
残り半周、水飛沫をあげながら先頭へと迫ると、最終ストレートで全員を突き放してフィニッシュ。

レース後、「“初代女王”はこれから先も名前を挙げてもらえる。自分の名前を知ってもらえるチャンスが増えたかなと思います」と語った佐藤水菜だが、“初代女王”としてだけでなく、どんどんとその名が広めていくこととなる。
4度目の正直 2023ガールズグランプリ

ガールズグランプリ初制覇の瞬間は、「GP」グレードとしての初開催となった2023年の年の瀬に訪れた。
佐藤は残り半周で3番手から仕掛けていくと、圧倒的なスピードで他の選手たちを千切っていき、2着の梅川風子に4車身差をつけ優勝。

佐藤にとっては、4度目の挑戦にして初優勝。前年は落車というアクシデントもあり、「現役中にグランプリは獲れないんだろうなと思っていた」と語ったものの、攻めの姿勢でリベンジを果たし悲願の初優勝を飾った。
世界女王の凱旋 2024競輪祭女子王座戦

『パリオリンピック』へ出場を果たし、『世界選手権トラック』でケイリン世界女王に輝いた2024年。
オリンピックのため上半期は競輪への出場がなく、ガールズグランプリへの切符を賭けて挑んだのが、『競輪祭女子王座戦』(小倉競輪場)。
同じくオリンピックに出場した太田りゆが先に仕掛け粘りを見せるなか、フィニッシュライン目前で佐藤が捉えて1着。世界女王の強さを、完全優勝という形で表現した。

準決勝の敗戦を糧に 2025オールガールズクラシック

2025年の初G1は『オールガールズクラシック』(岐阜競輪場)。すでに手にしているタイトルではあったが、準決勝で前を捉えきれず2着となり、「昨日のようなレースはしない」と強い覚悟で臨んだ決勝。
残り1周半から仕掛けあっという間に先頭へと躍り出ると、残り半周で捲りを開始した梅川風子を競り落とし、最後の直線ではさらにリードを広げ1着。

敗戦を糧に、さらなる進化を刻み込む快勝を披露した。
「昨日のようなレースはしない」佐藤水菜が準決のリベンジ果たし優勝『第3回オールガールズクラシック』/ 4月27日 岐阜競輪場
止まらぬ勢い 2025パールカップ

初出場となった『パールカップ』(岸和田競輪場)でも、その勢いは止まらない。
予選・準決勝と快勝して挑んだ決勝。道中は竹野百香と並走が続くが、決して譲らぬ強い気持ちを見せてレースが進む。
そして残り1周に入るところでエンジンがかかると、驚異的なスピードで先頭へ。
最終4コーナーで後続も迫るが、「雑巾のように脚を絞って」粘り込みこのレース初優勝。
自身が持つG1最多優勝記録を4に更新、そして「グランプリスラム」へとリーチをかけた。

涙の勝利でグランプリスラム達成

そして迎えた、8月9日の『女子オールスター競輪』(宇都宮競輪)決勝。
2着に5車身という差をつけ1着でフィニッシュラインを駆け抜け、女子史上初の「グランプリスラム」を達成したことは既報のとおりだ。
佐藤水菜が完全優勝で女子史上初のグランプリスラム達成! 圧勝劇の後には涙も 『第1回女子オールスター競輪(G1)』/8月10日 宇都宮競輪場
その強さばかりが印象に残るが、『女子オールスター競輪』直後のインタビューでは、「ギリギリの精神状態」で戦っていると吐露。涙を流し、安堵したような表情でファンに感謝を伝える姿が印象的だった。
「年間グランプリスラム」の偉業も視野に?

これで、昨年の『競輪祭女子王座戦』からG1を4連勝。自らが持つ女子選手の最多G1勝利記録も5へと伸ばした。
なお、ガールズG1は2023年6月の『パールカップ』からスタート、『第1回女子オールスター競輪』でのべ9回目のG1開催のため、過半数で佐藤水菜が優勝していることとなる。
競技では2024年に史上初のケイリン世界女王となり、その翌年には競輪にて同じく史上初の偉業を成し遂げた佐藤水菜。
トップオブトップとして走り続けるそのプレッシャーは計り知れないが、11月の『競輪祭女子王座戦』と年末の『ガールズグランプリ』を制し、「年間グランプリスラム」という前人未到の離れ技にも期待が高まってしまうのは事実だ。
史上初を刻み続ける絶対女王の活躍に、今後もご注目いただきたい。