なんで『I』と『II』?どんな大会?ジャパントラックカップの成り立ち
ここまで、大会の成り立ちや形式の理由について簡単に解説してきた。
ここからは、過去数大会の模様を少し振り返ってみよう。
先述のとおり、『ジャパントラックカップ』は2014年に第1回が開催。以後、新型コロナウイルスの影響で開催が叶わなかった2020・2021年を除いて、継続して実施されてきた。
その中止となってしまう直前、2019年大会から写真とともに紹介していく。
2019年 JKA250で開催
初回大会以降、今回と同じく伊豆ベロドロームを舞台に開催されてきた『ジャパントラックカップ』だが、2019年は日本競輪選手養成所内に完成したばかりの「JKA250」で8月に開催。
理由は、翌年2020年に開催が予定されていた東京2020オリンピックに向けて、伊豆ベロドロームが改修工事中となっていたため。なお、JKA250は観客席を擁さないベロドロームであるため、無観客での実施となった。
東京2020オリンピックを翌年に控えていたこともあり、多くの海外選手が参加。『I』『II』でそれぞれスプリント、ケイリン、オムニアム、マディソンの4種目を実施する形となった。
リー・ワイジー(香港)
当時の世界チャンピオンであるリー・ワイジー(香港)がスプリント×2とケイリンで金メダルを獲得したほか、男子短距離でもマシュー・グレーツァー(オーストラリア)がスプリントを連勝。その中でも、ケイリンでは「I」で河端朋之が、「II」で新田祐大が優勝、銀メダルはともに脇本雄太が手にするなど、日本勢が奮闘。そのほか、2025大会にも出場する窪木一茂と梶原悠未がオムニアムで金メダルを獲得した。
マシュー・グレーツァー(オーストラリア)は“バースデー優勝”となった
ケイリンで表彰台に登った脇本雄太(左)、新田祐大(中央)、競輪の“短期登録選手”としてもおなじみのシェーン・パーキンス(右)
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2022年 パリへの再スタート
3年ぶりの開催となった2022年大会では、新体制で挑んだ日本ナショナルチームメンバーを中心とした日本勢が躍動(実施種目は2019年と同じ4種目×2)。
スプリント決勝での佐藤水菜とリー・ワイジー
佐藤水菜と梅川風子がリー・ワイジーを下してそれぞれスプリントで金メダルを手にしたほか、男子短距離は脇本雄太(ケイリン)と寺崎浩平(スプリント)の2人が強さを見せた『I』から一転、『II』では太田海也(スプリント)と中野慎詞(ケイリン)が優勝。太田海也にとっては、これが初の個人タイトルとなるなど、パリへの契機ともなる大会となった。
スプリントを制した太田海也
ケイリンで優勝した中野慎詞
中長距離種目も、2019年大会に続き窪木一茂・梶原悠未が活躍するなか、内野艶和が古山稀絵とのコンビでマディソンを連勝、今村駿介と兒島直樹もオムニアムのタイトルを手にした。
マディソンを連勝した内野艶和(左)、古山稀絵(右)
オムニアムで表彰台に登った今村駿介(左)、兒島直樹(中央)、リャン・カーユー(右/香港)
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2023年 ほぼすべての種目で日本選手が表彰台独占
前年と同じく2023年大会もスプリント、ケイリン、オムニアム、マディソンの4種目を2度実施する形式で開催。
リー・ジーウィン(香港)をはじめとしたアジア勢のほか、アメリカやカナダ、ニュージーランド、オランダなどの海外選手も出場したが、1種目を除き日本選手が表彰台を独占。
スプリントで連勝、ケイリンでも1つの金メダルを手にした太田海也
オムニアム(II)では橋本英也(左)、兒島直樹(中央)、 窪木一茂(右)のチームブリヂストンサイクリン勢が表彰台独占
なかでも太田海也、佐藤水菜、兒島直樹、窪木一茂の4人は最多3つの金メダルを獲得するなど、大会の中心として活躍した。
なお、古山稀絵にとってはこの大会がナショナルチームメンバーとしてのラストレース。
古山稀絵(前列中央)を囲むナショナルチームメンバー
大会直後、これまでの振り返りとともに今後について語ってもらうインタビューを掲載したが、日本競輪選手養成所・130回生として入所した今読むと、また違った感想を抱くかもしれない。
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2024年 パリ直前の5月に開催
“マレーシアの英雄”アジズルハスニ・アワンの参加でも注目された2024年大会は、パリオリンピックの直前となる5月に開催。
アジズルハスニ・アワン
オリンピック出場選手は未発表の状態ではあったが、V-IZUブランド「TCM-2」のお披露目イベントが実施されるなど、“壮行会”のような意味合いも持つ大会となった。
2日連続で日本記録更新という快挙を達成した佐藤水菜
その「TCM-2」を駆り出場した佐藤水菜は2日連続で200mFTT(スプリント予選)で日本新記録を更新するなど4冠を達成。
窪木一茂も4つの金メダルを手にしたほか、ポイントレースでは逆転に次ぐ逆転劇で山本哲夫で金メダルを獲得するなど、大盛況のなかで幕を閉じた。
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2025年はどんな大会に?
2025年大会は5月29日から6月1日にかけて実施。
過去にも増して強力な海外勢が出場するほか、日本のナショナルチームメンバーもほとんどが出場する見込み。
場内ではさまざまなイベントも開催されるので、ぜひ現地で体感いただきたい。