日々、伊豆ベロドロームでトレーニングに励むトラックナショナルチームのメンバー。
強くなるために重要な要素のひとつである「食事」のサポートが、ベロドロームのすぐ隣にある「サイクルスポーツセンター(以下、CSC)」内「レストラン富士見」で行われていることをご存知だろうか?
選手たちの体をつくる一助となっている「アスリート飯」について、メニューの監修を行なうHPCJC・河村美樹氏に話を聞いた。
なお、選手たちが実際に食べているこの食事。5月末に伊豆ベロドロームで開催される『ジャパントラックカップ I / II』にて、数量限定でお弁当「爆速!スプリンター弁当」として販売が決定!
ぜひ、現地で召し上がっていただきたい。
選手からの要望でスタート
Q:そもそもこの食事の提供は、どのように始まったものなのでしょうか?
中野慎詞選手から「練習時の食事のサポートをしてほしい」という要望があったことが最初のきっかけです。
そこから、山口佳世・HPCJCオペレーティングマネージャーがいろいろ動いてくださって、サイクルスポーツセンターの方とも話合いをして、今年の1月31日からスタートしました。
月曜日と金曜日の週2回実施しているのですが、中長距離の選手たちは昼食後にロード練習に出るスケジュールなので、今は短距離選手限定になっています。
Q:メニューは河村さんが決めているのですか?
はい。本当はこの場で私が調理ができたら良いのですが、設備的に難しい部分もあるので、要望書を送って作ってもらっています。
メニューの内容に関しては、ジェイソン・ニブレット 短距離ヘッドコーチからの要望もあり、「プロテイン(=たんぱく質)の量が十分であること」「練習と練習の間なので、消化の良いもの」「余分な脂質を摂ることなく、バランスよく食べられること」をテーマにしています。
本格的に始める前に、選手たちを招いた試食会を2度開きアンケートも実施しました。選手たちに食事を提供する時には私も参加して、同じ食事を摂りつつ、選手たちの声を直接聞いています。
試行錯誤の真っ最中
Q:スタートして約3か月が経ちますが、苦労した点はありますか?
やはり私自身が作っているわけではないので、細かい部分のすり合わせは難しいです。実際に私も食べて、緑黄色野菜は絶対に入れてほしいとか、お肉の固さとか、いろいろとフィードバックをしています。今は試行錯誤している最中ですね。要望を出す時も、写真を共有してイメージを伝えるようにしています。
Q:特に評判良かった物はなんでしょう?
まだ始めたばかりではありますが、ポトフと蒸し鶏のねぎ塩ソースを出した時は評判が良かったですね。今回は同じ蒸し鶏ですが、おろしソースをかけたものを出しました。
この日のメニュー
サラダは食べ放題
トレーニング内容にあわせてメニューを調整
Q:先ほど実際にいただきましたが、蒸し鶏、すごく美味しかったです。アスリート向けの食事なので量が多いのかなと思っていたのですが、ぺろっと完食できました。
金曜日はトラックのトレーニング強度が高くなる日なので、少し軽めのメニューにしています。量は一緒なのですが、鶏胸肉を使ったり、調理の面で軽めにしています。
Q:先ほどジェイソンから「プロテインが不足しないように」という要望があったとおっしゃっていましたが、具体的にはどのれくらいの量なのでしょう?
私の考えも含めていうと、1食あたり40gのプロテインが必要だと思っています。提供しているメニューでは、主菜だけでもそれくらいの量になっていると思います。
Q:ご飯は五穀米なんですね。
ビタミンと食物繊維を摂れることが大きいです。消化という意味では白米よりも少し劣るのですが、余分な体脂肪を付けたくないという選手が多い中、ゆっくりと糖を吸収するためには食物繊維が必要なので、五穀米にしています。
五穀米と市田龍生都選手
Q:五穀米というものを初めて食べたですが、おいしかったです。
選手たちは、普段から五穀米にしている人も多いようで食べ慣れてるみたいです。沖縄合宿でも玄米と白米が半々のものを出してもらっているのですが、玄米だけのほうが良いっていう選手もいるくらいでした。
ポイントは「バランスの良い食事である」こと
Q:ジャパントラックカップでは、数量限定で一般販売すると伺いました。わかりやすいネーミングをつけるとしたら、「プロテインたくさんムキムキ弁当」みたいな感じでしょうか?
それは……食品表示法に引っかかりそうですね(笑)。
世界チャンプ弁当、世界最速弁当、爆速弁当……「爆速!スプリンター弁当」とかどうですか?
写真のような人たちのためのお弁当になります
Q:いいですね!でも、いまあげていたネーミングからすると、プロテインが多めであることが献立のポイント、というわけではないのでしょうか?
「バランスの良い食事である」ことが一番です。そのうえで、低脂質であり、たんぱく質をしっかりと摂れる、ということがポイントです。
たんぱく質だけに着目するならば、たとえば牛丼チェーンとかでも、牛肉とご飯で摂ることができます。でも、脂身が多い肉なので脂質が多くなってしまうんです。そうではなくて、肉を食べ、脂質を少なくした上で、しっかりとたんぱく質を摂る。そのために、豚肉であってもバラ肉は使わないとか、油を使わず蒸す調理法にしたりとか工夫をしています。
お好きなものからどうぞ
Q:なるほど。では、食べ方のポイントはありますか? 野菜を先に食べたほうがいい、といった話も多く聞きます。
いろいろな考え方はあると思いますが、定食や弁当であれば時差が発生するわけではないので、順番はなんでも良いと思います(笑)。
Q:え、そうなんですか?
たとえばビュッフェであれば、サラダから食べることで、他の物の量を減らすことができますし、吸収の面でも良い影響が出ると思います。
でも、お弁当に関してはそんなに順番は関係ないです。なにより、満遍なく食べたほうがおいしいですしね。
Q:好きなものから食え、ですね。
はい(笑)。
トレーニングと一緒で、理解が重要
Q:これを食べれば健康になります、と言えますか?
普通に生活をしていると、どうしても食事も偏ってしまいます。自分でバランスの良いメニューを考える、というのは大変ですし、鶏肉の皮をすべて取って調理する、ということまではしていない方も多いはず。多品目を食べるというのもハードルが高いと思います。
ものすごく食事に気をつけている方は別ですが、そういうことをあまり考えたことがない、と言う方は健康に近づくと思います。
Q:選手たちも、この食事で体が変化していくことが期待されますか?
そうですね。たとえば、なぜ緑黄色野菜を入れたいか。それは、抗酸化作用を狙っているからなんです。同じ理由で、生の果物も入れるようにしています。
運動をすると、体が酸化していきます。本来ならば自分の体で打ち消せるのですが、アスリートの運動量になると処理しきれなくなってきて、疲労につながってしまう。その予防として、抗酸化作用があるものを食べてほしい、と考えています。
Q:このアスリート飯に入っているひとつひとつの品には、しっかりと理由があるのですね。
そのとおりです。すべてを理解するのは難しいかもしれませんが、「こういう意図のもとで、このメニューを食べている」と知って食べたほうが、より効果がでると思います。そういう部分は、トレーニングと一緒かもしれませんね。
世界のアフロ、山﨑賢人 2024ケイリン世界チャンピオンの感想「アフロになれます」
本当に凄く助かっています。ありがたいです。ハードなトレーニングをした後でも食べやすく、脂っこくもないしヘルシーなので体にもプラスになります。これを食べたら、更なる高みに絶対にパワーアップしていくと思います。
Q:これまでで印象的なメニューはありますか?
汁物が大好きなので、豚汁みたいのが…噛み易くて、飽きない物が好きですね。
Q:このご飯を食べればアフロになれますか?
なれます。
なれます!
記事中にもあったが、「爆速!スプリンター弁当!」は5月29日(木)から4日間開催されるJAPAN TRACK CUPにて土日限定・数量限定で販売予定。是非興味がある人はトライして欲しい。