2023年のネーションズカップでは第1戦のエリミネーションで優勝し、第3戦までの熾烈な戦いの中、男子中長距離チームで唯一のメダル獲得者となった橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)。続く全日本選手権では個人2種目でタイトルを獲得し、チームパシュートでは日本新記録の樹立にも貢献した。

日本の競輪やロードレースにも出場する傍ら、トラック中長距離にて世界トップの舞台で戦い続けている橋本。

東京2020オリンピックにも出場した経験豊富な橋本に2023年シーズン前半の振り返りや、アジア選手権、そしてパリ2024オリンピックに向けた意気込みを伺った。

2023年シーズンの成績

開催月 大会名(開催地) 成績
2月 ネーションズカップ第1戦
(インドネシア・ジャカルタ)
エリミネーション:優勝
オムニアム:18位
マディソン:5位
チームパシュート:8位
3月 ネーションズカップ第2戦
(エジプト・カイロ)
エリミネーション:8位
マディソン:15位
チームパシュート:8位
4月 ネーションズカップ第3戦
(カナダ・ミルトン)
エリミネーション:6位
マディソン:6位
チームパシュート:9位
5月 全日本選手権トラック
(伊豆ベロドローム)
チームパシュート:優勝&日本新記録(3分52秒532
オムニアム:4位
マディソン:2位
エリミネーション:優勝
スクラッチ:優勝
ポイントレース:3位

去年よりは強くなっている

Q:最近、東京2020オリンピック前の橋本英也が帰ってきたような感があります。オーラといいますか・・・・何か理由ってあるんでしょうか?

去年よりは強くなってるかな、と思いますね。これといったきっかけはないんですけど……覇気がない状態で自転車に乗っててもつまらないですよね。速く走った方がチャリは楽しいと思って、練習しました。

ガチでやった方がやっぱり楽しいし、その結果が今出せている雰囲気なのかなと思います。

Q:エリミネーションなどを見てると、本当に楽しそうだなと思います。

楽しいです!やっぱり人は波があるので、良い時もあるし悪い時もある。そういうものだと捉えています。

Q:笑顔を見られると、「ああ、調子いいんだな」と思います。

その通りです!

橋本英也, ジュールス・ヘスタース, HESTERS Jules, BEL, ヨエリ・ハビック, HAVIK Yoeri, NED, 男子エリミネーション表彰台, MEN'S Elimination Podium 2023トラックネーションズカップ ジャカルタ, 2023 TRACK NATIONS CUP Jakarta, Indonesia

Q:今シーズンは、ネーションズカップでもエリミネーションで優勝しています。

嬉しかったですね。目標を決めてやった結果、目標を達成する。そのプロセスが踏めたことが嬉しかったですし、楽しかったです。

チーム全員で出場するオリンピック

松田祥位, 窪木一茂, 橋本英也, 兒島直樹, 男子チームパシュート予選, MEN'S TEAM PURSUIT Qualifying 2023トラックネーションズカップ ジャカルタ, 2023 TRACK NATIONS CUP Jakarta, Indonesia

Q:橋本選手はチームパシュートもマディソンもオムニアムも、オリンピック種目は全て走れてしまいますよね。ご自身として力を入れている種目はどれなのでしょう?

東京2020オリンピックではオムニアムで出場しましたが、オムニアムにこだわってるわけではありません。でも皆で出られるチームパシュートでオリンピックに出場したいという思いはあります。チームパシュートで出られなければ切り替えて、ほかの種目でやっていこう、って感じです。

自分はどの種目でもできるし、だったらみんなで出られる種目の方がみんなハッピーです。そういう観点ですね。

TEAM BRIDGESTONE Cycling A, 窪木一茂 ,今村駿介, 松田祥位, 橋本英也, 1-2位決定戦, 決勝, 男子エリート, チームパシュート, 2023全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

東京2020オリンピックみたいに枠が1つで、そこに僕が出ることになったとして、そうなったら僕は良いけど、今頑張ってるほかのみんなは出られない。みんながオリンピックに出たいと思っていて、そこを目標にしているわけですから、枠を増やすのが1番良いと思います。

これは毎年恒例なんですけど、全日本選手権のオムニアムでは、3種目目まではトップで上がれるんですよ。そういう意味で自分の選手としての素質はあると思います。でも、やっぱりみんなで出たほうが良いですから。誰かの椅子を奪って勝つよりも、みんなでハッピーに勝ちたい。まあ勝ち負けがあるのはスポーツである以上、仕方がないことですけど。

Q:橋本選手のチームパシュートでのポジションって確定しいるのでしょうか?

第3走か4走かなと思いますね。前は第1走だったのですが、有酸素能力が足りなかったからです。今はその能力が伸びたので第3走・第4走で合ってると思います。

橋本英也, 男子チームパシュート予選, MEN'S TEAM PURSUIT Qualifying 2023トラックネーションズカップ ジャカルタ, 2023 TRACK NATIONS CUP Jakarta, Indonesia

Q:そんなチームパシュートですが、ネーションズカップ第1戦では登録ミスで1回戦に出られないというハプニングもありました。

出られたとして結果がどうなったかは分かりませんが、あれは痛かったですね。

僕はその時はチームパシュートの出場メンバーではなかったので、そこまで当事者ではありませんでしたが……実は全日本選手権でも、個人パシュートに出るつもりだったのに登録ミスで出られないということがあったんです。

これからオリンピック本番に向けてこういった事務処理も大事になるでしょうから、良い教訓になったのではないかと思います。

余談ですけれど、全日本では実はケイリンにも出たいと思ってました(笑)「オムニアムの日でしょ!」ってチームから止められましたけどね。

「めっちゃ良かった」裏TOJとは?

Q:有酸素の話の流れで、裏TOJのことも伺いたいですね(笑) 

※橋本選手はTour of JAPANの第1ステージでパンクし途中棄権となった。その後は謎の裏TOJを1人で実施し、伊豆に帰還した経緯がある

TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)の時は調子が良くなかったんですよねえ。パンクで降りちゃったのは仕方ないけど、調子が良ければもっと走れたはずでした。タイミングが悪かったなと……

Q:レースを降ろされて、どういう思考回路があったのでしょうか。

レースを降ろされたらすぐ帰りたい人が大半だと思います。でも帰っても仕方ないなと思い、だったら練習して帰ろう!となりました。

スタート地点からホテルまで行けば良い練習になるし、自転車旅みたいでいいなって(笑)

TOJって、長野ステージなら長野の周回コースをくるくる回るんです。長野が終わって、次が富士山ステージなら、富士山の会場までは車で移動する。僕の裏TOJではみんながレースをしてる間に長野から富士山までを移動するものでした。

僕はやっぱり自転車での旅、新しい知らない場所に行くことが好きなんですよね。めっちゃ良かったですよ。

Q:何か発見はありましたか?

自転車って競技でもあるけど、ほとんどの人は移動手段として使いますよね。やっぱり移動手段としての自転車って最高だなって思いました。まあ、いつも思っていますけど(笑)

最終的な走行距離は3日間で500kmちょいでした。1日6〜7時間くらいのライドで、良い練習になったと思いますよ。本当はTOJのレースで勝ちたかったですが、レースを降りてからの選択としてはベストだったと思います。

Q:ダニエル・ギジガー中長距離ヘッドコーチは、こういったチャレンジが好きそうですね。

はい、話を聞きつけてテンション上がっていましたよ(笑)

ダニエル・ギジガー新コーチとの相性

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