チェコのターミネーターと呼ばれる男、トマシュ・バベク選手インタビュー

TOMAS BABEK(トマシュ・バベク)

Text : Mizuki Ida
Photo : Shutaro Mochizuki

ワールドカップ2勝 チェコのターミネーター、トマシュ・バベク

これまで、短期登録制度で日本の競輪で活躍をしている、ワールドクラスな自転車トラック競技選手である、デニス・ドミトリエフシェーン・パーキンスを紹介してきた。世界のトップクラスの男たちは皆、驚くような面白いストーリーを持っていたが、今回ご紹介する選手も負けじ劣らず…もしかしたら勝っている?と思うほどのストーリーを持っている。人生に起伏のある人は強くなれるのかな〜?と思っていしまう位、皆さんネタだらけ。

今回が初来日、2016〜2017のトラックワールドカップ第1戦、2戦で男子ケイリンの優勝者、TOMAS BABEK(チェコ)をご紹介しよう。

TOMAS BABEK(トマシュ・バベク)選手プロフィール

1987年6月4日生まれ。チェコ共和国出身。全チェコ選手権にてケイリン、スプリント、TT(1km) 、オムニアム、チームスプリントスプリントで優勝するなど、チェコ最強の自転車トラック競技選手。2011年に交通事故へ遭い、選手生命が危ぶまれる程の大怪我を負うも、大手術と長いリハビリを経て復帰。2016-2017年のワールドカップではケイリンで2度の優勝を飾る。

TOMAS BABEK(トマシュ・バベク)

日本の“競輪”に慣れるのが大変…

Q:名前はどう読むんですか?

TOMAS BABEK(トマシュ・バベク)です。

Q:やっと日本に来てくれましたね

日本へ来れて、とても嬉しいです。日本の競輪へ招待されたことを誇りに思います。なので、自分にとっても大きな挑戦だと感じています。日本の競輪は国際ルールのKEIRIN(ケイリン)とは異なるので、これはチャレンジだと思っています。

Q:今は日本での成績は良くありませんが…自身ではなぜだと思いますか?

いつも、コンディション作りを冬に行っています。4月の世界選手権が終わってすぐに日本へ来たので、身体のリカバリーが間に合っていないことが勝てていない原因の1つです。さらに、そういう状態にも関わらず、気合を入れるために日本へ来てからたくさん練習してしまいました。これも勝てていない原因の1つです。まあ、最初の3~4レースは日本の競輪に慣れるための準備期間と考えていたので仕方ないと思ってもいます。
ただ、そんなに早く慣れる事ができるかな?という不安もあります。日本の競輪ならではの“ライン(2〜4人でグループを組み、他の選手と連携を取る事)”でレースをすることが難しいですね。国際ルールのケイリンは個人同士の戦いですが、日本の競輪では2~3つのライン対自分です。なので勝つのが難しく、これにどう立ち向かうか、勉強しないといけませんね。
あとは、日本の選手をよく知らないことも理由の1つです。誰が強いのか?脚質がどうなのか?とか。なので、今は全く新しいことへの挑戦ばかりですよ。

Q:つまり、周りが敵だらけってことですね。

そうですね。まあ常に罠の中にいるというか…日本へ来て初めてのレースでは、まず最後尾まで下がってしまいました。これまでに自分が戦ってきた国際ルールのケイリンでは、一番後ろへ下がった事なんてありません。でも下がってしまったんです。そしてボロ負けしました…。どうしてそうなったのか自分でも不思議で。レースを重ねる度に慣れてきてはいますが。
また、日本の競輪選手たちのレベルが高い事にも驚いています。自分のコンディションが悪いとはわかっているものの、慣れていないことと日本の競輪の戦術にやられていますね。
日本の競輪は難しいですよ。まだ慣れている段階なので頑張ります。ただ仲の良い友人でもあるデニスも、日本へ初めて来た頃は勝てていなかったことを考えると、希望は見えていますね。学べば良いだけだと思います。

ケイリンと競輪、何が違う?

TOMAS BABEK(トマシュ・バベク)

Q:国際ルールのケイリンと、日本の競輪で、大きな違いを1つだけ挙げるとすれば、それは何ですか?

やっぱり“ライン”で走ることですね。国際ルールのケイリンは個人戦、日本の競輪はライン同士のチーム戦という所です。

Q:日本の競輪で走ろうと思ったのは何がきっかけでしたか?

ケイリンという競技が好きなんです。得意なのもあるけど、ケイリンがどこで生まれ、そのルーツがどんなものなのか、実際に見てみたかったんです。日本には今回初めて来ましたが、凄く面白いですね。ヨーロッパとは違う所だらけで。言葉も聞いたことのないものだし…だから日本という国を見てみたかった、というのが一番の理由です。ただ、あまりにも自分の知っていた世界と違いすぎて困惑もしています。まあこれも慣れが解決すると思いますが。

Q:ホームシックになったりはしませんか?

知っている人が誰もいない土地なので、孤独感はありますが、ホームシックという程ではありません。でも、婚約者には早く会いたいですね。

Q:では、日本に来る前に日本の“競輪”について知っていましたか?例えばレース期間中に電話やネットを使ってはいけないなど、外部との関わりを許されないとか。

話には聞いてはいましたが、正直本当だと思っていませんでした(笑)まるで監獄に入っている気分ですね(笑)監獄といっても、場所のことを指しているのではなく、精神的な意味です。レース関係者以外とはコンタクトが取れないので、夜のレースに出る日は、日中がとっっっっても暇です。映画を観たりして時間を潰します。私はアウトドア派なので、これがとても辛い。「外に出た~~~い!」って。このルールにも早く慣れなくては。慣れなきゃいけない事が多いですよ。

Q:来日してから何日か休日があったと思いますが、何をしていましたか?

このところ忙しかったのですが、熱海には行きました。ビーチに行ったり、観光したり…それぐらいですね。トレーニングやレースばかりの毎日なので、1週間位は休みたいですね。
あっ!!そうそう、ロードトレーニングで海岸を走った時に伊東へ行ってきましたよ。
日本に来てからずっと、競輪選手として、本当に真面目に過ごしているので、そろそろ頭と体を休めないと(笑)
婚約者がもうすぐ日本へ来る予定なので、一緒に東京、沖縄、京都などに行こうと思ってます。

Q:もし沖縄に行くなら8月は気をつけて下さいね。よく台風が来るので。

本当に!?じゃあ京都にしようかな…(笑)ちゃんと天気予報をチェックしてから行き先を決めます。

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