窪木一茂、挑戦を体現し続けてきた男の新たなシナリオが始まる。窪木にとって4種目になってから初めての世界選手権のオムニアムへの出場。
チリ・サンティアゴを舞台に、10月25日に実施された『2025世界選手権トラック』男子オムニアム。激闘の末に日本史上最高位となる銀メダルを獲得した窪木のレースをお伝えする。

男子オムニアムには前年のスクラッチで世界一に輝いた日本の窪木一茂のほか、アシュリン・バリー(アメリカ)、リンジー・ド ヴィルダー(ベルギー)、イウーリ・レイタオ(ポルトガル)ら全24人がエントリーした。

スクラッチ:職人・窪木 流石のレースを披露

定められた距離を走り着順を競うスクラッチ。シンプルに「1着になれば勝ち」というルールであり、「バンクで行われるロードレース」と表現されることもある種目。40周・10kmで行われる。

2022、2023と銀メダル、2024は金メダルを獲得しているスクラッチ。今回はオムニアムの中の1種目として出走する。レースは40周、10kmの戦い。集団はアタックしては吸収を繰り返し、逃げる選手たちが毎回捕まる展開。

終盤までは集団の後方で静かにしていた窪木が動き出し始めたのは残り15周を切ってから。

少しずつ位置を上げていくと、残り10周では集団の中段へ。そして周回を重ねていきながら前へ前へと更に位置を上げていく。

集団がゴールスプリント体制へと位置取りをし始めると、窪木は5~6番手、集団の内側に位置して時を待つ。

残り2周、蓋をされるような形で内側で我慢していた窪木の斜め前に道ができると、一気に前へと窪木が踏み込んでいく。最終周回に入ると単独で集団を置いていった窪木。スクラッチ職人が巧みな技と力強い走りを見せて、この第1種目を見事に1着で制した。

スクラッチ結果PDF

テンポレース 中盤で稼いだ窪木が2位

毎周回、フィニッシュラインを1着で通過した選手だけ1ポイントを得ることができるテンポレース。さらに集団を1周追い抜いた場合(ラップ)は20ポイントが加算されるルールとなっている。

レース序盤は静かにしていた窪木だが、中盤にメイン集団から飛び出してポイントを重ねていく。単独で7ポイントを獲得した窪木が2位となった。1位はモリッツ・オーガンスティーン(ドイツ)。

テンポレース結果PDF

エリミネーション 行き場を探して……

2周に1回、最後尾の選手が除外されていくエリミネーション。スタート直後からダッシュをしているかのようなスピードでレースは進む。狭いスペースの中、窪木は集団の中段でレースを展開していく。

しかし残り9人で迎えた除外周回で、外から上がってくる選手たちに蓋をされる形で行き場を失った窪木。前の選手たちの間に突っ込むように動くが、最後尾になってしまい、この種目を9位とした。

エリミネーション結果PDF

混沌のポイントレース 動かない窪木

ここまでの3種目で得たポイントを持ち点として行われる最終種目。10周ごとのスプリント周回で、1着に5ポイント、2着に3ポイント、3着に2ポイント、4着に1ポイントが与えられ、ラップによる20ポイント加算も可能となる。レースは100周、25km。

最終種目のポイントレースレース前の暫定順位は以下の通り:

暫定トップ5
順位 名前(国) ポイント
1 アルベルト・トーレス(スペイン) 106
2 窪木一茂 102
3 モリッツ・オーガンスティーン(ドイツ) 100
4 リンジー・ド ヴィルダー(ベルギー) 98
5 フィリップ・ハイネン(オランダ) 86

レースがスタートすると、トーレスはポイントを積み重ねていく展開。窪木は集団の後方で動かない。窪木が動かないうちに他の選手たちが1周追い抜きやポイントを重ねていき、10回中2回目のポイント周回を終えて、窪木は順位を一つ落として3位に。そして3回目のポイント周回でも更に順位を落として1ポイントも得ないまま、オーガンスティーンとヴィルダーに逆転を許して4位となってしまう。

窪木 遂に始動

残り60周を切ったところでようやく動き出した窪木。トップ争いを繰り広げるトーレスに加えてレイタオ(ポルトガル)、ハイネン(オランダ)と組んで、逃げ集団となって進んでいく。

4人で協力しあい、メイン集団を1周追い抜きすると、それぞれ20ポイントずつの獲得の上に、ポイント周回でのポイントも加わり4人が順位を上げていく。

しかしこの4人のポイントが残り30周ほどまで反映されず、今、誰が何ポイントを持っているのかを知るのが困難になった。

ようやくポイントが反映されると、残り30周のポイント周回前にトップ3は以下の通り:

トーレス:133ポイント
オーガンスティーン:127ポイント
窪木:125ポイント

最後まで分からない激闘

まだまだメダル争いが分からない中、残り20周のポイント周回では窪木のみが2ポイントを獲得し、127ポイントでオーガンスティーンと並ぶ。残り10周のポイント周回でもトップ3はポイントを得ずに、勝負は最後のポイント獲得のみとなった。

その時点でリンジー・ド ヴィルダー(ベルギー)が逃げており、残り8周で集団をラップ。一気に131ポイントまで上がり、暫定2位へと上がってくる終盤の展開。

前ではトップ争いに関係のない2人が逃げる中、最後に力を振り絞ったのは窪木。最終スプリントで3着4ポイントを獲得すると、合計を131ポイントまで伸ばした。

最終結果はトーレスが133ポイント、窪木とド ヴィルダーが131ポイントで並んだが、窪木の最後の着順がド ヴィルダーより上だったため、窪木が総合2位、ヴィルダーが3位という形になった。

選手名 チーム ポイント
1位 アルベルト・トーレス TORRES BARCELO Albert スペイン 133
2位 窪木一茂 日本 131
3位 リンジー・ド ヴィルダー de VYLDER Lindsay ベルギー 131

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選手インタビュー

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