ジュニア時代から輝かしい成績を残し、2024年より本格的にエリートカテゴリーに挑んでいる水谷彩奈。

世界でも活躍する強い先輩たちとトレーニングを積み、今年の『アジア選手権トラック』スクラッチでは銅メダルを獲得、『全日本選手権個人ロードタイムトライアル』では優勝を果たすなど、着実に成長の跡を刻んでいる。

どこか大物になりそうな気配を感じさせる20歳の大学生・水谷彩奈の素顔に迫るインタビューを、『全日本選手権トラック』(8月22~25日)に向けた企画としてお届けする。

▼『2025全日本選手権トラック』関連記事・選手インタビューはこちらから

運命の出会いはサンタクロースからの贈り物

Q:自転車競技をはじめたのはいつからでしょうか?

ロードバイクに乗り始めたのは小学校3年生くらいから。レースにも少しは出ていたのですが、家族ぐるみの趣味みたいな感じでした。小学5年生で初めて全国大会に出たので、本格的に始めてからは今年で10年目になります。

Q:意外とロングキャリアですね。そもそも自転車に乗り始めたきっかけは?

親がクリスマスプレゼントでロードバイクをくれたんです。クリスマスの朝に起きたら自転車が置いてあって。あ、親じゃなくてサンタさんですね(笑)。

Q:ご家族も自転車に乗るんですか?

ロードバイクをもらってからは、お父さんとお母さんも一緒に付き合ってくれて、よく近所に走りに行っていました。小学生なので大したことないですが、たまに遠出して30㎞くらいを家族で走ったり。弟もいるのですが、一緒に走っていました。

Q:小学生で30km?ちょっと考えられないです。

新潟の長岡市出身で、少し行けば寺泊という海鮮が有名な街があるのですが、家からそこまで自転車で行って、帰りは車に乗ってくるみたいな感じで。

Q:弟さんは、今も自転車に乗り続けているのですか?

はい。去年のインターハイの4km速度競走で3位(水谷悠平/新潟吉田)になっていました。気がついたら私と同じ道を歩んでいるみたいです。

Q:サンタクロースがきっかけで、小学生で30km走るようになるとはご両親も想像していなかったのでは?

30kmって行っても時速15kmとかゆっくりでしたよ。そこから自然と自転車にハマっていったのか、ハマるように親がレールを敷いてくれたのかは分からないのですが、気がついたら今の状況になっていました(笑)

どこにだって行ける自転車の魅力

Q:導かれるように世界で活躍する自転車競技の選手になったわけですが、水谷選手の思う自転車の魅力は?

自分の力で、どこにだって行けるところですかね。頑張ればどこでも行けるので楽しいです。

Q:遠くまで行くこともあるんですか?

これまでで一番長かったのは、高校(松山学院高校)の頃に松山市からしまなみ街道をわたって広島の端まで行って帰ってくる往復240kmのコース。ゆっくりペースで1日かけて1人で走ったのが最長です。

Q:それを3週間やり続けるツール・ド・フランスなんて、いつかいかがですか?

やばいですね。絶対無理です。ゆっくり1人で走るなら良いのですが、レースはきついですね。

Q:そういう意味では、ロードよりもトラックの方が向いているのでしょうか?

そうかもしれないですね。高校の時はロードも走っていましたが、トラックの方が距離も短いし、戦術も色々あるし、種目も沢山あって楽しいなと思います。

Q:以前、高校時代にお話を聞いた時に、「ロードの方が好き」と言っていた気が……?(笑)

そういう時期もありましたね(笑)。でも、今はトラックの方がしっくりきています。

全日本TTでの優勝

Q:6月に行なわれた『全日本自転車競技選手権大会個人タイムトライアル』では見事優勝。全日本のタイトルは初でしょうか?

昨年の『全日本選手権トラック』チームパシュートで優勝はしているのですが、それは出場1チーム。勝ち取った全日本タイトルは今回が初なので、すごく嬉しかったです。

Q:優勝できる自信はありましたか?

面白そうと思ってエントリーしたのですが、自信は全然無かったです。自分の1分後に梶原(悠未)さんがスタートで、追いつかれたら終わりだと思って全力で逃げていました。

走っている時は自分のタイムしか分からないのですが、後で1人になった時にスマホで結果を見たら勝っていてびっくりしました。

Q:チャンピオンジャージに袖を通した時の気持ちは?

優勝できて嬉しいなって思いました。

「何だ?この人たちは」強すぎるお姉様方

Q:現在のナショナルチームの中長距離には梶原悠未、内野艶和、池田瑞紀、垣田真穂の4選手がいて、その次の世代として水谷選手、岡本美咲選手がいる状況です。パリ2024組、4人の選手に対する印象は?

強すぎて、最初は「何だ?この人たちは」って思いました。ジュニアでは世界3位を獲得したり、全日本でも優勝できていたので、国内だったら遅い方ではないと思っていたのですが、エリートになったら全然違いましたね。でも、そんな強い先輩たちと良い勝負ができたとしたら、世界でも戦えるということ。とっても良い目標が、周りにいてくれてありがたいです。

梶原悠未, KAJIHARA Yumi, 内野艶和, UCHINO Tsuyaka, 垣田真穂, KAKITA Maho, 池田瑞紀, IKEDA Mizuki,JPN, 女子チームパシュート 決勝, WOMEN'S Team Pursuit Final, 2025アジア選手権トラック, 2025 ASIAN TRACK CYCLING CHAMPIONSHIPS, Nilai, Malaysia

Q:チームの中でも、特にすごいなと思った選手は?

みんな脚質も違うし、それぞれに尊敬できるところがありますね。梶原さんはレースをすごく考えて展開しているし、(池田)瑞紀さんは恐怖心がないのかってくらいガンガン行くし、(垣田)真穂さんと(内野)艶和さんはマディソンでも世界で戦えている。本当に凄いなって思っています。

Q:でも、その選手を倒さないとオリンピックや世界選手権には出場できないですよね?

そうですね。正直、今はまだその姿は考えられないです。ちょっとでも追いつけるように頑張っています。

好きな食べ物はブドウと梨です!

1/2 Page