2024パリオリンピックから帰国した9月、自身のメインフィールドである短距離から中長距離のフィールドへのチャレンジをし、日本のトラック競技ファンを賑わせた佐藤水菜。

初チャレンジながら立派な成績を残した佐藤だが、もともと「自転車で遠くに行くことが好き」という点がベースにある選手で、ロードレースにも素養があったことが伺える。

「競輪場は遊び場だった」パリオリンピックに向かって走り出す、佐藤水菜インタビュー

佐藤が今後活動の軸をどこに置くかはまだわからないが、ここで1人、短距離→中長距離へ転向した選手の例をご紹介しよう。

マティエス・ブフリ

ケイリンで世界選手権(2019)を制し、2020年世界選手権チームスプリント優勝、東京2020オリンピックでチームスプリント優勝に貢献したマティエス・ブフリ(オランダ)。

短期登録選手を利用して日本の競輪にも出場し、日本のファンにも親しまれている。

自転車トラック競技短距離種目で枚挙にいとまのない活躍をしてきたブフリだが、東京オリンピック後の2021年12月3日、ロードレースへの転向を発表した。

当時のリリースでは

「実は2019年にケイリンで世界チャンピオンになった時に今回の転向について決心していました。既に10年以上トラックサイクリングに関わってきましたが、トラック競技者として自分が設定した目標は全てクリア出来ました。今は新たな挑戦が必要となっています」

「テオ(・ボス)には『自分がロードに転向した時とは違い、今はレベルが高い。だから、やめた方が良い』と言われましたが、何事にも絶対はありません。自分でもどこまで出来るかはわかりませんが、今回の挑戦を精一杯頑張って、実りのある経験にしたいと思います」

とコメント。新しいチャレンジをする中、筋肉隆々だった体型も幾分シュッとなっている。

シュッ。

その後トラック中長距離種目にも登場するようになったブフリ。2023年のネーションズカップでは橋本英也などを下し、エリミネーションで優勝している。

複数のフィールドを股にかける選手たち

自転車競技の選手たちの中には佐藤やブフリのように短距離と中長距離、中長距離と競輪、短距離とBMXなど、複数のフィールドを兼任する、または過去に経験している選手が珍しくない。

怪我の可能性が低いトラック競技で基本的な走行方法を習得した後、ロードに出たほうが良いとの持論を述べる選手もいる。2024全日本選手権で中長距離をメインフィールドとする窪木一茂らが短距離種目にチャレンジしたように、転向とまではいかなくとも、普段と違う距離を走って刺激を入れる効果もあるだろう。

トラック競技がロードレースに役立つ3つの理由

「新しいチャレンジ」が複数見られた2024全日本選手権。今回のチャレンジは、選手たちにどのような刺激をもたらしただろうか。

ロサンゼルスオリンピックに向けた、選手たちの新たな試みに今後も注目だ。

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