ジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチ
Q:ネーションズカップ3戦を振り返って、どのような感想を抱いていますか?
オリンピックに向けて良いスタートを切れたのではないかと思います。男子スプリントでは太田海也が良い成績を残したことでポイントを獲得できましたし、世界に対して日本の存在感をアピールできました。ケイリンについてもチームとしての経験を積めています。
中野慎詞が金、太田海也が銅、寺崎浩平が4位、山﨑賢人は10位 快進撃を見せた日本勢 男子ケイリン/2023 UCIトラックネーションズカップ第2戦(エジプト・カイロ)
佐藤水菜選手にとっても大きな経験になったと思います。世界選手権では2年連続銀メダル、ネーションズカップでも優勝を重ね、彼女の成績は運ではなく実力であることを証明しました。自分の組に佐藤選手がいると、他国の選手は彼女を意識します。佐藤選手自身も、世界からのそのような視線に対応できています。
チームスプリントについては良いスタートとは言えませんでしたが、酒井亜樹選手が入ってきたことで今後の伸びに期待します。女子にとっての今後の一番の挑戦は世界選手権になりますね。
Q:女子のチームスプリントにはBMXライダーの酒井亜樹選手が加入しましたが、どのような展開を考えていますか?
女子チームスプリントはこれまでスターターのタイムが課題でした。そんな中で彼女の加入はとてもプラス要素。世界トップチームに食い込める可能性が出てきましたので、彼女に合わせてチーム構成を考え直す必要があります。
酒井選手が練習へ参加するようになってからまだ2ヶ月弱ですが、今回のエキシビションレースでのスタートを見て満足しています。アジア選手権、世界選手権と良いタイムを期待します。
Q:直近の大会で好成績を連発している太田海也についての印象は?
チームに入った時から才能を感じて、とてもワクワクしていた選手でした。もちろん戦略などはまだまだ勉強の必要がありますが、競技の上達がとても早いです。
今年はたくさんレースを経験するという戦略を取っており、この全日本選手権もそのひとつ。ネーションズカップでは戦う素質が十分にあることを確認できました。クリティカルな場面でその実力を発揮できるよう育てていきます。
太田海也が今大会3つ目の銅メダル獲得 男子スプリント/2023 UCIトラックネーションズカップ第2戦(エジプト・カイロ)
Q:世界選手権での目標は?
戦略で言えば「より多くオリンピックポイントを獲得する」になります。加えて表彰台の可能性もある国だとアピールするため、表彰台に乗る、あるいはそこを争う立場である姿を世界に見せることです。
ダニエル・ギジガー中長距離ヘッドコーチ
Q:ダニエルコーチは2023年の初めに中長距離新コーチに就任しましたが、ここまでに見えてきた日本チームの状況は?
クレイグ・グリフィンコーチからこのチームを引き継ぎましたが、非常に高いレベルのチームを受け取ったと感じます。昨年(2022)の成績からすると、オリンピックの枠を取る可能性が十分にあるチームでした。
今年のネーションズカップの成績を見ると少し難しくなりましたが、まだ可能性はあります。特に女子チームにはジュニアからエリートに上がったばかりの若い2人がいます。チームが変わっていく可能性は十分にあります。
Q:ここまでのシーズンを振り返っていかがですか?
梶原悠未選手は世界トップの選手でモチベーションもとても高いです。そんな彼女を目標としている若い2人(垣田真穂・池田瑞紀)が入ってきて、一緒にトレーニングをすることで、双方にとって良い影響となっています。チームパシュートのメンバーとしては内野艶和選手もいますが、彼女も最近また一段階レベルが上がりました。
このメンバーで2年後、3年後にはかなり期待できるチームになるのではないかと思います。
男子に関しては、経験豊富な窪木一茂選手がチームのエンジンとなっています。若くて優秀な今村駿介、兒島直樹選手もいますし、個性的でオーラのある橋本英也選手もいる。彼は少し調子が落ちていましたが、最近また上がり調子にあります。全日本選手権でもそれは表れていますね。
このようなメンバーが相互作用してモチベーションが上がっており、とても期待しています。
全日本選手権には調整を入れず、負荷のあるトレーニングした状態(疲労を抜いていない状態)で入ってきています。最高の調子ではない中、チームパシュートの日本記録など良いタイムを出せています。若いチームですが有望だと思っています。
Q:アジア選手権、世界選手権の目標は?
両方とも重要な大会ですが、アジア選手権は「全種目で優勝することが当たり前」といったレベルとなります。一方世界選手権になるとレベルがグッと変わってくる。例えばイタリアチームにはロードレースでも活躍するジョナサン・ミランのようなトップ選手がいるように、レベルの差は歴然です。
もちろんベストな成績を出すことが必要ですが、その上でベスト8やベスト10に入ることが目標です。