選手の安全を確保するために、『2025世界選手権ロード』(2025年9月21日〜28日)の全種目にて導入されたGPSによる選手追跡システム。
全選手のサドルの下に、GPS追跡装置を設置し、選手の位置や速度だけでなく、急停止などの異常な事態をリアルタイムで監視・検知するための安全対策だ。
UCIのダビド・ラパルティアン会長は、本対策システムについて「将来的にはUCIの全てのレースへの導入を目指す」と語った。
直近の導入は、年内最後のモニュメント『イル・ロンバルディア』
『2025世界選手権ロード』開催中のコンベンションセンターにて実施された会見では、「将来的に、UCIの全てのレースへの導入を目指していくことは明らかです。まずワールドツアーから導入し、可能であればプロシリーズにも導入できれば良いと考えています」と段階的な導入の検討を語ったラパルティアン会長。
さらに同会見では、10月11日に開催される『イル・ロンバルディア2025』を、直近の次なる導入レースとして検討していることを明かした。
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『イル・ロンバルディア』はイタリア北部のロンバルディア州で例年10月に開催されているロードレースのワンデーレース。
『パリ〜ルーベ』などとともにワンデーレースの中でも特に格式が高いとされる『5大モニュメント』の1つで、初開催は1905年に遡り、2025年で119回目を迎えるビッグレースだ。
2025年大会は、起伏や石畳セクションを含む全長241kmのコース。実際に導入されれば、全長267.5kmを走破した『2025世界選手権ロード』(男子エリート)にも並ぶ過酷なコースで、GPS追跡装置の性能や運用体制が試されることになる。
代替案の導入にもオープン
同会見にて、GPS追跡システムの導入について、批判的な意見や懸念があることに言及したラパルティアン会長。
同氏は、GPS追跡システムで収集したデータをUCIが商業的に使用するのではないか、という懸念が各所で抱かれていることを明かした一方で、導入はあくまで選手の安全を確保するためであり、そのような商業的な利用は過去にもしたことがないし、今後もする予定はないことを強調。
さらに、
「既存のGPS追跡システムの代替案があれば、UCIのコスト削減にも貢献できるため、導入を検討していきたい」
とし、他企業・団体との協力体制についてもオープンであることを語った。
「84」を永久欠番に指定
同会見が実施された2025年9月26日、UCIは公式リリースにて、女子ジュニアロードレースの世界選手権において「84」のゼッケンナンバーを永久欠番とすることを発表した。
「84」は、『2024世界選手権ロード』女子ジュニアロードレースの最中に発生した事故で命を落としたミュリエル・フラー(スイス)が着用していたゼッケンナンバー。
今回のUCIによるGPS追跡システムの導入も、この痛ましい出来事がきっかけとなっている。
The cycling world mourns the loss of Muriel Furrer.
It is with heavy hearts that we say goodbye to this young rider, and we extend our heartfelt condolences to all her family, friends, and teammates.
Rest in peace. 🙏 pic.twitter.com/YEtEldhd59
— UCI (@UCI_cycling) September 27, 2024
これからもさまざまな議論、対話が必要となるが、悲劇を繰り返さないためにも安全対策は必要不可欠。
選手たちを守り、白熱したレースを安心して観ることができる取り組みに今後も期待したい。
最後に本リリース内のダビド・ラパルティアン会長によるコメントを紹介する。
ダビド・ラパルティアン会長 コメント(意訳)
「昨年のUCIロード・パラサイクリング世界選手権で、将来を期待されていた若手ライダーのミュリエル・フラー選手が亡くなったことは、大会と自転車競技界全体に深い悲しみの影を落としました。
1年が経過しましたが、私たちは今もなお、彼女と彼女の愛する人たち、そして彼女が所属していたスイス自転車競技連盟に心を寄せています。
ミュリエル選手への敬意を表し、UCIは彼女が大会中に着用していたゼッケン番号を、UCI世界選手権ロードの女子ジュニアロードレースで永久欠番とすることを決定しました」
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