「日本の競輪」にカッコ良さを感じた
ブノワ:お父様が競輪選手だったとお聞きしていますが、改めてどうして競輪選手の道を選んだのか聞かせていただきたいです。というのも私自身、父親がロードレーサーだったんですが、だからこそロードレーサーにはなりたくなかったんです。
郡司:父親が選手ということで競輪に馴染みはありましたが、最初はまったく興味はありませんでした。でも将来的に自分が何をしたいのかを考える中で、競輪をずっと見ているうちに「競輪という競技」にカッコよさや憧れを持つようになりました。
「親父のようになりたい」というよりは「競輪選手としてカッコよくなりたい」という感じでしたね。親父の影響はありましたけど、それだけではなくて、自分自身が「競輪」にカッコよさを感じたのが理由です。
ブノワ:とある本に「郡司浩平は日本の競輪のトップレーサーなのに、なぜ国際大会に出場しないのか」といったことが書かれていました。それを私からもぜひお伺いしたいですが……リクルーティングではないので心配しないでくださいね(笑)
郡司:(笑)
ブノワ:競輪は「職業」であることを理解していますし、競技に行くつもりのない人が多くいることはわかっています。その上で、郡司選手は今どのような考えなのかを知りたいです。
郡司:そうですね、さっきも言ったように僕は「日本の競輪」に魅力を感じました。オリンピックとか自転車競技とかは全く知識がなくて……それこそブノワさんが日本に来てからナショナルチームがガラッと変わって、盛り上がってきた、メダルに近づいてきたと思うのですけれど、それまで「オリンピックの自転車競技」を見る機会すらあまりなかったです。
最近になってやっと「そういう道もあったんだな」と認識したので、知るのが遅かったとは思います。もうちょっと若い頃に今と同じようなナショナルチームの環境があれば、目指していたかもしれません。もちろん実力次第ではありますが。
ブノワ:遅すぎることもないと思いますが……
郡司:ブノワさんから見て、僕はまだ行けると思いますか?32歳なんですが。
ブノワ:36歳のオリンピックチャンピオンがいますから、諦めるのはまだ早いですよ。
郡司:僕に限らず、日本の競輪を見ていて「この選手は国際大会でも戦えそうだな」と思う選手っていますか?そういうのは興味あります。
ブノワ:それが、日本の競輪ではレースを見ているだけでは判断が難しいんです。やっぱり競輪のラインの中では若者が先行を担うことが多く、実際の実力を判断するのが難しいです。たまに圧倒的な強さを見せる若者がいて、そういう選手は「才能がある」と言えます。太田海也選手はこの例ですね。ですがほとんどの場合は判断が難しいです。
松井宏佑選手は郡司選手と同じ地区なので、よく知っているかと思いますが、彼も同じように、とても才能のある選手です。でも競技と競輪、両方で少し中途半端な立ち位置になってしまいました。才能のある選手でもそのような状態になることは多いですね。
郡司選手は日本の競輪のみを行っていますよね。他の競技をやっている選手たちにも言えますが、「これだけでやるんだ」という心の強さみたいなものがある選手は、やはり強いですね。
郡司:気持ちの部分は確かに大事ですね。
ブノワ:先ほど郡司選手は「競技を知らなかった」とおっしゃっていましたが、それは我々にとってとても興味深い話です。競輪という大きな業界の中で、ナショナルチームはとても小さな存在です。競輪とナショナルチームを繋げるためにどんな方法があるかは、いつも考えています。やはりもっと連携を強めていく必要があると感じました。
計画性のあるトレーニングプラン
ブノワ:その体を見ればジムトレーニングをやってることは一目瞭然ですが、どのようなトレーニングをしているのかお聞きしたいです。
郡司:頻繁にレースがありますから、「週に何回」のようにしっかりと予定を立てるのは難しいです。でも大体2日か3日空けて行っていますから、ジムトレーニングは大体週に2回くらいですね。
内容としてはナショナルチームで行っているものとあまり違いはないと思います。最大パワーを上げるためのトレーニングや、瞬発力を引き出すためのトレーニングを意識して行っています。
ブノワ:レースが多いから定期的なトレーニングは難しいはずなのに、体をしっかり作っていますよね。何か工夫があるのでしょうか?
郡司:特別なことはやっていないのですが、目標としているレース……G1などに向けて、計画を立てています。トレーニング計画を常に自分の中に持っている感じですね。
毎回のG1で、となると時には毎月になってしまうし、スパンが短くなってしまいます。だから今年(2022)でしたら平塚でグランプリがあるのでそこを目標に、来年(2023)ならダービーが平塚なので、そこを見据えて、といった感じに計画を立てる予定です。
ブノワ:ターゲットを決めるのはとても重要ですね。安心しました。このインタビューの前に守澤太志選手に話を聞いたのですが、フィーリングで練習内容を決めていると言っていたので……(笑)
郡司:そうなんですか(笑)
ブノワ:レースにはトレーニングの結果が現れるものです。ラストの捲りなど、トレーニングをしていないとできない走りがレースに見えていますので、計画を持って練習しているんだろうなと走りから感じます。