2021年3月に誕生した「チーム楽天Kドリームス」をはじめ、日本国内には3つの「UCIトラックチーム」が存在する。
以前、「トラックチーム」と「ナショナルチーム」の違いについて、それぞれの役割とお互いの関係性に着目しご紹介したが、2021年に新設された「UCIトラックネーションズカップ」などもあり、規定が微妙に変更されている。
本記事では、改めてこの2つのチーム形態の違いを、大会出場に関する条件やランキングに着目しながらご紹介していく。
最大の目標は「世界一」
トラックチームへの所属の有無に関わらず、競技に取り組む選手たちの最大の目標は「世界一」の座、すなわち*世界選手権での優勝を意味する。
世界選手権に出場するためには、選手たちはさまざまな大会に出場し「UCIポイント」を獲得する必要がある。この「UCIポイント」は、トラックチームとナショナルチームの違いを理解するための重要な鍵となる。
※オリンピックはUCIが直接管轄していないため、省略。
UCIポイントとは
「UCIポイント」とは、国際自転車連合(UCI)の認める大会の結果に応じて選手たちに与えられるポイントのこと。順位に応じてポイントが獲得できる。
また、UCIの認める大会にはグレードがあり、基本的にグレードが高い大会ほど獲得できるUCIポイントも高く設定されている。
各グレードにおいて、スプリントやケイリンなどの個人種目で1〜3位に入賞した際に獲得できるポイントを、例として見てみよう。(エリートカテゴリーの場合)
世界選手権 オリンピック |
ネーションズカップ | 大陸選手権 | クラス1大会 | クラス2大会 国内選手権 トラックチャンピオンズリーグ |
|
1位 | 1000 | 800 | 600 | 200 | 100 |
2位 | 900 | 720 | 540 | 180 | 90 |
3位 | 800 | 640 | 480 | 160 | 80 |
※トラックチャンピオンズリーグの場合は、シリーズ終了後に短距離部門・中長距離部門それぞれの総合順位が算出され、この順位に応じたポイントを獲得できる。そのためチャンピオンズリーグで獲得できるポイントは「レースごとのポイント」と「総合順位によるポイント」の2種類で、上記の表ではレースごとのポイントのみ表記。
参照:UCI Regulations Part 3 TRACK CYCLING 3.3.010 quater
ポイントは「種目ごと」に積み重ねられ、「種目ごと」にランキングが算出される。
獲得したUCIポイントによって作成されるランキングは、以下の3つ。「個人ランキング」、「国別ランキング」そして「トラックチームランキング」だ。
個人ランキングとは、選手個人がある1つの種目で獲得したUCIポイントを合計した順位。少しややこしいのが、「国別ランキング」と「トラックチームランキング」だ。
「国別ランキング」と「トラックチームランキング」
「国別ランキング」と「トラックチームランキング」は、各国・各チームに所属する選手たちが獲得したUCIポイントの合計をそれぞれランキング化したもの。
ただし、所属する全選手のUCIポイントの合計ではなく、以下の大会で所属選手が最も良い成績を上げたポイントの合計値となる。
・オリンピック
・世界選手権
・大陸選手権
・ネーションズカップ
・クラス1競技大会9大会
・クラス2競技大会9大会
・国内選手権
所属選手たちが、上記の7種類の大会で残した成績のうち、それぞれの最も良い成績が採用され、それらの成績から獲得されたポイントを合算する。この合計ポイントが「国別ランキング」と「トラックチームランキング」に反映される。
ここで重要なのは、「所属する選手」の成績が反映される点だ。
2021世界選手権の例で説明しよう。佐藤水菜選手は2021世界選手権女子ケイリンにて、銀メダルを獲得。世界選手権はナショナルチームでなければ出場できない大会だが、獲得したポイントはナショナルチームと、佐藤水菜選手の所属するチーム楽天Kドリームスの両方に反映された。
参照:UCI Regulations Part 3 TRACK CYCLING Chapter III, IV, VII