ネーションズカップは特別
2021年より、前身の「UCIトラックサイクリングワールドカップ」から新たに生まれ変わった「UCIトラックネーションズカップ」。本大会には、UCIポイントについて解説する上で、いくつかの特筆すべき点がある。
トラックチーム最大の舞台
世界選手権やオリンピックに次いで、高いUCIポイントが獲得できるネーションズカップ。
世界選手権やオリンピック、そして大陸選手権には、ナショナルチームもしくは各国選手団としてのみ出場できるが、トラックチームとしてのエントリーはできない。
トラックチームとしてエントリーできるのは、ネーションズカップとクラス1・2の大会、そして国内選手権のみとなる。
クラス1・2の大会や、国内選手権にはハイレベルな選手が顔を揃えるとは限らない。よって、ネーションズカップは高いUCIポイントが獲得できることに加え、優れた国際経験ができる場所としても貴重な舞台であると言える。
エントリーしたチームにのみポイントが反映
ナショナルチームとトラックチームの両方に所属し、そのどちらかで大会にエントリーしたとする。その結果から得られるUCIポイントは、エントリーしたチームに関わらず所属する両方のチームに反映することが可能である、とご紹介した。
このルールの唯一の例外がネーションズカップだ。
ネーションズカップで獲得できるUCIポイントは、エントリーしたチームにのみ反映される。
例えばナショナルチームの選手としてエントリーした場合、獲得したUCIポイントを反映できるのはナショナルチームのみ。トラックチームの選手としてエントリーした場合は、トラックチームにのみ獲得ポイントを反映できる。
参照:UCI規定 Track Races Chapter 4 UCIトラック競技ネイションズカップ 3.4004 参加
厳しい出場条件
ネーションズカップにおける個人種目やマディソンへの出場資格を得る最低条件は、“定められた期限内にUCIポイントを250ポイント以上保有すること”。
オリンピックや世界選手権は「国として出場枠を獲得し、誰が出るかは国内選考で決定する」形式だが、ネーションズカップの場合は選手個人がポイントを持っていることが求められる。
2019-2020シーズンの松井宏佑選手は、UCIポイントが1、2ポイントほど足らず、トラックワールドカップのスプリント種目に出られなかった……というエピソードもあるように、計画的にポイントを獲得する必要がある。
TOP5のトラックチームのみ出場可能
「より多くの選手に大会出場のチャンスを与えること」を目的のひとつとして設立された、トラックチームの制度。しかし出場条件の250ポイントを獲得していても、ネーションズカップに出場できるのは「トラックチームランキング」で上位5チームのみという条件もある。
トラックチームに所属して、より大きな大会に出場するには“多数の大会で着実に結果を重ねる必要がある”ということは、ナショナルチームの場合と変わりない。
※トラックチームランキングも国別ランキング同様、種目ごとにポイント集計・算出される。1種目につきエントリーできるトラックチームは5チームまでだが、ネーションズカップの合計出場チーム数がそれ以上であることは十分あり得る。
以上、本記事では大会出場に関する条件やランキングの算出方法の違いに着目し、「ナショナルチーム 」と「トラックチーム 」の違いをご紹介してきた。最後に、ナショナルチームとトラックチームの2つのチームと、UCIの認める各大会との関係性を以下の表にまとめてみた。
獲得UCIポイント が高い順 |
UCIの認める大会 | 出場可能なチーム形態 | ポイントを反映できるチーム | 出場条件・出場枠分配方法 |
1 | オリンピック | 各国オリンピック選手団 | 選手が所属する ナショナルチーム ・トラックチーム両方 |
IOCとUCIの規定による。 東京オリンピックの出場枠は、世界・大陸選手権、ワールドカップでの獲得UCIポイントを基準に各国に割り当てられた。 |
1 | 世界選手権 | ナショナルチームのみ | 選手が所属する ナショナルチーム ・トラックチーム両方 |
別途、大陸選手権の優勝者には大陸枠が与えられる。 |
2 | ネーションズカップ | ナショナルチーム 上位5位のトラックチーム |
エントリーしたチームのみ | UCIポイントを250ポイント以上保有する選手のみ。 |
3 | 大陸選手権 | ナショナルチームのみ | 選手が所属する ナショナルチーム ・トラックチーム両方 |
出場枠は各国連盟により平等に割り当てられる。 |
4 | クラス1 | ナショナルチーム トラックチーム |
選手が所属する ナショナルチーム ・トラックチーム両方 |
各大会による。 |
5 | クラス2 | ナショナルチーム トラックチーム その他のチーム(大学など) |
選手が所属する ナショナルチーム ・トラックチーム両方 |
各大会による。 |
5 | 国内選手権 | ナショナルチーム トラックチーム その他のチーム(大学など) |
選手が所属する ナショナルチーム ・トラックチーム両方 |
各国連盟による。 |
各大会を観戦する上で、以上の点で疑問を抱いた際はぜひ本記事でご確認いただきたい。
参照:UCI Regulations Part 3 TRACK CYCLING Chapter III, IV, VII