アメリカ自転車競技連盟(USA Cycling)は、速度ベーストレーニング技術の世界的リーダーである「GymAware」(ジムアウェア)と4年間のパートナーシップを締結したことを発表した。

USA Cycling and GymAware Launch Four-Year Partnership to Advance Track Sprint Program | USA Cycling

速度ベーストレーニングとは?

速度ベーストレーニング(Velocity-Based Training:VBT)とは、筋力トレーニング中のバーベルや身体の「動作速度」を指標にして強度を管理するトレーニング方法。
従来の筋力トレーニングでは、たとえば「何kgのバーベルを何回あげたか」など「重量」が大きな指標であったが、「どれだけ速く動作できているか」という観点で強度を管理する。

23年以上の歴史を持つ「GymAware」は、世界トップレベルの速度ベースソリューションを提供している。

Weekly JIK

あらゆるレベルのコーチやアスリートが筋力トレーニングを測定・追跡できるように設計された「GymAware RS」と「FLEX」は、よりスマートなトレーニングに導き、様々なスポーツで成果を最適化する高精度のパフォーマンスで、世界中のエリートチームやプロ選手、研究者からの信頼も厚い。

ちなみに速度ベーストレーニング技術を用いた製品は他のメーカーも展開しているが、GymAware製品は日本競輪選手養成所でもトレーニングに役立てられている

データ分析から米国スプリントチームを支える

Point Race / Women's Omnium / TISSOT UCI TRACK CYCLING WORLD CUP IV, Cambridge, New Zealand, Jennifer VALENTE ジェニファー・バレンテ

アメリカ自転車競技連盟との提携の一環として、GymAwareはカルフォルニア州・カーソンに拠点を置くトラックスプリントチームに、ウェイトトレーニング用のパフォーマンス測定機器を提供。これにより、選手とコーチは日々のトレーニングのリアルタイムデータと分析を得られるようになり、パフォーマンスアップに向けた個別プログラム作りに役立っている。

2019年より約3年半、日本トラック競技ナショナルチームの中長距離ヘッドコーチを務め、現在はUSAサイクリングのシニアトラックディレクターを務めるグレイク・グリフィンは下記のようにコメントしている。

「GymAwareとの提携は、USAサイクリングのトラックスプリントプログラムにとって大きな前進です。彼らの精密な測定ツールとパフォーマンス分析により、コーチと選手はトレーニングの改善、パワーの最適化、進捗の正確な把握に必要な洞察を得ることができます。この協力は、世界トップレベルの技術を活用して選手を育成し、国際舞台でスプリントプログラムを向上させるという我々の取り組みを示すものです」

クレイグ・グリフィン, JPN, Qualifying, Men's Team Pursuit, 2022 Track World Championships, Saint-Quentin-en-Yvelines, France

グレイク・グリフィン

またUSAサイクリングにおいて、ナショナルトラックスプリントプログラムのスポーツパフォーマンス&トレーニング責任者を務めるアントニオ・スクイランテは下記のように語っている。

「このレベルの競技において、妥協は許されません。他の速度ベーストレーニング製品も試しましたが、GymAwareの精度とコーチング経験は群を抜いています。この精度の価値はプログラム設計に留まらず、シーズン中のトレーニングに不可欠な“アスリートモニタリング戦略”にも直結しており、選手を大会に向けて最高の状態に仕上げることができます。GymAwareを選ぶことは簡単な決断でしたし、選手たちはまさに“ゴールドスタンダード”でトレーニングできるようになりました」

自転車競技を進化させるテクノロジー

今回の「USA Cycling × GymAware」の提携は、筋力トレーニングの領域でも“データ”が競技力向上の大きな鍵を握る時代に入ったことを象徴している。VBTのようなトレーニング管理技術に限らず、バイク開発や空力解析、センサー計測といったハイテクノロジーの進化は、世界中の選手たちのパフォーマンスを確実に押し上げている。

東レ・カーボンマジック×HPCJCはまだまだ進化していく 自転車トラック競技 新バイク開発秘話

自転車競技は、日々のトレーニングだけでなく、道具・データ・科学の総合力で伸び続けるスポーツだ。
今回の取り組みは、その進化を後押しする新たな潮流のひとつとして注目しておきたい。

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