3月14-16日にかけて開催された『ネーションズカップ』。世界各国から多数の選手が参加したが、これはトルコで開催される初のUCI国際トラックレースというエポックメイキングな側面も持った大会でもあった。
コンヤという都市にべロドロームが建設された経緯などを、トルコ自転車連盟のプロジェクトコーディネーターであり、今大会のイベントディレクターを務めたピナール・アルピナル・アヴサル氏に話を伺った。
コンヤは自転車競技の伝統が根付いた都市
Q:今回のネーションズカップ以前に、コンヤで行われた最初の国際大会はいつの大会だったのでしょうか?
コンヤで開催された最初の大規模な国際大会は、2021年の『イスラム諸国競技大会(Islamic Solidarity Games)』でした。その大会が開催されることを受けて、政府が施設整備に投資し、コンヤでのベロドローム建設が推進されました。

Q:なぜ、コンヤにべロドロームを建設することになったのでしょうか?
コンヤは自転車競技の伝統が根付いている都市です。地形が平坦で、多くの国内チャンピオンを輩出しており、ナショナルチームにも多くの選手を供給してきました。現在、市の支援を受けたUCIコンチネンタルチーム(KONYA TORKU SEKER SPOR)も拠点を置いています。
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さらに、コンヤには600km以上の自転車専用レーンが整備されており、自転車インフラへの取り組みが進んでいます。また、標高900mに位置するため、空気密度が低く、ベロドロームとしても世界屈指の高速トラックとなる可能性を秘めており、この街が選ばれました。
※実際に、ネーションズカップでは女子スプリントで世界新、男子スプリントでは公式記録とは成らなかったが世界新のタイムがマークされた

ネーションズカップは、すべてが初めての試み
Q:ネーションズカップのようなイベントを開催するにあたって、政府からの財政支援はあったのでしょうか?
トルコのスポーツ省は、国営宝くじ(National Lottery of Türkiye)を通じて、すべてのスポーツ連盟に資金を提供しています。また、コンヤの自治体もイベント開催に協力的で、スタッフの送迎サービスやケータリングを提供しています。そのほかにも、大手通信会社のトルコテレコム(Türk Telekom)がインターネットアクセスのサービススポンサーとして支援してくれました。

Q:今回の大会運営で最も大変だったことは?
今回のネーションズカップは、トルコで開催される初のUCIの国際トラックレースでした。じつは、国内のトラック選手権すら開催したことがない状態で、いきなり国際大会を開くことになったのです。そのため、トルコの審判団を国際レースへ派遣して経験を積ませるとともに、UCIのオンライン講習を受けさせたり、大会前には2日間の集中講習を実施したりしました。

また、計測装置をはじめとしたインフラ整備や、チーム用のストレージの準備、インターネット環境の構築……すべてが初めての試みであったため、多くの課題がありました。
一方で、出場チームから寄せられた、べロドロームや大会運営へのポジティブな評価が何よりも嬉しい成果でした。


トルコ自転車連盟と地元自治体の強い協力関係が大会の成功に大きく貢献し、その努力が形になったことを実感できたのは、大きな喜びです。
急速な進歩が期待されるトラック競技
Q:トルコにおける自転車競技人気について教えてください。
トルコで最も人気のある自転車競技はロードレースです。特に、「Presidential Cycling Tour of Turkiye」は長い歴史を持つステージレースで、2025年で60回目を迎えます。このレースのテレビ放映により、ロードバイクの販売が大幅に増加したこともあり、競技の普及に大きく貢献しています。
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そのほか、トルコ自転車連盟は年間15以上のUCI公認レースを主催していますが、ロードレースだけでなくマウンテンバイクのレースもあります。2025年6月20〜21日には、サカリヤにてMTB XCE(クロスカントリー・エリミネーター)の世界選手権を開催予定です。
現在成長中の分野といえるのはBMX。サカリヤには国際基準のBMXレーシングのコースが整備され、2023年にはUCIワールドカップも開催されました。
トラック競技はまだ発展途上ではありますが、ベロドロームの完成により急速な進歩が期待されています。実際、昨年のヨーロッパ選手権のジュニアカテゴリーでは、ラマザン・イルマズがスクラッチで2位を、ポイントレースで3位を獲得しました。
初の国内トラック選手権開催に向けて
Q:トルコ自転車連盟としては、今後のどのような目標を掲げているのでしょうか?
ジュニア世代を含むトラック競技の強化、国際大会の誘致と開催、そして若手育成キャンプの拡充です。
オリンピック基準のべロドロームを持った今、国際大会の誘致を本格化させる予定です。ハイレベルな大会を開催することで、若い選手がトップ選手の走りを間近で学べる環境を作るともに、トルコがレースやトレーニングの拠点として確立することを目指しています。
また、2025年内に初の国内トラック選手権を開催する予定です。これはトルコ自転車競技界にとって、重要な節目となるはずです。
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