2025年3月14日よりトルコ・コンヤにて開幕した『2025ネーションズカップ』。
大会2日目に行われた男子オムニアムには窪木一茂が出走し、ライバルたちを相手に熱戦を繰り広げて銅メダルを獲得。ベテラン選手の巧妙さが光ったレースの模様をレポートする。
男子オムニアム
スクラッチ、テンポレース、エリミネーション、ポイントレースの4種目で総合成績を競うオムニアム。
日本の窪木一茂(※橋本英也が参戦予定だったが、前日のチームパシュートでの怪我のため交代)ほか、昨年の世界選手権のこの種目銅メダリストであるヤネ・ドレンボス(オランダ)、前日のチームパシュートで銀メダルを手にしたアシュリン・バリー(アメリカ)ほか全38人が出場。
なお、今大会は予選として60周・15kmのポイントレースが実施され、24人が本戦へ駒を進める形式で、さらにタフさを問われる形となった。窪木は予選を問題なく通過し本選に出場を決めた。
スクラッチ~職人の位置取り~
40周10kmで争われたスクラッチ。一番速く40周を走破した選手の勝ちとなる。窪木は単体種目としてのスクラッチの現世界王者でもあり、得意な種目となる。
レースが大きく動いたのは残り10周を切ってからとなった。
開催国トルコのラマザン・イルマズが残り9周で逃げるとベルトルト・ドリーバー(ハンガリー)が逃げに加わり、2人の逃げ集団と追走する大集団の形となる。2人は観客から大声援を浴びて逃げ続けていく。
残り6周を切ったところで集団がスピードを上げ始める。そのスピードを見て、ドリーバーは早い段階で諦めてしまったものの、イルマズは逃げ続ける。
ドリーバーを飲み込んだ集団はさらに加速。逃げていたイルマズは、ラスト1周でとうとう集団に捕まることとなった。
そして最後は集団スプリント勝負へ。ここまで来て、もはや職人のような動きを見せたのは窪木。
残り2周ほどから集団の4~5番手に位置し、最終周回では持ち前のスプリント力を発揮して先頭争いを繰り広げていく。最後はリアム・ウォルシュ(オーストラリア)との競り合い、僅差の2着となった。
この種目の1位はリアム・ウォルシュ(オーストラリア)、2位に窪木、3位はヤネ・ドレンボス(オランダ)。
テンポレース~12人(全体の半数)のラップ合戦~
ラップ(集団を1周追い抜くこと)合戦となったテンポレース。窪木を含む合計12人が次々にアタックをしてはラップしていく、混沌としたレースとなった。窪木は22ポイントを獲得し、7位でこの種目を終えた。
エリミネーション
2周に1回、最後尾の選手が除外されていくサバイバルレース。窪木はスタートから集団の中ほどに位置を取り、レースを進めていく。
この種目で除外されないようにするには、なるべく内側、そして前方でレースを展開する必要があるが、窪木は「集団の中ほどで、危なくなったら外に出ていく」形で周回を重ねていく。
選手たちが次々に除外されていき、残ったのは5人。ここで窪木は内側に詰まる形となってしまう。
最後は外側に走路を見出し加速したが、前の選手の追い越しには至らず、僅差でレースから最後尾となる。窪木はこの種目の結果を5位とした。
ポイントレース~ラップ合戦、トップ争いは最後に決着~
最後は100周、25kmのポイントレース。ここまでの暫定順位は以下の通りとなった。
暫定順位 | 名前 | 所属 | ポイント |
1 | アシュリン・バリー | アメリカ | 110 |
2 | ヤネ・ドレンボス | オランダ | 104 |
3 | 窪木一茂 | 日本 | 98 |
4 | ノア・ヴァンデンブレンデン | ベルギー | 96 |
5 | ティム・ウェフラー | オーストリア | 86 |
序盤は大人しくしていた窪木。一方、暫定4位でスタートしたヴァンデンブレンデン(ベルギー)がポイントを重ね、窪木との順位が入れ替わる。窪木が追うべきトップ2が着実にポイントを加算するなかで、前半戦が過ぎていく。
ラップ、そしてラップ
大きくレースが動いたのは後半から。
ドレンボス(オランダ)がアタックして単独で抜け出すと、その動きを追ったのは窪木を含む追走集団。そして後ろにメイン集団となった。
ドレンボスがラップを成功させると、窪木、バリー(アメリカ)、ディオゴ・ナルシソ(ポルトガル)も直後にメイン集団に追いつき、それぞれが+20ポイントを加算する。
この動きで暫定3位に返り咲いた窪木。そこからさらにドレンボス、バリー、窪木の暫定トップ3は+20ポイントとなるラップを成功させる。
暫定トップ3の、残り10周を終えた時点でのポイント表は以下の通りだ。
暫定順位 | 名前 | 所属 | ポイント |
1 | アシュリン・バリー | アメリカ | 163 |
2 | ヤネ・ドレンボス | オランダ | 160 |
3 | 窪木一茂 | 日本 | 144 |
この段階で、(ポイント差により)窪木には金、銀メダルの可能性が無くなった。一方でバリーとドレンボスは3ポイント差で、どちらが優勝するかは最終周回の走り次第となる。
そして迎えた最終周回。窪木は最終周回でポイントを取っても順位は変わらないが、トップ争いをする2人と共に、最終スプリントでの勝負を繰り広げる。
最後まで火花散る様相のレースのなか、1着で駆け抜けたのはドレンボス。2着にバリー、3着が窪木。
最後は着順で得られるポイントが2倍になるため、ドレンボスが10ポイントを加算し170ポイント。バリーが6ポイント加算で合計169ポイント、窪木が4ポイントを加算し合計148ポイント。
最後にドレンボスが逆転を決めて優勝となり、2位にバリー、そして3位が窪木という結果となった。
なお、レース後にアメリカチームのテクニカルディレクター、そして元日本中長距離ヘッドコーチのクレイグ・グリフィン氏に話を聞いたところ、アシュリン・バリーは若干17歳の逸材。まだジュニアカテゴリー扱いの選手ではあるものの、今回はエリートに挑戦させてみたのだという。
エリート参戦の初の国際試合で、いきなり銀メダルを獲得。アメリカ期待のホープとのことで、今後も注目しておきたい。
順位 | 選手名 | 所属 | ポイント | |
1位 | ヤネ・ドレンボス | Yanne Dorenbos | オランダ | 170 |
2位 | アシュリン・バリー | Ashlin Barry | アメリカ | 169 |
3位 | 窪木一茂 | 日本 | 148 |