『2024世界選手権トラック』(デンマーク・バレラップ)における6つのメダル獲得の偉業を、過去の挑戦の歴史とともに追う連続企画の第6弾。
太田海也が大会最終日に銅メダルを獲得した、男子スプリントを掘り下げていく。

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プロ種目としての実施は1895年から

世界選手権において男子スプリントがプロ種目として実施されたのは、なんと1895年。
1895年とは、樋口一葉が『たけくらべ』を発表し、ドイツの医師であるレントゲンがX線を発見した年だそう。
恐ろしく古い歴史を誇る種目であることがわかる。

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なお、当時の種目名は「(プロ)スクラッチ」。1992年まではプロ種目として実施され、93年以降オープン化している。

日本人選手の挑戦として記録が残っているのは、1936年が最初。出宮順一、石塚隆春、村上二三九、困見辰夫の4選手が参加。
その次に日本選手が参加したのは1952年大会。日本初のオリンピック自転車競技選手としても知られる加藤忠ほか、田島正純、富岡喜平の3人が出場した。

前人未到の10連覇

初のメダルがもたらされたのは1975年。
阿部良二が得た銅メダルは、男子スプリントだけでなく、世界選手権における日本人選手初のメダルとなった。

1976年には菅田順和と中野浩一が挑戦し菅田順和が銅メダルを獲得すると、この年4位だった中野浩一が翌1977年に初の金メダルを獲得。
ちなみに決勝は菅田順和と中野浩一の対戦となった。

ここから、今なお語り継がれる前人未到の大記録、10連覇がスタートする。

「スプリントの皇帝」と呼ばれた男 中野浩一とは

中野浩一の「世界選手権・男子スプリント」への最後の出場となった1986年。本大会では、男子スプリントの表彰台を日本人選手が独占するという快挙も達成した。(優勝:中野浩一、2位:松枝義幸、3位:俵信之)

その後も日本人選手が猛威を奮うが……

中野浩一がスプリントに出場しなくなって以降も、日本人選手によるメダルの獲得は続く。

1987年には、前年の2・3位だった俵信之と松井英幸が金・銀メダルを獲得。
1988年には俵信之が銅メダルに手にすると、1989年には神山雄一郎が銀、松井英幸が銅メダルに輝き、じつに15年連続でメダルを得ることとなった。

1989年。そして今回の太田海也のメダルは35年ぶり。

そう、連続でのメダル獲得が途切れて以降、今回の太田海也まで、メダル獲得はならなかったのだ。

2022年、世界の舞台に登場した新星

1990年以降、滝澤正光(1991年)、吉岡稔真(94年)、本田晴美(96年)、永井清史(2002-07, 08年)、北津留翼(2006-08年)、新田祐大(2010-12, 20年)、中川誠一郎(2012-16年)、脇本雄太(2018-19年)ほか、名だたる名選手たちがこの種目に挑戦し続けてきた。
しかし、他国の競技力アップもあり、90年の松井英幸(4位)を最後にメダル決定戦への出場も叶わない時期が続く。

そんななか登場したのが、ボート競技から転向し、2021年12月に日本競輪選手養成所を早期卒業した太田海也。

太田海也, OTA Kaiya, JPN, 1/8 Finals, Men's Sprint, 2022 Track World Championships, Saint-Quentin-en-Yvelines, France

2022年のアジア選手権で国際大会デビューを果たした太田海也は、その年の世界選手権・男子スプリントに出場。
予選の200mFTT(助走ありのタイムトライアル)で自己ベストの「9秒531」というタイムを出し、6位で予選通過すると、最終10位という成績を残す。

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そして2023年大会では、準々決勝でマテウス・ルディクに敗れるも6位という結果に。
着々と、階段を駆け上がっていく。

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2024年に入ると、『ネーションズカップ第1・2戦』で連続金メダルを獲得。
世界で戦う準備を完了させ臨んだパリオリンピックでは判定にも泣く形となり、悔しい想いを胸に挑んだ世界選手権。

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予選を5位(9秒585)で通過すると、1回戦〜準々決勝を盤石の形で勝ち上がり、準決勝に進出。
“世界最強のスプリンター”たるオランダのハリー・ラブレイセンには敗れたが、3位決定戦へ向かう。

相手は、直前のオリンピックで敗戦を喫したニコラス・ポール(トリニダード・トバゴ)。

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しかし、日本が誇るスピードスターはストレートで難敵を下し、見事銅メダルを獲得。
35年ぶりのメダル獲得という快挙を成し遂げた。

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太田海也が生み出す新たな物語は続く

レース後のインタビューにて、太田海也は35年ぶりと聞き「びっくりした」と語っていた。
中野浩一による10連覇など、日本が過去に圧倒的な強さを示してきた本種目だけに、同じく驚いた方もいるだろう。

しかし、1989年以降の35年間には、多くの選手が挑み、成し得なかった苦難の歴史があったのだ。

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(左から)ジェフリー・ホーフラント、ハリー・ラブレイセン、太田海也

確実に新たな時代をもたらした太田海也。前述のインタビューでは、「オレンジのジャージ(=オランダ)の間に立つことが目標」、すなわち絶対王者を下し世界チャンピオンを目指す意志を語った。

さらなる偉業の達成を、楽しみに待ちたい。

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参照:
2023年版 競輪年間記録集(PDF)
Tissot Timing | World Championships Result
UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS – PALMARES – ELITE
Keirin.jp > 大会レポート
Keirin.jp > 競技結果

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