現ナショナルチーム最年長、ベテランの窪木一茂が3年連続となる世界選手権スクラッチ種目のメダルを獲得。
銀、銀と獲得してきたメダルは時を経て、努力の末に黄金に輝くメダルへと変貌を遂げた。
10月16日よりデンマーク・バレラップにて開幕した『2024世界選手権トラック』。
大会2日目には男子スクラッチが実施された。
男子スクラッチ、日本史上初となる金メダルを獲得した窪木一茂のレ―スをレポートする。
男子スクラッチ
男子は60周・15kmで競われ、最初にゴールラインに到達した選手が勝利ととなるスクラッチ種目に出場したのは全24人。世界選手権で2022、23年と2年連続銀メダルを獲得している窪木一茂、2022年王者のディラン・ビビック(カナダ)、エリア・ビビアーニ(イタリア)らがエントリーした。
アタック、アタック、アタック合戦
アタック合戦が続くタフな戦いとなったこのレース。展開に大きな動きが出たのは残り35周ほどのところ。集団からアタックして飛び出したのはヴィンセント・ホペザック(オランダ)とコルビー・ランゲ(アメリカ)。2人はローテーションを繰り返し、協力しながらメイン集団を追い抜くべく加速していく。
先頭の逃げ集団がメイン集団に迫る中、残り25周でメイン集団から飛び出したのは窪木。するどい加速と驚異的なトップスピードを発揮し、一気に前の逃げ集団を追っていく。
残り24周。逃げていたホッペザクとレンジがメイン集団に追いつくと、全体が-1ラップ認定される。
この時点でレース全体の先頭扱いとなったのは窪木。そのまま単独で2周を経過しながらメイン集団との距離を詰めて追いつくことに成功した。窪木が満員の観衆の目を引く間に他の選手たちもアタックを決めており、窪木のラップ認定後にイギリス、ポーランド、ドイツ、オーストラリアなど強豪国の選手がラップを成功させ、場内は大盛り上がりの様子を見せる。
要所要所で動いた窪木
残り14周。レースの終盤で大きな動きを見せたのは開催国のトビアス・ハンセン(デンマーク)。やっと一息ついたというところで、単独でメイン集団からアタックを決めて抜け出していく。そしてこのアタックにやや遅れて反応を見せたのは日本の窪木だった。ハンセンがメイン集団に追いつきラップを成功させると、遅れて追走していた窪木がレースの先頭となる。
後ろからイギリス、ドイツの選手が窪木に追いついて、一旦は3人の逃げ集団を形成するが、残り10周を切って周回遅れの選手たちとの合流のタイミングでペースが緩む瞬間が発生した。この一瞬の隙をついて前に出たのはアレックス・フォーゲル(スイス)。一気に前に出ると優勝に向けて先行逃げ切りを目指して踏み込んでいく。反応が遅れたようにも見えたが、フォーゲルを窪木が単独で追走していく。
単独での逃げ そして歴史を刻む
残りは5周。フォーゲルはこの時点でラップをしてない選手だったため、窪木が逃げ切った場合は日本史上初の優勝という中で、前にいたフォーゲルがメイン集団に追いつき、先頭は窪木となった。
残り3周で単独の逃げとなり、メイン集団を半周ほど突き放して窪木が栄光のアルカンシェルに向けてペダルを踏んでいく。
残り2周、最終周回とメイン集団から飛び出してくる選手たちが窪木を追い上げる中、窪木が最終コーナーに入ると後続との距離は1/4周ほど。後続からの追い上げを振り切った窪木がフィニッシュラインを1着で通過し、自身初、そして日本史上初となる男子スクラッチの世界チャンピオンの座に輝いた。
2位には最後に追い上げを見せた開催国のトビアス・ハンセン(デンマーク)、3位にクリモン・プティ(フランス)という結果となった。
選手名 | チーム | ||
1位 | 窪木一茂 | 日本 | |
2位 | トビアス・ハンセン | HANSEN Tobias Aagaard | デンマーク |
3位 | クリモン・プティ | PETIT Clement | フランス |