3人の「お母さん選手」が選出
オリンピック約1ヶ月前に発表されたイギリス自転車チーム選手団。自転車競技全5種目で計30選手(リザーブ含まず)がユニオンジャックを背負い、パリでメダル獲得を目指す。
今回のイギリスチームの特筆すべき点は、出産を経て選手を継続している「お母さん選手」が3人も選ばれていることだ。うち2人はトラック代表選手。
3人の選出については代表選手団発表リリース内でも、イギリス自転車競技連盟のステファン・パーク氏(パフォーマンスディレクター)によるコメントでも強調されている。
ステファン・パーク氏 コメント
「我々イギリスチームは何年もの間、ジェンダー公正(Gender Parity)という分野に取り組んできました。
今回の代表選手団に3人の母親である選手が選出されたことを、そして彼女らをサポートする我々のスタッフ陣を大変誇りに思います。彼女たちは、トップレベルのプロスポーツにおける女子選手の道を切り開く存在です」
「女子選手の道を切り開く」イギリス自転車選手
母親でありながら『パリ2024オリンピック』への切符を掴み取ったイギリス自転車選手は以下の3人。
選手名(オリンピック出場歴) | 誕生年 | 出場予定種目 | 主なオリンピック成績 |
エリザベス・ダイグナン (ロンドン2012年大会から4度目) |
1988年 | ロードレース | ロードレース5位(2016) ロードレース2位(2012) |
ケイティー・マーシャン (リオ2016年大会から3度目) |
1993年 | トラック短距離 | トラック・スプリント6位(2020) トラック・スプリント3位(2016) |
エリナー・バーカー (リオ2016年大会から3度目) |
1994年 | トラック中長距離 | トラック・マディソン優勝(2020) トラック・チームパシュート2位(2020) トラック・チームパシュート優勝(2016) |
エリザベス・ダイグナン
女子ロード選手で2児の母。トラック競技のチームパシュートで自身初のアルカンシェル(2009年)を獲得し、その後ロードへ転向。『ロンドン2012オリンピック』では個人ロードレースで銀メダルを獲得し、2015年の世界選手権では同種目で優勝している。
第1子を出産した翌年の2019年から現役復帰を果たし、2021年の『パリ〜ルーベ ファム』第1回大会では初代女王に輝いた。
2022年に第2子の妊娠を発表すると、当時ダイグナンと選手契約を結んでいたUCIウィメンズワールドチームの「Trek-Segafredo(現LIDL-TREK)」は、2024年までの延長契約を締結。
延長契約の際、「30代の妊娠とともに競技から引退しなければならない、というステレオタイプはもう私のなかにはありません」とダイグナンはコメントを残し、同年秋に無事出産。翌年5月よりまたも現役復帰を果たし、第一線で活躍し続け、自身4度目のオリンピックに出場する。
ケイティー・マーシャン、エリナー・バーカー
ケイティー・マーシャン(短距離)とエリナー・バーカー(中長距離)はともにパリで3度目のオリンピックを迎えるトラック選手。
東京2020オリンピックの選手村でルームメイトだった2人は奇しくも同時期に第1子を出産している。その後もお互いの家族をサポートし合い、それぞれ現役復帰を果たし第一線で活躍。
2023年5月のインタビューで2人は、エリザベス・ダイグナンやオリンピックで「3大会連続金メダル」の偉業を成し遂げたローラ・ケニー(トラック中長距離)らの名前を挙げ、「出産を経験してもトップレベルでまた活躍している選手を見て、自分にもできると思った」などと語っている。
『パリ2024オリンピック』は、男女平等の総出場選手数のもと開催される史上初のオリンピック。女子自転車選手の道を切り開く選手たちの活躍にもご注目いただきたい。