日本人向けの“夢”の1台
東京2020オリンピックを日本代表として戦った脇本雄太選手。脇本選手は最高の機材についての印象を語る。
「日本人向けのフレームを作ってくれた、今までより個人に合ったフレームを作ってもらったと思っています。
今のUCIの自転車に対する規定は外国人向けですから、日本人に合っていない部分もあります。そのことも踏まえつつブリヂストンさんにフレームを開発していただいて、ギリギリで規定をクリアできるフレーム……縦は大きくないけど、奥にものすごく伸びたフレームが出来上がりました。とても、とても特殊だと思います」
自転車競技のメッカは欧州。本場の人たちが作るルール、規定は日本人に合わないこともしばしばある。
そういった面でも日本人にとって不利になることがあるのが自転車競技だが、できる限りその不利な面も現状のルール内で改善することが出来た。
機材の強化はブリヂストンとHPCJC全体で取り組む。こうして史上初と言っても良い、日本の大会で日本人による日本人のための自転車が生まれた。
作り手の完成品に対しての評価は100 %。では開発に携わったジェイソンコーチはどう考えているのか。
「ブリヂストンのような大きな企業であれば不可能は無いと思っていました。本当に様々なサポートを受けて、とてもたくさんのエネルギー、時間、そして資金をつぎ込んでくれました。
正直に言えば、こういったことを行うことは不安でもありました。一寸先は闇というか、実際に物ができたとしても結果が付いてくるかは分からないですし、不明瞭なことが多いからです。
最初のプロトタイプの時点(2018年)で既に良い製品ができていましたが、嬉しかったことは誰もそこで歩みを止めなかったこと。更に先に進むことができました。この開発のプロセスに携われたことは本当に名誉なことです。
ブリヂストンがやり遂げてくれたことには感謝しています。関わったみんなの努力が報われたバイクになっていると思います」
日本人のために日本人が作った夢の自転車。それこそが東京2020オリンピックで日本人選手が活躍した大きな要因のひとつとなった。そしてこの開発の技術や知見は、ブリヂストンのバイクに乗る一般の人たちの自転車に活用され始めている。
競技で最先端を行き、その技術を基に一般のレベルの自転車にまで活用していく。この黄金サイクルがいつまでも続くことが、日本自転車競技が発展していく鍵なのかもしれない。
第3弾はHPCJC×Kabuto。自転車競技に欠かせないヘルメットの開発の裏側に迫ります。