優勝候補不在のカオス

逃げ切り勝利が多いのは、今年のブエルタならではの理由も存在する。それは今大会において、明確な総合優勝候補が存在していないためだ。 ツール・ド・フランスで総合表彰台に上がったゲラント・トーマス(イギリス/チーム スカイ)、トム・デュムラン(オランダ/チーム サンウェブ)、クリス・フルーム(イギリス/チーム スカイ)を欠く中、最も飛び抜けた実力を持つと思われていたリッチー・ポート(オーストラリア/BMCレーシングチーム)、ビンツェンツォ・ニバリ(イタリア/バーレーン・メリダ)の2名は、レース序盤で早々にタイムを失い、総合優勝争いからは脱落してしまった。

残った優勝候補は、まだ若く実績の少ないミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア/アスタナ プロチーム)やサイモン・イェーツ(イギリス/ミッチェルトン・スコット)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ/チーム サンウェブ)など。 過去総合優勝しているナイロ・キンタナ(コロンビア/モビスター チーム)やファビオ・アル(イタリア/UAEチーム・エミレーツ)などの実力者も残ってはいるが、いずれもここ最近の調子は良くなく、今大会の総合優勝候補最右翼とはとても言えない状態であった。

そんな、優勝候補不在とも言うべき混沌とした状況が、大きな逃げを許す最大の要因となった。例えば、超級山岳の山頂フィニッシュとなった第9ステージは、通常のグランツールであれば総合優勝候補たちによる激しいバトルの舞台となり、逃げ切りなど許される状況ではないはずだった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第9ステージコースマップ

第9ステージレイアウト
引用:ブエルタ・ア・エスパーニャ公式サイト

しかし、メイン集団では突出した選手による攻撃は起きず、各優勝候補たちの間での均衡状態が続いていた。その結果、20kmに及ぶ独走の末に、ベンジャミン・キングが逃げ切り勝利を果たした。

着実にタイムを稼ぐ選手も