抜きん出た南関東ライン
川崎競輪場にて2月20日~23日の日程で行われた2021年GⅠレース初戦の第36回読売新聞社杯全日本選抜競輪。
4日間ともに晴天に恵まれたものの、風を含めたバンクコンディションは日ごと時間ごとに変わり続け、時には突風と言えるほどの向かい風が選手たちを苦しめた。
そんな定まらないコンディションの中、各地区ラインの力を借りつつ自身の力を発揮し、決勝に残った9人の選手たち。その内6人がS級S班で、既に実績を持つ選手たちばかりだった。
地元南関東から、南関移籍後初のGⅠで連日の圧倒的な先行を見せる深谷知広、川崎をホームバンクとし、この川崎での全日本選抜に狙いを定めてきた郡司浩平、そして2020グランプリ王者の和田健太郎。
中国地区からは、不調の波から脱して強さを取り戻してきた清水裕友、連戦が立て続きながらも抜群の安定感を見せる松浦悠士、さらに、松浦・清水のゴールデンコンビの2人への追走に集中したいと前日に話していた園田匠。
関東からは、年始の立川、大宮と優勝を飾っている平原康多、平原との連携実績も多い諸橋愛。
北日本からは、準決勝で郡司を抑えて1着で決勝に乗った守澤太志。
決勝の前の11レース、前日までのレースで南関東ラインの勝ち上がりに貢献してきた松井宏佑がラインでのワンツー勝利を飾る。「自分の中でもかなり良い内容のレースだったので、(次のレースを走る)郡司さんにも南関ラインの熱い気持ちを受けとってもらえたと思います」と話している途中、本人の中で堪え切れずに吹き出した。
「自分で言って恥ずかしくなっちゃいました(笑)。でも、熱い走りしてくれると思います」
松井はそう言って決勝戦の先輩たちにバトンを渡した。
実際に郡司が前のレースを見ていたかは定かではないが、決勝はまさに南関東ラインの独壇場となった。間違いなくこのレースの鍵を握ったのは、南関東の先行を任された深谷だった。
ここまでの3日間で既に南関東ラインでの連携を確認しつつ、圧倒的な存在感を示してきた深谷の動きに全員が警戒を強めた。
3日目のレースで深谷と連携した和田でさえも、「本当に今までついたことがない感じのタイプですね。南関の自力選手たくさんついてきたんですけど、ちょっと違う感じでした」と話していた。
深谷自身も、「(南関に入って)自分でも気づかない刺激を得られていると思うので、すごく良い方向に出ていると思います」と話し、「ラインの3人とも納得できる、良いレースができればと思います」と決勝に向けて意欲を語っていた。