3. 流し撮りの練習に最適
ベロドロームの中は暗い。照明はあくまで競技者と観戦者のためにあるのであり、撮影者のことは考えられていない。伊豆ベロドロームで言えば、照明は真上からコース上をまだらに照らし、日照時間中であれば採光部から光は入るものの天候次第。加えてバンクの板自体が光を吸収するのか、選手の顔側は必ず暗くなる。シャッタースピード速めで写し止めるなら、明るいレンズを使うか、ISO感度はバキバキに上げる必要がある。
しかしこの暗さを逆手に取ると、NDフィルター無しでも流し撮り余裕。シャッタースピード1/30、F5.6あたりでもISO400あたりで撮れてしまうのだ。バンク自体も幅が狭いため、選手が走るラインも望遠で撮影する限り、F9.0まで絞っておけばピントを大きく外す心配もない。
4. 写し止めても面白い
短距離種目は生身の人間が人力で時速70kmにも到達する高速バトル。それ故、選手の表情であったり、筋肉の動きを写し止めるのも非常に面白い。スーパーサイヤ人への変身シーンかの如く筋肉が浮き立つ瞬間、限界を超えるパワーを生み出した瞬間の鬼気迫る表情、マディソンの交代する瞬間など、速いシャッタースピードでバシっと写し止められたら快感である。
5. 近い近い近い
選手の顔や身体へ大きく寄った写真を撮るなら、超望遠レンズが必要になるものの、24-70mmの様な標準ズームレンズでも十分に撮影を楽しめる。ベロドロームは観客席とバンクがとても近いので、広角で背景を多めに入れた流し撮りもまた楽しみの一つ。マディソンやオムニアムといった中距離のレース系種目なら、スタートは本当に目と鼻の先に選手がやって来る。ぐぐっと、スタート前の緊張感溢れる表情を捉えることができる。
まとめ:競技はわからないけど、撮影は好きという裾野
自転車競技、特にトラック競技はファン人口も少なく、超マイナースポーツであるものの、純粋に観戦するだけでも面白い。そして写真という角度から見ても、多くのファンを獲得するポテンシャルがあるスポーツである様に思える。
自分自身「飛行機でも撮ってみるか」と、なんとなく羽田空港で飛行機を撮ってみたりするが、機体の名前なんかほぼ知らない。しかし撮っていて楽しいし、イメージを上回る写真が撮れた時には楽しいものだ。
「トラック競技のルールや選手は全く知らないけど、撮影するのは好きです」という様な人が出てくる程、ファン人口の母数が増えてくれればな、と思う次第である。
Text : Shutaro Mochizuki