先輩・村上義弘とKEIRINグランプリ2021
Q:先日村上義弘さんが引退されましたが、古性選手は事前に話を聞いていたんでしょうか?
聞いていませんでした。皆さんと同じタイミングで知りました。でも薄々感じる部分はあったので「その時が来てしまったか」という感じでした。めっちゃ好きな先輩です。
Q:グランプリでの古性選手のレース展開が、過去の村上さんのものと似ているという話もありました。
村上さんのレースはテレビで見て、衝撃的でした。まさか自分が同じ舞台に出て、同じ車番を着て同じような展開になるとは思わなかったです。
(去年は)まさか優勝できるとは思っていませんでした。行って宿口(陽一)さんの横で止まるか、行けても平原(康多)さんに抜かれるか……良くても3着くらいかなと思っていて、まさか村上さんと同じ展開で同じ結果を出せて、嬉しかったですね。
※村上義弘さんは2012年のグランプリで4番を着て優勝。展開も21年の古性選手と同じような形だった
Q:フィニッシュラインを駆け抜けた感覚は「いつもの感じ」だったのか「違う感じ」だったのか、どうだったんでしょう?
普段は聞こえないんですけど、4コーナーからお客さんの声が聞こえていました。本当になんというか……(フィニッシュラインまでが)長かったですね。「まだかな、まだかな」と思いながら踏んでいました。脇から見て後ろが開いてるのがわかってたので、すごい勢いで来られるかもとも思っていました。
後ろにいないのはわかってたけど、「なんで誰も居れへんの?」と思っていましたね。郡司(浩平)が後ろだったのはわかってましたし、平原さんが最後にスイッチしてくるのはイメージしていたので、なんでいないのかわかんないから余計に怖かったです。フィニッシュした時は「まじかよ」って感じでした。
Q:その「長い」の感覚は一般人にはなかなか味わえないものですね。
時間がゆっくり流れる、みたいな感覚でしたね。つまずいてコケる時にゆっくりに感じることがあると思いますけど、それと似ています。おそらく脳がめっちゃ興奮してるんだと思います。脳がグワーっとなって、すごくゆっくりに感じていた。
Q:そういう感覚って、それ以降のレースでも経験しましたか?
高松宮記念杯もちょっと長かったですね。グランプリほどではなかったですけど、捲っていって、後ろにいるのはわかっていたので「あとはどれだけ自分が我慢できるか」というところで。「早くホーム線来い」と思っていました。
Q:ではグランプリの4コーナーからフィニッシュ駆け抜けるまでは、一生忘れられない記憶ですね。
そうですね。フィニッシュをスローで流す映像とかありますけど、まさにそういう感じでした。抜け出していたから余計ゆっくりに感じていたのかもしれません。競り合っていたらそっちに気を取られて、そこまで感じなかったかも。「このまま行けたら優勝やねんけど、すごい勢いで来られそう」っていう怖さもあったかもしれません。
Q:フィニッシュ後のガッツポーズがめちゃめちゃかっこよく決まってましたね。
喜びが爆発してましたね。ほとんど無意識でした。まさか優勝できるとは思っていないから、あんなんしようとも思ってなかったんです(笑)もう……出てしまいましたね。「やったぞ!」って感じでした。
Q:じゃあそれをもう1回味わいたいですよね。
そうですね。頑張りたいです。
村上さんが「あの感動を味わったら、もう1度味わいたくなる」と言っていた、その感動を味わうことができました。また、とは思いますね。
Q:しかも単騎でしたし。
展開が向いたのもあるんですよね、しっかり外を踏んで……良いレースができたかなとは思います。
Q:今年は、同地区の脇本雄太選手もいるということで心強さはありますか?
去年は本当に心細かったですね。初出場で雰囲気もわからないですし、1人だったし、寂しいな……って(笑)
でも村上さんを彷彿とさせる4番車を着てたから、「その時の村上さん」と一緒に戦ってるような……そんな気持ちがありました。あの時の青(4番車)を着た村上さんのイメージがめっちゃ頭に残っていたので。走る前にも「村上さんもこうやって1人やったんやな、それを乗り越えて獲りに行ったんやな」と考えていました。