天性のスピード

ロードレースにおいては主にアシストを担っているため目立つことは少ないが、ジロ・デ・イタリア2016での劇的なステージ優勝は誰しもが一度は目にしたことがあるのではないだろうか。まずはこちらの動画を見て頂きたい。

ラスト1kmで逃げ集団の大半を吸収し最後はゴールスプリントで決すると思われた矢先、集団からスルスルっと抜け出しを試みる1名の選手。彼こそがロジャー・クルーゲ(当時IAM Cycling所属)である。(1:48から)

純粋な平坦ステージであるのにも関わらず並み居る強豪スプリンター達を振り切り、自滅行為としか思えないロングスパートを成功させた。クルーゲはジュニア時代の短距離選手としての経験がロードレースにおけるスプリント時のレース勘やタイミング、位置取りに役立っていると話しており、このスパートも偶然の産物では無かったはずだ。

ピュアスプリンターとはまた異なる高速巡航に特化した脚と、短距離選手時代に培ったセンスが彼の大きな武器と言えよう。

縁の下の力持ち

こちらは丁度今年の世界選手権前日まで参加していたUAEツアーでのヒトコマ。エーススプリンターを担うカレブ・ユアンと共にミッチェルトン・スコットからロット・ソウダルへと移籍したクルーゲは、この日もアシストとしてユアンのリードアウトを担当していた。

惜しくもこのレースではロットのトレインは不発に終わってしまったが、マディソン世界チャンプが普段どのようにしてチームの為に働いているのかが伝わるだろう。

チーム遍歴

2005年、高校を卒業した後に消防士としての訓練を受けながら、ドイツのアマチュアチームであるLKTチームブランデンブルグにて活動開始。2008年に同チームがコンチネンタル登録をしたことに伴いプロデビュー。

そこでの活躍が認められ、2010年からドイツ籍のミルラム(Milram)よりワールドツアーチームに初所属。2011-2012に所属したシマノでは日本の土井雪広ともチームメイトであった。

チーム名 カテゴリー
2008 LKTチームブランデンブルグ コンチネンタル
2009 LKTチームブランデンブルグ コンチネンタル
2010 チームミルラム ワールドツアー
2011 スキル・シマノ プロコンチネンタル
2012 アルゴス・シマノ プロコンチネンタル
2013 チームネットアップ・エンデューラ プロコンチネンタル
2014 IAMサイクリング プロコンチネンタル
2015 IAMサイクリング ワールドツアー
2016 IAMサイクリング ワールドツアー
2017 オリカ・スコット ワールドツアー
2018 ミッチェルトン・スコット ワールドツアー
2019 ロット・ソウダル ワールドツアー

トラック競技で数々の輝かしいリザルトを残している(次頁参照)クルーゲだが、ロードレースのプロとしても10年以上第一線で活躍し続けている。

2019年からはベルギー籍のワールドツアーチームであるロット・ソウダルに所属。ベルギーチームの一員としてクラシックを走れるのが嬉しいとのこと。これからのクラシックシーズンでも彼の活躍に注目したい。

Roger Kluge

Photo by Tim de Waele / Getty Images

今までの栄光と彼が求めるモノ