2024年5月12日、HPCJCと東レ・カーボンマジックは新たな自転車、V-IZUブランドとして開発したTCM-1とTCM-2の共同記者会見を実施した。
特にTCM-2はこれまでの自転車の形とは異なり、フロント部分に異様な形を作って空力性能を最適化した形になっている。
この自転車はどんな自転車なのか、開発に関わった東レ・カーボンマジック開発部グループリーダー・中村隆志さんに詳細を聞く。
コンセプトは人とバイクの融合
「実は車両単体で見ると空気抵抗が大きいのですが、人が乗ることで空力性能が最適化される。そういうコンセプトのバイクになっています。これまで2台作ってきたのですが、今回開発した自転車は人を含めての『空力最適化』を目指したものです。
結局本質は”乗る人と自転車の融合”だったのだと思います。各社フォーク幅を広くする動きがありますが、それだけでは限界があります。最初に出来上がった時はこれで大丈夫なのか?と怖かったこともありました。人間って不確定要素が多いですし……体型も違うし、脚も回す。そこを要素として入れすぎるのはどうなんだろう?という不安はありました。
でもこの自転車は人が乗車して初めて完成します。開発の終盤では、車両単体での数値も取りましたが、それはあまり気にしないようになっていました」
特徴はゴツいフォーク!
車両だけで考えるのでなく、人を含めて完成させていく。当たり前のように聞こえるが、なかなか考え付かないような点でもある。どうやって効果を出すのか、まずは特徴的なフロントフォークについて聞く。
「前部分、フォークをゴツくしていることにはもちろん意図があります。自転車に乗ると空気はフォーク付近を通って膝に当たりますが、フォークと膝の間の空間の空気をわざと乱すことで全体の空力性能を良くしています。綺麗な状態の風が脚に当たると、人間の脚は丸いですから、空気抵抗がとても悪いんです。
ゴツいフォークとその特異な断面形状によって故意に空気を乱すことで、空気抵抗を大きく削減することができます。イメージで言うと、人間に当たる前に空気の渦、溜まりを作って、そこを避けるように風を流す感じですね。詳細については共同開発したムーンクラフトさんが詳しいです。空力のデザインはムーンクラフトさんが行っていました」