2024年5月12日、2024ジャパントラックカップの最終日。大会の昼休みにベロドロームのインフィールドにて、一般の来場者が見守る中「世界最速を目指す新トラックバイク」が正式にお披露目された。

東レ・カーボンマジック株式会社と東レ株式会社

自転車トラック競技日本ナショナルチームを支える「HPCJC」とともに、世界最速トラックバイクの研究開発を進めてきた「東レ・カーボンマジック株式会社(TCM)」と「東レ株式会社」。TCMは炭素繊維複合材を用いたプロダクト開発を行う会社、東レは炭素繊維世界シェアNo.1の会社である。

TCMのレーシングカー開発によって培ってきた技術、東レの最先端カーボンファイバー技術を駆使して作られた新バイクには、空力や構造面において様々なアイデアや新機軸が織り込まれた。

以下、記者発表登壇者のコメントより概要をご紹介する。

東レ・カーボンマジック株式会社 代表取締役社長 奥明栄

「東レ・カーボンマジック」は長年レーシングカーを開発してきた会社です。昨今では「ネクストモビリティ」と称しまして、ハイエンドのスポーツカー、空飛ぶ車、宇宙開発、そしてe-モビリティとして環境に配慮した技術の開発も行なっています。今回の自転車開発にはこのe-モビリティの技術も一部盛り込まれています。

2年前に開発がスタート。まずプロトタイプであるTCM-1を開発し、並行して風洞試験をするための設備開発も1年目に行いました。TCM-1で課題や方向性が見えてきましたので、それをベースとしてより突っ込んだ開発と様々なテストを行い、TCM-2が完成しました。

TCM-2の特徴は正面から見たフォルムに凝縮されています。幅の広いフロントフォークとギヤフレームが本バイクの肝。

加えてフレームの素材には東レの持つ最先端の炭素繊維を適用し、フレームと前後のホイールを最適化しています。

JCF 選手強化スーパーバイザー トラック部会長 中野浩一

選手はすでにこのバイクを使っていて、今大会でも何人かの選手が使用しています。サイズが個々人にフィットしていない部分がありますので、その関係で使用していない選手もおりますが、今後全員が使えるようになる予定です。

このバイクの選手たちの感想としては「スピードに乗ったらなかなか落ちない」ということがまず挙げられます。惰性に乗ってスピードが乗る、乗っている本人が思っている以上にスピードが出ている。

逆に遅いスピードだと重く感じるようですが、レベルの高い大会で使用すれば性能が発揮できるバイクだと思われます。ほとんどの選手が同じことを言っているので、期待できるんじゃないでしょうか。

HPCJCテクニカルディレクター ブノワ・べトゥ

この開発で、すごく痩せました(笑)

素晴らしいバイクができたと思います。こういったハイテクノロジーの開発に携われるというのはキャリアの中でもとても珍しく貴重なことで、感謝しています。

プロトタイプであるTCM-1はとても早い段階で出来上がりました。TCM-2ができるまではもう少しかかりましたが、とても独特な自転車を開発していただきました。東レさまの素晴らしい努力があったからこそです。他国を真似して作ったのではなく、独自の開発による自転車です。

TCM-2に最初に乗った時、とても驚きました。人生初めてと言って良いようなスピード感、そして安定感を得られる自転車です。私は理想を高く持つ厳しい人間ですが、そんな人間も素直に感動しました。選手たちが素晴らしい自転車を使えることに、東レさまに感謝申し上げます。

More CADENCEで開発秘話を公開予定

More CADENCEではこのバイクの開発についてインタビューを実施している。この形状はどのような意味を持つのか?開発にはどれくらいのお金がかかったのか……?

近日公開予定、お楽しみに。

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