遊び道具、相棒だった自転車

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全日本選手権、あの時何が起きていた?

2020全日本選手権トラック

Q:全日本選手権トラック2020の時、緊張はしましたか?

チームスプリントが一番緊張しました。

Q:チームスプリントでは中野選手の後輪にトラブルが起きてしまい、全日本タイトルを獲得することが出来なかったわけですが、その時の心境は?

最初はトラブルに気付きませんでした。「ドン!バン!」という異音には気がついたんですが、自転車は進んでいたので「今の音はなんだろう?新田さんか深谷さんだろうか?」と思いました。それで2人の様子を見たら、2人は普通に走っていたわけです。「じゃあ誰?俺???」って状態でした。でも確信が持てないまましばらく進んで、もう一度変な音がして「俺だ!」ってなりました。

2020全日本選手権トラック

そこからはもう・・・パニックですね。前はどんどん進んでしまって自分は置いてきぼりになっているし、「どうしよう」で頭がいっぱいになってしまい、やっと手を上げた時には半周が過ぎてしまっていました。焦りすぎて、手を挙げることに思い至るまで時間がかかってしまい、DNF(途中棄権)の結果になってしまいました。

※編集部注:ルール上、スタートから半周までにトラブルがあった場合は審判にアピールすることで再走が可能となる※

男子大波乱の結果&女子初3人制チャンピオン誕生・男女チームスプリント/2020全日本自転車競技選手権大会 トラック

Q:とはいえ、世界で走るメンバーとチームを組んで走ったことで得るものもあったのでは?

はい。チームスプリントに向けての深谷さんや新田さん、長迫(吉拓)さんの動きを見ていましたが、体を冷やさないように頻繁にローラー台に乗ったり、競技スタート時間から逆算して「この時間までに最後のもがきを終える」のような、細かい準備をしていたりしました。自分も少しは行っていたのですが、そこまで細かくは考えていなくて・・・「これが世界で走る選手の、大会当日の準備なのか」と思いました。

2020全日本選手権トラック

そしてみなさん、レース前にひたすら集中し続けているわけではないんです。深谷さんは特にリラックスしているように見えたのですが、それでもレースが近づくと「モードに入っている」ことがわかりました。

ワールドカップだとチームスプリントは1日に3本走りますよね。ずっと集中し続けていることは疲れに繋がるのだと思います。自分は大会の場やメンバーにも気圧されてずっと緊張していましたが、先輩方はオンとオフの切り替えがしっかりしていて、やはり違うなあと感じました。

「様々な経験を得た」大会

Q:チームスプリントの他にケイリン、スプリント、1kmTTの計4種目に出場していました。チームスプリントの後に他の種目という流れでしたが、切り替えられましたか?

切り替えられました。「過ぎちゃったことは仕方がない」「チームスプリントがダメだったのに、あとの3種目もダメでどうする」と考えることにしていました。ひとつの結果を引きずっているようでは世界でも戦えないし、パリオリンピックでのメダル獲得は難しいです。

Q:全日本選手権全体を振り返ると、どのような感想ですか?

成績自体はさほど良いものではありませんでした。でも自分の立ち位置や、どれ程力がついたのかを、きちんと確認できたと思います。

2019年の全日本選手権では、ケイリン決勝に進出した時点で、そこそこの満足感がありました。運よく新田さんの後ろにつくことができて、2位になりました。

一方2020年の全日本選手権では、ドリームシーカーに入り自覚も変わりましたし、ナショナルチームの練習で力が付き、自信もありました。だから「決勝進出は絶対」、さらに言えば優勝も本気で狙っていて、前年度とは気持ちの面で大きな違いがありました。

手応えの面でも、7月末から8月頭にかけて実施したオリンピックシュミレーションの時は、スプリントで「ついていってちょっとだけ並んだ」くらいだったのですが、今回は新田さんから1本取ることができました。

成績としては振るわなかったのですが、「嬉しかった」というか・・・良い全日本選手権だったなと思います。これからの目標を見つけられたし、もっと頑張ろうとも思えました。世界で走るドリームシーカーのメンバーの一員として大会を迎えたことで、学びが多かったです。

世界一になりたい

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