日本のメカニックの現状

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最も仕事がホットな時は「大会」
一番早く来て、一番遅く帰る

森昭雄チーフメカニック

2019トゥーラGPにて

Q:遠征やレースの時は、どのようなスケジュールなのでしょうか。

森:大会の時はギアの交換やチェーンの張りの調整など、自転車に関するほとんどすべてをメカニックが行います。一番時間が掛かることだと、自転車が入っている箱から機材を出すのに手間取ります。一度狭いところに押し込んだものを遠征先で取り出して、作業できる場所まで運んで広げるのに時間を要します。でも箱から出してしまえば、トラックレーサーなら1台あたり10分くらいで形にはなります。

日本の競輪だと、選手たちはその日の体調によってセッティングを変えたりもしますが、自転車競技の大会ではあまり頻繁にセッティングを変えません。セッティングが決まっているので、組み立てに時間は取られないですね。ギアが多少変わるくらいです。

Q:となると、大会当日は梱包を解いていますから、そこまで仕事でバタつかないということでしょうか?

森:レース中の事故がないようにネジの緩み、壊れている場所や壊れそうな場所がないか、パンクの可能性がないかなどのチェックを行いますので、準備日よりは仕事が少ないかもしれません。

齊藤:でもギア調整をして、サドルの高さを変えて、ハンドルスペーサーを確認して、タイヤの空気圧の確認をして・・・コミッセール(審判)のところで組みあがった自転車をチェックしていくなど様々なチェックがあります。そしてトラックは出場する選手の人数も多いので、自転車の数も多く、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

Q:メカニックの皆さんは大会の時は一番早くピットに来て、一番遅くピットを出ていくイメージです。実際そうでしょうか?

森:そうですね。トラックレーサーはタイヤの空気を高圧で入れていることもあり、空気の抜けが早いです。だからタイヤの空気入れから始まり、ピットで自転車の準備を整え、選手を迎え入れます。選手の集合時間の1時間〜2時間前くらいにはピットに入っています。片付けは選手がピットから出てから始めるので、帰りも当然遅くなります。

Q:大会によっては相当厳しいスケジュールのこともありますよね、朝9時にレースがスタートして23時に終わるような。そんな時も、変わらず一番早くに来て、一番遅くに帰るのでしょうか。

齊藤:アジア選手権ですね!(笑)

齊藤健吾

2019アジア選手権にて。アジア選はスケジュールがとにかくキツい!

森:そういうことになりますが、ワールドカップなら3日間、アジア選手権と世界選手権なら5日間・・・別に365日そんなスケジュールというわけでもないですから、「大会なので仕方がない」と思っています。選手もみんな頑張っていますし、寝不足にはなりますけど、移動中の仮眠でどうにかしています。そう考えるとメカニックは体力が必要な仕事ですね(笑)

後編では東京オリンピック前の最後の世界選手権での緊迫の様子、そして森チーフメカニックと齊藤アシスタントメカニックの経歴に迫る。

【後編】この自転車で勝ってくれ!チームを支えるメカニックの仕事/トラックナショナルチーム HPCJC メカニックスタッフ・インタビュー