競輪と競技のバランス

ブノワ・べトゥ監督

今、一番の課題は「競輪」です。

競輪のレースと、競技のトレーニングとバランスを取らなければいけない。もちろんナショナルチームの選手が競輪でも良い成果を出し続けねばならないので、より大変です。

日本ナショナルチーム短距離の監督として、私はどちらも考えなければなりませんが、本音を言えばトラック競技の海外レースに集中して欲しいです。

もちろん、例えば新田祐大選手が競輪のG1レースで勝つとすごく嬉しいです。ただ、私の一番の目標はオリンピックで日本が勝つことです。だから競輪で勝つことが、選手の自信に繋がるのなら良いですが、ナショナルチームにいること、その本当の目的からは離れないで欲しいと思っています。

競輪レースで、例えばG1に参加するなら6〜7日間位が競技に対しての時間のロスということになります。その間にはもちろん競技のトレーニングが出来ないし、精神的な疲労も溜まる。競輪のレース期間、選手たちはとても緊張感のある世界にいます。競争の世界ですからね。

とは言え、プロのスポーツ選手としてお金を稼ぐ事も重要です。自転車競技だけでお金を稼ぐという事で言えば、トップの競輪選手が稼ぐ金額は、ツール・ド・フランスなどロードレースのチャンピオンにでもならない限り、そんな額は稼げません。例えば新田祐大選手が1年間で稼ぐ額は、ヨーロッパのワールドチャンピオンでも5年位が必要です。

競輪は、若手が先輩のために頑張るモノではなかった

ブノワ・べトゥ監督

日本の競輪、今語ってくれたように独特な決まりがあるので、競技との両立は難しいとは思いますね。因みにその「競輪」について思うことは?

例えばS級S班の中で、40歳代の選手が多い事を疑問に思います。若い選手が助けなければ、そんなに勝てないと思います。

ブノワ・べトゥ監督

もちろん、習慣や伝統もあるのは理解しているし、尊敬もしています。ただ「伝統伝統」という話を聞く度に、ちょっと疑問に思いますね。私は、その伝統とは後から作られたモノだと思うんです。30年前は全然違いました。競輪は、若手が先輩のために頑張るモノではありませんでした。後から自分達を守るために、そんな伝統を作ったんじゃないかな?と思います。組合が強いし、いわゆる伝統を使い、それでお金を稼ぐ。だから、私はそういった制度が好きではありません。

ある選手が、自分のレースを犠牲にして、先輩のために走る。彼は他の選手より全然強いのに、そんな制度があるせいで、若者が受け身にならざるを得ない。凄く残念で、もったいないですよ。

「私も皆と一緒に走るよ」と感じていて欲しい