「もし会社に入ってなかったら、ここまで成長していたのか?」

Q:月にどれくらい出社していますか?

最近はブリヂストンとして毎週のようにレースに出ていますし、ブリヂストンだけでなくナショナルチームの合宿もあります。またバンクリーグの記者会見へ出席したり、チーム広報の撮影があったりとイベントが多いため、日帰りでは東京へよく来るのですが、なかなか出社はできていません。

タイミングを見て、レースとレースの間で時間がちゃんとある時に出社をしています。

Q:会社的にはレアキャラですね。

でもそれが逆に「成果を出さなきゃ」という良い意味でのプレッシャーになっています。練習も入社前に比べ、プロ意識を持ってできていますし。強くなるためにベストな環境をいただけているので「これで成長できなければ自転車を降りるしかない」という気持ちです。これまで怪我とかも色々ありましたけど、どんな状況でも僕のことを応援してくれる会社には感謝しかありません。一丸(尚伍)さんともそういうこと話してました。

Q:あんなに仲良いのに、一丸“さん”?(笑)

一丸“さん”です(笑)

Qualifying / Men's Team Pursuit / Track Cycling World Cup VI / Hong-Kong

一丸尚伍&近谷涼

一丸さんは1つ年上ですが、社会人としての入社は同時期ですね。一丸さんは大分のアスナビから太陽の家(就職先)へ入っています。

一丸さんはプロ選手で家庭もあって、それでいて世界のトップを目指して行くという立場で、やっぱり生活を安定させながら競技に専念できるか?という不安な要素はあります。会社に属していると「そういう不安がなく競技に専念できるという点ですごく感謝だよね」と。だからこそ何年も第一線でやってこれている、というのは僕も一丸さんも感じています。

チームパシュートのメンバーも何だかんだ入れ替わっています。色々な選手が抜けては入り、シャッフルされて。そんな中で僕と一丸さんは6〜7年前に知り合ってからずっとメンバーに入り続けています。それはこういう環境があったからだと思います。もし会社に入ってなかったら今の自分があったかはわかりません。

Q:会社が一番のサポーターでいてくれているということですね。

アジア選手権で優勝をした時も「会社の人たち、結果見て今頃喜んでくれてるかな?」って思い浮かんだんですよね。レースの前に「ここで勝ったら会社が盛り上がるだろうな」って思うこともあります。

左から近谷涼、今村駿介、イアン・メルビン中距離ヘッドコーチ、一丸尚伍、沢田桂太郎

アジア選手権トラック2018

大事な試合で「ここぞ」という時、自分ももちろん勝ちたいんですけど、周りの、サポートしていただいてる人たちの顔が思い浮かぶ中で走りますよね。それが力になります。

どんなにダメでも、立ち止まることはできない

Q:香港ワールドカップの時、予選で敗退が決まりましたが、あの時はどんな気持ちでしたか?

あの時「次こそは挽回しなくては」という気持ちでした。

Qualifying / Men's Team Pursuit / Track Cycling World Cup VI / Hong-Kong

ここで止まれないんで。どんなにダメでも、立ち止まることはできないので。僕らは長い目で見ると、日本の自転車競技の発展に貢献しないといけない部分がありますから。

僕が大学3年でナショナルチームへ入った時、まだ中長距離のチームは動き出したばかりでした。当時はアジア勢がワールドカップで勝つのは到底不可能と思われていて「日本チームが4分切ることなんて10〜20年先なんじゃないか」とまで言われていたんです。

そんな中で練習を積み重ね、実際4分切ることを達成できたし、ここから先も壁は高いですけど、僕らがやっていかなくてはいけません。

Qualifying / Men's Team Pursuit / Track Cycling World Cup VI / Hong-Kong

だから止まることはできないと思います。

「中長距離チームの強化活動はしてもらえないんじゃないか?」とか「スランプで厳しいんじゃないか?」とか言われる時期もありますが、その中でも色々と試行錯誤しながら、前例のない、何十年かけても日本人の誰もが達成していない所を目指しています。

全てが手探りで状態で「これ意味あるのかな?」みたいなトレーニングをしたり、色々な国で合宿をしたり、そういうものを積み上げているので、立ち止まれないと思います。

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レース後に倒れ込む近谷涼

だから昨シーズンの香港のレースはすごく申し訳ない結果だったけれど「止まらないで挽回しよう」という気持ちでした。あの後から世界選手権までの1ヶ月間、気持ちを入れ直して合宿に取り組んでいました。

後編へ続く・・・

【後編】全てを自転車へ捧げた青春時代、背中を押してくれた両親 近谷涼インタビュー