なぜ今、引退なのか
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そもそも抱くのは「何故、今引退をするのか?」という疑問である。27歳という年齢は現役で十分に通用するし、前田佳代乃もメダルを狙っていた東京オリンピックは目前に迫っている。
引退を決意したのは約2週間前のアジア大会。ケイリンは敗者復活戦敗退、スプリントも1/8決勝で敗退という結果に終わった。
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敗者復活戦で4位と、2回戦進出にあと一歩のところで届かなかった前田
「私はロンドンオリンピックに出させてもらったからこそ、オリンピック表彰台の遠さを知ってしまっているんです。このまま続ければ東京オリンピックへ出る事は出来るかもしれない。でも、表彰台へ乗って、メダルを獲ることは私には出来ないって思って。」
さらに続いたのは、一人の人間として、一人の女性として人生の幸せも求めたい、という想いであった。
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「27歳って、大学院を卒業した人が新卒で就職をする年齢だし、まだギリギリ就職はいけるかなって歳じゃないですか。それに、いつかは普通に結婚して、子どもを産んで、私が両親に育ててもらった様な温かい家庭を築くっていう事もしたいな、って。」
アスリートとしての27歳は成熟の域に達する年齢だが、一般的な企業へ務める人間としては若手から中堅への過渡期でもある。だからこそ、前田佳代乃は27歳という年齢で人生の方向転換を選んだのだ。
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ある調査によると、初めての転職を行うのは27歳が最多。実際に筆者も27歳の時に会社員を辞め、独立する道を選んでいた。この年齢は多くの人もまた、新たな道を選ぶ時期なのかもしれない。