パリオリンピックを経て、『2024世界選手権トラック』で日本にとって35年ぶりとなる男子スプリントでのメダルもたらした太田海也。
2025シーズンは、スプリントでアジアチャンピオンとなったほか、『ジャパントラックカップ』でも圧倒的な力で3つの金メダルを獲得。競輪でも、好調な成績を残している。

8月22日から開催される『全日本選手権トラック』は、太田海也にとってどんな大会なのか。そして、激動の2024年を経ての現在の心境の変化を語ってもらった。

楽しむことが第一歩

Q:インタビューとしては少し久々のご登場となりますが、近況はいかがですか?

昨年の世界選手権が終わってからは、自分のペースを保ちながらやれていると思います。サボっているわけではなく、かと言ってオリンピックの時のように張り詰めてやっているわけでもなく、楽しく自転車に乗りながら成長できているのかなと感じています。

Q:最近のレースを見ていて、のびのびと走れているように感じていました。

プレッシャーはもちろんありますが、まずは楽しむことが強くなることの第一歩。パリオリンピックまではすごく追いこんで練習していたので、逆に今はラフな感じでやっても良いのかなと思ってトレーニングしています。

オリンピックが自分を知る機会に

Q:あらためてですが、オリンピックの経験から得たものや学んだものはありますか?

自分の可能性を知ることができた大会でした。オリンピックを経験したからこそ、世界選手権やアジア選手権でも落ち着いたパフォーマンスができています。他の大会はオリンピックの序章に過ぎない、という風にも捉えられるようになりました。

Q:オリンピックの時は様々な要素があって、難しかった部分もあったと思います。最近は新しいバイクにも慣れてきてハロンの9秒3などのタイムが板についてきたのではないでしょうか?

そうですね。オリンピックの時は正直、大会までに自転車との感覚的な部分の擦り合わせが十分に出来なかったと思うのですが、1年くらい経って、ブリヂストンの時と同じように自分の手足のような感じでトラックの上で扱えるようになってきた感覚があります。

太田海也, Japan, 1回戦敗者復活戦, mens keirin, Olympic Games Paris 2024, Saint-Quentin-en-Yvelines Velodrome, August 10, 2024 in Paris, France

自分の体と自転車を細かく調整しながら試行錯誤してきたこの経験は、今後にすごく活きると思います。

Q:コンディションを無理に作っているわけではなく、自然と出来上がっている印象を受けます。

それも、オリンピックの経験が大きいですね。どういうコンディション、気持ちで挑めば最大のパフォーマンスを出せるかを、オリンピックで理解することができました。今はそれを活かしてコンディションが作れているように思います。

いつもと変わらない、競技の大会

Q:『全日本選手権トラック』は、太田選手にとってどんな大会と言えますでしょうか?

「いつもと変わらない、競技の大会」です。『全日本選手権』であろうが、『ネーションズカップ』であろうが、『世界選手権』であろうが、やることは変わりません。それに合わせて、自分はコンディションを整えていくのみです。

Q:結果としての具体的な目標は?

出場する種目全てで優勝したいですね。また、その中でも強さを見せるようなレースをしなければならないと感じています。

Q:他のトップ選手と比較して、スピード面では突出しているような印象を受けます。

元々、他の選手よりもキャリアが浅い状態で競技にきたので、技術や経験をスピードでカバーしないといけないと思ってトレーニングに励んできました。それが実になって、自分のトップスピードも上がってきたのかと思います。

太田海也,OTA Kaiya,男子スプリント, MEN'S Sprint, 2025ジャパントラックカップ I, 伊豆ベロドローム, 2025 Japan Track Cup I, Izu Velodrome, Japan

2025 JAPAN TRACK CUPにて

Q:そのスピードが活かせるのがスプリントだと思いますが、現時点ではスプリントとケイリンではどちらの種目が走りやすいですか?

現時点では、スプリントは自分が走りたいように走れていますし、自分の力を毎回出せているような感覚はあります。一方で、ケイリンは水物。ハリー・ラブレイセンのようなトップ選手でもつねに勝ち続けられる訳ではなく、強い相手にも勝てるし、逆に格下の選手に負けることもあります。まったく異なる理由ではありますが、両種目に対して同じくらいの面白さを感じています。

Q:ケイリンのお話は、『ジャパントラックカップ』が良い例と言えるかもしれません。

中石(湊)が本当に強くて、そこに喰らいつくことができなくて悔しかったですね。

※ジャパントラックカップでは中石湊、サム・デイキン、太田海也の順位。フィニッシュラインを1番に超えたのは山﨑賢人だったが降格となり、他の選手の順位が繰り上がった

競輪への出場がもたらす意外なメリット

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