KEIRINグランプリ2022を振り返る

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「読み」の力

Q:若くて生きの良い選手がどんどん出てきて、今後は連携が楽しみではないでしょうか。

楽しみですね!それと同時に恐ろしさもあります。海也がフルでいったら(自分が)厳しいだろうなとは実感しちゃっているので。何があっても離れないようにしないといけないし、その脚力を付けられるかは……ちょっとわからないですけれど……

Q:でも競輪祭では大丈夫でしたよね?

あれはタイミングが良かったのもあります。無理矢理仕掛けるようなことがあった時は、どうだろう……って思っちゃいます。

Q:過去の先輩方も、同じようなイメージを松浦選手に持っていたかもしれません。

僕は比較的つきやすいと言われてました。タイミングをしっかり取らないと出られないのでそうしていたし、無理矢理仕掛けるようなことはしばらくやっていないですね。

相手のことを読んでいて「ここでこうなるだろう」と測ってタイミングを取っていました。それがハマればいいですけど、ハマらなかったときは苦しいです。

Q:その「読みの力」が強いなと感じます。

しっかり注意して、選手それぞれの性格なども見ていますね。半分かそれ以上は読めているかなと思います。もちろんそうじゃない時は負けちゃうし、相手が想像以上だった時も負けてしまいますが。

Q :年齢と経験がどんどん積み重なっていくわけですから、読みの力もどんどん上がっていきそうですね。

それが、どんどん「わからない選手」が出てくるんですよ(笑)何考えてるかわからない選手が出てくることが一番怖いです。

それにレースを上手く走ってる選手は「松浦はこうくるだろう」と読んできますし、僕は「そう読まれているだろう」と思って仕掛けます。

Q:化かし合いですね……松浦選手にとってのやりづらい相手を挙げるとしたら誰ですか?

僕にとってやりづらいのは新田(祐大)さんと郡司(浩平)くん。新田さんはおそらく僕と考え方が違うので、やり方が読めないんです。

新田祐大

例えば古性(優作)くんなんかは考え方が似てるのでお互いに位置が被らなくて、スタートの位置争いでかち合うことがありません。

そこでかち合って、並走になりがちなのが郡司くん(笑)郡司くんは本能で走っているところが大きいんじゃないかと思います。

郡司浩平

あと10年、SSでいたい

Q:現在33歳。一般的なスポーツ選手として見るとピーク年齢だと思います。年齢を重ねていく中、これからの自分の理想像などはありますか?

あまりないですね。理想像……あと10年くらいグランプリに出たいです(笑)

Q:基本何でもできてしまいますしね(笑)

もっとタテ脚が欲しいとは常々思います。「先行できるようになりたい」というのは永遠の課題だし、先行で押し切れる選手が永遠の理想ですね。でもそうじゃない戦法で、今魅せる競走ができたらなと思っています。

Q:昨年はナショナルチームのブノワ・ベトゥ氏と対談していただきました。1年越しの質問となりますが、あの対談で何か発見などありましたか?

松浦悠士 × ブノワ・ベトゥ「いろんな道を試してみる」/KEIRINグランプリ2022特別企画

ナショナルチームと日本の競輪で方向性が同じだったことは意外でした。全然別の方向を向いてるのかと思っていたけれど、強くなるための方法が違うというだけで、向いてる方向は一緒なんだ、と。

重要なのは「納得してやれているかどうか」

ナショナルチームのやり方を全選手に強要するのは違うかなと感じます。僕のやり方をやって強くなる選手もいっぱいいるし、ナショナルチームのやり方をやったからといって全員が強くなるわけじゃない。例えば競輪選手養成所で、ナショナル式か瀧澤式か、個人でやり方を選べたら最高ですよね。自分で選んだからこそ成果も出ると思います。

僕は正直、練習はなんでも良いと思っています。自分がどういう選手になりたいかによって練習方法は変わってきますから。自分で考えてこそ効果が一番出る……そういう話は、以前養成所で行った講演会でもしました。

松浦悠士、競輪選手養成所で講義「1人の人間として素晴らしい人であって欲しい」

Q:自分が納得して練習しているかどうか、という部分ですね。

そうです。ナショナルチームのメンバーはその練習が結果になっているし、自分が強くなっているという実感がある。だからああいう練習もこなしていけるし、きちんと成果が出る。

僕も自分の練習に自信を持っているし、「俺の練習はこうだ」という取り組み方をしています。この方法は間違っている、これで大丈夫かな?と思っていたら強くはなれません。

方法は違えど同じ方向なんだなあと感じました。

Q:そこに至るまでは、やはりトライアンドエラーもあったんですよね。

そうですね。初めからできることではありません。僕は23歳くらいの時に気づき始めて、本気でそう思えるようになったのが25〜6歳くらい。そこからが競輪人生の「始まり」って感じでした。

そこに至るまでは「ただ乗ってる、ただ勝ちたい」という感じで、自分がどうなりたいというビジョンもありませんでした。練習を行っていないに等しかったと思います。

Q:お話聞いていると、松浦選手は本当にS級S班人生が長くなりそうです。

あと10年いきたいですね!

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