人生を欲に捧げる生き方
競輪選手といえば、高額な賞金を稼ぐという事でも有名であり、そのトップ選手ともなれば稼ぎ出す賞金額も超高額。もちろん深谷知広選手もその一員だ。スポーツ選手として成功し、大金を手にする。一見すれば成り上がりのサクセスストーリーであり、高級外車を乗り回し、歓楽街で豪遊するギラギラした印象もついて回る。しかし深谷選手は少し違うのだ。お金の為に競輪選手をやっていると言えばそうかも知れないが、単純にお金を求めているのではない。
深谷選手はクルマ道楽に人生を捧げている。幼い頃から大好きなクルマ。欲しいクルマを手にする為に、競輪選手になったというのだ。まさにクルマ道楽者の極み。これまでに様々な名車を乗り継いできた彼が新たに手にしたのは、クルマ趣味の最高峰であるフェラーリだ。
深谷選手が幼心に最も憧れたクルマはフェラーリF40。フェラーリ創業者エンツォ・フェラーリが生涯最後に関わり、こち亀でも中川の愛車として登場。当時世界最速を誇ったスーパーカーの代名詞と言える存在。このF40は1987年に発表。幼少期の深谷選手は、このF40の強烈な印象に心を奪われていた。
「F40がスタートにあったので、その印象が強烈に残っていたのかもしれませんね。」
フェラーリが好きな理由について、幼少期の思い出を振り返りながら教えてくれた。
「クルマは自分の人生で一番長い趣味ですから。自転車もずっと続いていますが、中学の終わりから始めた位ですが、クルマは物心ついた時からずっと続いています。クルマ趣味の方が長いですね。
皆がウルトラマンや仮面ライダーの人形を持っている代わりに、僕はトミカを持っていました。小学生の頃からゲンロクを読み漁っていました。(※ゲンロク:三栄書房が発行するスーパーカー専門誌)
クルマ好きになった原点がフェラリーだったので、手に入れるのは夢でした。フェラーリの魅力を聞かれても、説明不要な程、クルマ好きなら誰もが憧れるじゃないですか。言い方は悪いですが、手に入れられるのなら、フェラーリなら何でも良かったんです。その中で、偶然出会ったこの599が、たまたま自分の条件にマッチしていたんです。
ただ実際に購入へ至ったのは、知り合いの紹介というのが一番大きかったと思います。偶然の繋がりから生まれたご縁で、このクルマに出会えたというのもあります。しかし、そのキッカケを作ってくれた方が納車直前に亡くなられ、納車後の姿を見せられなかったのがとても残念でした。」