「オムニアムのスクラッチ」だからこその難しさ

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いつも「残り10人くらいのところ」

Q:そして3種目目のエリミネーション。内側に詰まったというか、外が一気に上がっていった結果エリミネートされてしまったようなレースでした。

だいぶ脚を残して、うまく立ち回れていたのですが……毎回、残り10人くらいのところなんですよね。技術とか、周りを見る力が足りなくてエリミネートされてしまいました。

「ここまでは脚を溜めて良いけど、ここからは脚を使ってでも回避しなければならない」というポイントの、判断ミス。脚を残した状態で終わってしまいました。

やっぱりエリミネーションとスクラッチは”どんな状況になっても上位が獲れる”上手さや力がないとダメだと強く感じます。この2種目で、いかに着を残せるかがこれからの課題です。逆に、力のある選手なら「(最終種目までは)勝たなくても5番目以内にいれば良い」とも思えるわけです。

オリンピックの舞台ともなると大番狂わせは起こりにくいので、いかに全種目で上位にまとめるかがポイントになると思います。いかにメダル争いに楽に入れるか、ですね。

心臓を強くしろ!

Q:今村選手にとって、これから強めていかなければならないのはどのような部分でしょう?

独走力ですね。トップスピードはもちろん大事なんですが、やっぱり体力がないから「前に出たくない」と思ったり、躊躇してしまったりします。それが後々大きな点差になって響いてきます。最終的にフィジカルの話になってしまうのですが、多少無理してでも次の展開に持っていける体力が必要ですね。

Q:それはアワーレコードのような淡々とした走りではなく、あくまでレースの中でバンバン出ていける力、ということですよね。

そうですね。ふるい落としに勝てるだけの力が必要です。陸上とかでもそうだと思うのですが、仮に「日本記録で走れば世界陸上で勝てる」というタイム帯だったとしても、スローペースからの残り3周のハイスピードに日本人がついていけない、みたいな。

この力を強めるためにはやっぱりエンデュランスの力を強くすること。今後ロードレースに出場する機会は限られてきますが、そういった環境の中でいかに心臓のポンプを大きくするか、です。普段からロードレースで活躍している選手は、嫌でもそういった部分が強化されています。心臓の伸び縮みのレベルが、僕らとは違います。

Q:チームブリヂストンサイクリングは中長距離メインのチーム。もちろんそれはそれで強みではありますが、ワールドツアーに出て毎日やり合ってるチームの選手にはまた別の強みがある、というわけですね。

5分〜10分の種目だと意外と太刀打ちできるかもしれないんですが、それを出すためにも40分から1時間走れるだけのベースが必要なんですよね。インターバルの強さが必要です。1回、2回は対応できたとしても、8回、10回となった時に同じクオリティで対応できるかは……

根本的にフィジカルレベルが同じくらいにならないと、戦い方が限られてしまいます。

苦しいけど、苦しい分だけ近づける

Q:聞いていると地獄のような話ですが、今村選手は苦しいのが好きなんですか……?

それで勝ってこそキング・オブ・エンデュランスですから!オムニアムは国を代表して出る、世界一の中距離選手、中長距離オールラウンダーの証です。

こういう状況で結果が出せた時の「ああ、やれるんだ」という気持ちが、次への意欲を掻き立てます。

Q:走ってる時とかに「ああ苦しい、やめてえよぉ〜」とかなりませんか?

なりますよ!たまんないくらい苦しいしキツいけれど、やればやるだけ太刀打ちできるようになること、ちょっとずつ強くなっていることを実感できるのが良いんですよね……苦しいとは思うのですけれど、ちょっとずつ距離が縮まっているということを実感できています。だからこそ続けられているのだと思います。

Q:今回のレースで一番苦しかった瞬間は?

2つありますね。テンポレースでラップできないギリギリの瞬間と、ポイントレースで残り20周くらいのタイミング。「ここで追いつけば3ラップ目だ」というところで、離れかけながら集団に追いついたのですが……あの時はもう苦しかったですね。

「もう体力ない!」ってなって電光掲示板を見る余裕もなかったですし「はやく周回減ってくれ」って願うような気持ちでした。

自分の順位もなんとなくでしか分かっていなかったんです。ジュニアの世界選手権の時は「獲れれば勝てる」と把握できてたから無我夢中でスプリントできたんですが、今回は「あれ、ここ行かなきゃなのかな?」と半信半疑で踏む感じ。あの時もしニクラス・ラースン(デンマーク)が1着でフィニッシュしていたら、僕は4位でした。余裕はなかったですね。

※ニクラス・ラースンは今村と5ポイント差で4位となった

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大逆転での表彰台獲得 でも序盤で状態は”ピコン・ピコン” 最終種目・ポイントレース

Q:改めて、最終種目ポイントレースについてお話を聞かせてください。ここまでの暫定順位は6位で、1位との差は34ポイント。これだけポイントが離れていると、マズいなという気持ちもあった?

去年(2022)は暫定3位で最終種目に入ったんですが、マークされて難しかったです。今回は追われる立場だったのが追う立場になって、しかも4位から8位くらいまでがすごく僅差。潜り込んでうまく順位があげられると思ってたし、これだけ点差があれば僕なんて見てないだろう、とも思いました。

だから「やれるだけやって、順位を上げられるだけ上げたい」と思っていました。動ける動きには全て反応するつもりでしたね。

Q:なるほど、全種目を上位でまとめて最終種目に入るのが最善だと思っていましたが、こういうパターンもあるんですね。

はい、今回の場合は僅差だったことなどが功を奏したと思います。

Q:ポイントレースでは、誰かをマークしたりはあったのでしょうか?

順位の近い選手たちは注意して見ていました。同じ動きができれば順位は上がっていくし、それができなければ僕の順位が下がる。最低限順位の近い選手1人にはついていなければならない状況でした。

Q:ラップにも積極的でしたね。

1ラップ取ると、取られた側へプレッシャーをかけることができます。動いたもの勝ち、「いくしかねえ!」って気持ちになれますね。

Q:アドレナリンが出てるってことですね。そういう時は疲れも感じない?

いや、80周から息が上がりまくってました。地獄に脚を踏み入れた感じでしたね。

Q:(笑)でもそこからもラップしてますよね?

「キツくなる瞬間を耐えて、どうせ休むなら攻撃に転じた後に休もう」と思っていました。キツくて諦めるではなく、攻撃をし終えてから休む、というか。

今回は自分が苦しい時に上位の選手たちがラップに行ったので「あれを逃しちゃいけない!」と思って追った結果、ラップに繋がったような感じです。

Q:じゃあずっと、ウルトラマンで言うとこの「ピコンピコン」の状態だったわけですね。

心拍を見返したらえらいことになってると思いますよ。まだ細かなデータ解析はできてないのですけれど、ストレススコアがめちゃめちゃ高くて。「うわ、それだけ動いたんだ!」と思いました。

Q:強い選手のアタックについていって、順位を上げて行って。でもさっきおっしゃっていたように、残り10周とかでは自分の状況もよくわかっていなかったわけですよね。

はい。でも自分の持てる力を出し切りました。やっぱりこれはオリンピックの選考レースでもあったし、メダルを狙うというよりは「上位で終わらせるに越したことはない」という意識からでした。

Q:メダルを獲ったとわかったタイミングはどこだったのでしょう?

ゴール後、最終スプリントの結果が表示された後、オムニアム全体としての順位が出るのですが、それを見て「あれっ?1、2……3番目だ?えっ、銅じゃね?」みたいな(笑)

上からたくさんの人たちが「今村〜っ!!!」ってすごい言ってくれて、スタッフもみんな喜んでくれてて、「ああ、銅か……」って感じでした。よっしゃあ!みたいなものもなくて、たぶん疲れちゃってて……(笑)

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中長距離で世界と戦う姿を見せたい

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