いつも「残り10人くらいのところ」

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中長距離で世界と戦う姿を見せたい

Q:今回優勝したユリ・レイタオ(ポルトガル)は、少し前までは今村選手と同じくらいのレベル帯の選手、という位置付けだったと思います。

彼もそうですが、ロードレースでも良い走りをしてるキャンベル・スチュワート(ニュージーランド)、エリア・ビビアーニ(イタリア)など、誰しもがメダルを獲得する力を持っていると思います。ちょっとずつ点差が生まれていく種目ですので、やっぱりオリンピックの金メダルとなると本当に難しいことだよな、と改めて感じました。

エリア・ビビアーニ

Q:しかし今村選手は一歩一歩成長しているな、と感じさせてくれます。

その成長曲線をお見せできているからこそ、金まで期待してもらえるのかなと思っています。自分としてもやり切りたいし、中長距離で世界と戦える姿を見せたい、と思っています。

Q:帰国してから表敬訪問などで忙しくしていると思います。そういうイベントごとで、メダル獲得を実感しますか?

オリンピック種目でのメダル獲得ということで、たくさんピックアップしてもらえてるなと感じます。パリオリンピックまで残り1年のタイミングでもあるので、みなさんが期待してくれています。自分も話をしていてワクワクしてくるし、より金メダルへの決意が固まるというか……言葉にすればするほど覚悟が決まっていくような感覚があります。

Q:その分プレッシャーもあるかと思います。

プレッシャーは感じたり、感じなかったり、半々くらいです。感じればうまく活用しますし、キツいときに感じちゃう時は、逆に開き直って気にしないようにできるタイプです。良い性格してるなと自分でも思ってます(笑)

今年は全日本選手権などでもパフォーマンスが上がりきってないことに対して「世界選手権に向けているから、今はピークじゃない」と焦らないように意識していました。今回の結果で「今村はちゃんとピークに持っていける選手なんだな」と伝えられたと思います。その点は良かったなと思います。

残り”900周”

Q:マディソンについても聞かせてください。メダリスト2人で挑んだマディソンでしたが、振り返っていかがですか?

「力が足りないわけではなかった、力負けしたわけではなかった」と思います。どのように流れに乗るかが重要なところだったと思います。

もっともっとレースを見ること……でもやはり、ビビっちゃダメなんだなというのが最大かもしれません。レベルが高いことはもちろんわかっていましたし、でもスプリント周回での1位すら取れなかったのは……やっぱりスピードが速かったです。

後手を踏んだらどれだけ地獄を見るか、を実感しました。

Q:一度下がってしまうと、前に出るのはやはり厳しい?

上がれないです。でもオランダも、どちらかというと僕らに似たような走りをするんです。休むときは後ろで休んで、内側を縫って縫って前に上がっていく感じ。やろうと思えばできるはずなんです。あとはやり方次第なんだなと思います。

Q:とはいえ、それを実行するのは難しい。

はい、世界レベルでの実戦の機会はオリンピックまであと3回しかありません。そこで今までやってこなかったことにトライして、やっていることを引き続きできれば、本当に自信につながりますが……

※2024シーズンのネーションズカップ全3戦

マディソンは、予選と合わせると各大会300周、3大会で合計900周走ることができます。その中でいかに勉強するかですね。

窪木さんとなら怖くない

窪木一茂

Q:900周のカウントダウンですね。

はい、1周も無駄にできません。実際全3戦にフル参加できるかは分かりませんが、走れば勉強になることは確かです。

Q:窪木一茂選手本人がどう考えているかは分かりませんが、パリオリンピックが2人でマディソンをするラスト、集大成になるかもしれないですよね。

そうですね。2019年からずっとペアを組んでいて、周りにもペアのイメージを植え付けられていると思います。「あの2人なら面白いことをやってくれるんじゃないか」というふうに思ってもらえていると思うし、僕自身も「窪木さんとなら怖くない」という感覚があります。

とはいえ、限られた時間の中で勉強していかなければなりません。世界選手権のレースは観ている方を落胆させてしまったんじゃないかな、というレースでした。悔しかったです。

「アイムソーハッピー!」

ダニエル・ギジガー

Q:世界選手権に出場させてくれた、チャンスをくれたダニエル・ギジガーコーチには感謝してますか?

めちゃくちゃ感謝しています!僕がネーションズカップで1番成績が良かったわけでもないし、アジア選手権で勝ったわけでもない。それでも選んでくれました。

実は5月くらいから世界選手権のメンバー選びのことをずっと聞いていたんです。選ばれなかったら仕方ないと、ある意味覚悟も出来ていましたが、「今村がオムニアムを走る」と言われたときはめちゃくちゃ嬉しかったです。

Q:顔に出ました?

超出ました。「アイムソーハッピー!」ってめちゃめちゃ言いました(笑)その後「あれっ、本当に僕だよな?」と不安になったりもして。

コーチとのミーティングの時、嬉しさからか、話が終わってないのに帰ろうとしてしまい「おい話終わってないぞ!お前オムニアムに出させないぞ!」って笑いながら言われて、そういう些細なことも嬉しくて楽しかったですね。

Q:メダル獲得はオリンピックへのモチベーションにも大きく関わりますね。

リオオリンピックでは一切選考に関わらなかったですが、東京オリンピックには出られなくて悔しい想いをしました。間近で(橋本)英也さんのレースを見ていたからこそ、オリンピックでは「こんなに難しいものなのか」と悔しくも思って。

パリでは「やってくれるんじゃね?」と思ってもらえるような、そして自分でもそう思えるような1年をこれから過ごしていきたいと思います。