『2023世界選手権トラック』男子オムニアムでは、今村駿介がこの種目で日本史上”初”となる銅メダルを獲得した。レースでは序盤から苦しんだが、最後の最後に大量得点を得て逆転。オムニアムだからこその展開に、今村を応援していた人々は沸きに沸いた結果となった。

レースからおよそ1か月経った今、改めてインタビューを実施。オムニアムで実施された4種目の振り返り、その時々の心境。そして1年後に迫ったパリオリンピックへの意気込みなど、様々な話を聞かせてもらった。

【日本史上初】世界選手権で今村駿介がメダル獲得 男子オムニアム/2023世界選手権・グラスゴー大会

「オムニアムの中のスクラッチ」だからこその難しさ

Q:『2023世界選手権トラック』オムニアム3位になりました。以前のインタビューで「コーチに『今村で行きたい』と言わせたい」といったことを話していましたが、言ってくれそうになりましたか?

「言ってくれても良いんじゃないかな」ってところですね(笑)それくらいのリザルトは獲れたと思います。でも金だったら「僕でいいでしょ!」って言えるんですけど、やっと獲れた銅メダルだったので強気には言えないですね。

Q:その銅メダルを獲ったオムニアムを、1種目ずつ振り返っていただきたいと思います。まずスクラッチはいかがでしたか?

去年(2022)はラップしての2位でした。なので同じ展開とはいかないまでも、前々で走っていれば逃げになってもスプリントになっても、要所要所で脚は使えるだろうと考えていました。脚を溜めすぎないことを意識して走っていました。

Q:結果としては8位になりましたね。

なるべく前で位置を取って、流れ込みで上位が獲れればと考えていたのですが……自分としては悪くないタイミングで前に出られたと思いましたが、やっぱりスピードが速くて。上から来られた時にすぐに対応できず、着も上がらなかったという感じでした。

Q:日本の選手はスプリントに長けている選手が多いと思いますが、それでも世界の中では強みが出せないと感じるものですか?

単独種目でのスクラッチと違って、オムニアムのスクラッチはみんなが「上位を狙いたい」と思っています。その分、位置取りもナーバスになって、集団スプリントになり易く、難しいなと思いますね。

オムニアムでは「人をうまく使う」ことが重要です。でもそれって、ひとつ間違えるとすごく大きな着になってしまうテクニックでもあります。だったら自分の力を出し切ってトップ10、欲を言えばトップ5以内を狙いたいところです。

Q:オムニアムのスクラッチだからこそ、というわけですね。

はい。「負けたら終わり」ではなくて「順位を残さなければならない」という難しさがありますね。

Q:8位という順位はどのように捉えていましたか?

コーチからは「アジア選手権じゃないんだから、あんなに早いタイミングで出るんじゃない」と言われたのですが、自分としては「悪すぎではない」と思っていました。

でも「8位」というとまあまあのように感じますが、オムニアムのポイントで換算すれば「26ポイント」。だいぶ低いです。

※1位が40ポイント、以下順位が下がるにつれ2ポイントずつ獲得ポイントが下がる

スクラッチリザルトPDF

苦しみのテンポレース

Q:次のテンポレースは2位でした。これは良い結果だったのではないでしょうか?

できれば最初に行った選手(ユリ・レイタオ:ポルトガル)と協力していきたかったのですが、なかなか勇気が出ず……それでも「後手を踏むくらいならなるべく前待ちに」と考えていました。

先頭の選手がすごく脚を使って逃げていったので、すぐにラップ(1周追い抜き)するだろうと思ったんです。僕は先頭のラップが成立する2周前くらいから飛び出しました。そこで僕もラップできれば良かったのですが、そうはならず。ただ先頭を単独で走って獲得できるポイントは獲得していきました。これもやはり順位に影響力の多いものなので「獲れるだけ獲って、あとは集団で粘ろう」と。

Q:結果としては9ポイントを獲得しましたね。このくらい獲っておくと安心感もあったのでは?

そうですね。それに仮に自分のライバルが9ポイントくらい持っていたら、その後にラップを狙うよりはスプリント勝負になりやすいとも思います。

例えば、すでに誰かに10ポイントほど取られているとします。そうなると残りの周回は20回くらいしかないんです。そうなると誰かが飛び出すというよりは、「みんなが点を取りたい」から毎周回のスプリント勝負になっていく。

※テンポレースでは、各ポイント周回の先頭で通過した選手のみ1ポイントを獲得できる。男子のポイント獲得チャンスは36回のみ

僕はポイント獲得後、集団から遅れないように計算して走っていましたが、9ポイント獲得する間はずっと1人で走っていました。テンポレースはスピードが落ちませんから、追いつかれた後の集団での走行も結構苦しかったです。

テンポレースリザルトPDF

いつも「残り10人くらいのところ」

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