気持ちが常に安定してるタイプ、だけど……
Q:走ってる時に楽しさや高揚感は感じますか?
必死で漕いでいるので、楽しいとかはないですね。これはBMXの時もそうでしたが、走る前はすごく怖くて不安。でも終わったら「あ〜、楽しかった!」って思えることもあります。
Q:いつもニコニコしているので、あまり緊張していないように見えます。
普段から、あまり感情の浮き沈みがない方かなと思います。レースでは緊張しますが……実は「友達と喧嘩したこと」が、人生で一度もないんです。あまり腹が立たないタイプだと思います。
落ち込むことはあるけれど、それもレースの時くらいです。
『2022 BMXレーシング全日本選手権』で負けた時は、めちゃくちゃ落ち込みました。
予選は全部1位で、決勝でも最終コーナーまで1位で走ってたんです。でもぶつかって、最後のコーナーで私だけ転んでしまったんですよね。
当時のレースレポートはこちら
▶︎「2022年の日本一は島田遼と丹野夏波/2022全日本選手権BMXレース」
悔しかった2022全日本をバネに
先日行われた『2023 BMXレーシング全日本選手権』も観に行きました。去年負けてしまったので「今年は出たかった、勝ちたかった」という思いもあったのですが……
Q:2021年にはBMXレーシングで日本一にもなっています。現在はトラック競技にフィールドを変えていますが、改めて今のご自身のスタンスを教えていただけますか?
BMXのコースってあまり多くないので、一旦離れてしまうと「両方」はなかなか難しいです。1回離れて、戻れる自信もない。なので今は「転向」のつもりでトラック競技に出ています。
でもトラック競技に声をかけてもらって、「こういった形で活躍できるんなら、これはチャンスかも」と思えたことも本当です。去年の無念を晴らす場がなかったのは残念ですが、今はトラック競技で頑張ろうと思っています。悔しい思いはこっちで力に変えようと思います!
私って「自転車が好き」だったんだ
Q:トラック競技に転向するきっかけは、BMXレーサーを対象としたトラック競技への適性テストだったかと思います。その時、どのようなことを感じましたか?
私はこれまで、自転車といえばBMXしか乗ったことがありませんでした。ピストバイクはおろか、ロードバイクにすら乗ったことがない。トラック競技テストの時に初めてトラックバイクに乗った時、何かわからないけど楽しくて。
「他の自転車でも楽しいんだ」ってテストの時に初めて思いました。
BMXは大好きだったけど、たぶん私って「自転車が好き」だったんですね。
BMXが好きだしBMXで強くなれたら良かったけれど、こうやって機会をもらえたから、このフィールドでとにかく強くなりたい。速く走りたい。そう思いました。
Q:BMXでもナショナルチームの枠にいますが、トラックに来て環境の違いは感じますか?
めちゃくちゃ感じます。こんな環境に誘っていただいてとてもありがたいと思っています。
今でもBMXのナショナルチームには一応名前が残ってるんです。でも入っていても、一緒に集まって練習をやるってことはなくて……「アジア選手権いきまーす、◯月◯日にここ集合ね」って感じ。今は「自分は練習するだけ」の環境を作っていただいているので、とてもありがたいと思います。
Q:実家のご家族は、このチャレンジをどのように受け止めてますか?
サポートしてくれてます。「好きなことをやるんなら、それを応援するよ」って。
実は今、伊豆で乗ってる車も実家の車。私の車ってわけじゃないんですよね(笑)一旦大阪に帰ると思ってたんですが、そのまま伊豆で暮らすことになったので……だから「ごめんね」って言いながら乗っています。
「速さ」が「強さ」に直結する面白さ
Q:今の酒井選手は走るたびに日本記録を更新するので、観る側としたら「おいおいどこまで行くんだ」という気持ちになってしまいます。
そんなことないですよ(笑)
BMXってタイムが速ければ必ず勝てるわけじゃないのですが、チームスプリントの1走は「速さが勝ちに直結する」ポジションです。その数字の変化とか、成長が目で見てわかるところはすごく楽しいですね。
あと、これは今の時期だからこそかもですが、できることがどんどん増えていくのが楽しいです。
Q:タイムの良さって、走っていて実感できるものですか?
今はまだそれほど強くないですね。アジア選手権の時は500mタイムトライアルで1本目が19秒2、2本目が19秒1(※1周目のタイム、2本とも最終的に日本記録を更新)だったのですが、この差は走っている時はわからなかったです。終わってタイムを聞いて「ああ、良かったんや」ってわかる感じ。
Q:スタートは顔を上げて、立ち漕ぎでぐっぐっと漕ぎ始めますよね。一旦座ってからって、下を見てるんですか、それとも前を見てますか?
私は前を向いている方だと思います。下を向いたらどっか違うところに行っちゃうので……でも空力的なことを考えたら、下を向いた方が体が小さくなるので、良さそうですよね。まだそこまでいけてないです。
Q:チームスプリントは1走なので1周で離脱するわけですが、1周走り終わった時の疲れ具合ってどんなものですか?
レース前が100だとして、0まで使い切ってる……つもり……そうであって欲しい……(笑)
出し切れているかわからないくらい「気づいたらゴール」って感じなんです。とりあえず一生懸命踏んでいます。
Q:最後に、世界選手権での個人の目標を教えてください。
アジア選手権の時の500mタイムトライアルで出した、19秒1が私の1周のベストタイムです。同じくらいか、それより速いタイムを出したいです。世界を見れば18秒7くらいの選手がいるので、18秒5くらいを出せるようにならなきゃ勝てない。いつかは18秒台を出したいですね。
Q:今は伸び代や期待感もすごく大きい時期ですよね。
はい、何もわからないけれど、新しいことに挑戦する楽しさはすごく感じています!