2022年10月にフランスで実施された『2022世界選手権トラック』。世界の強者が集うこの大会で、佐藤水菜は2年連続、ケイリン銀メダル獲得を果たした。
決勝戦直後は「去年の2倍悔しい!」と話していた佐藤だが、2021年のチャンピオン、リー ソフィー・フリードリッヒ(ドイツ)との差は、昨年に比べ確実に近づいていた。
今回は、そんな佐藤水菜にインタビューを実施。世界選手権(ケイリン)の予選から決勝にかけての全レースを振り返ってもらった。
また、世界選手権を終えて見えてきた今後の課題にも言及。ケイリンでは敵なしとも言える佐藤水菜の、世界で戦う強さの秘密を深堀する。
佐藤水菜 世界選手権成績
ケイリン:2位
チームスプリント:7位 ※日本新記録達成(48秒074)
スプリント:16位
予選:反応は悪くないけど判断が遅かった
Q:ケイリン予選、1回戦のレースから振り返っていただきましょう。まず最後尾でしたが、どのようなことを考えていましたか?
人数が5人だったので特に焦ることもありませんでした。先頭のウクライナの選手*がどのようにも動ける万能型の選手なので、彼女が出るときには警戒しなければいけないなと思っていました。
※オレナ・スタリコワ
私の前にいたドイツの選手*は長めに仕掛けるタイプなので、その子の動きも警戒していました。この2人に注意して走っていた感じです。
※アレッサ カトリオナ・プロップスター
Q:1本目ということで、体が固まっていたなどありますか?
それは特にありませんでした。自分の力がどこまで通用するかわからないし、どのレベルなのか全然読めなかったです。挑戦者というよりは様子見、という感じでした。
Q:残り2周を切っても動きを見せませんでしたね。
行こうかなと思ったところで、他の選手が動く素振りを見せてきたんですよね。そこで「行かせてもいいかな」と思っちゃったんですけど、思ったより伸びていかない、前に行かなくて。
そこで瞬時に自分で行くように判断しました。それが残り1周くらいですね。でも動いたものの間に合わず、という結果になりました。反応は悪くないけど、自分の判断がちょっと遅かったと思います。
Q:最近のガールズケイリンでのレースを合わせても、珍しい展開だなと思っていました。
他力本願だったかな(笑)自力でも良いんですけど、このレベルになるとみんなが前に出てくれるから、無理に行かなくても、というところはありました。
敗者復活戦:「駆けたら負けない」自信があった
Q:そして敗者復活戦です。梅川風子選手と同組でした。スタートしてすぐ、前で日本選手が2人並ぶ展開となりました。
(車番を決めるくじ引きで)風子さんが1を引いて、私が次にタブレットをタッチしたら2が出たから、2人で笑っちゃいました。
敗者復活戦としては嬉しくない並びですが、レースということを考えると、並べたことはアドバンテージでした。注意している選手が自分の前なら、その人を見ていられるし、動いたらすぐ反応できます。
Q:ということは対戦メンバーの4人のうち、梅川選手を警戒していた?
そうですね。でも後ろの2人の選手も実力のある選手だと思っていましたから、どう牽制しながら自分が1番で帰ってこられるかだけ考えていました。
Q:前との距離を大きく開けてから、残り1周半でスパート。この辺りは?
もうちょっと車間が欲しかったですけど、スピードを落とすくらいなら車間を詰めなきゃいけないような感じでしたね。出てしまえば自分の走りができるとも考えていました。なんとか日本人2人で勝ち上がれたら……と思っていたけど、難しかったですね。
Q:前に出てしまえば自信アリということですか?
パリはバンクの特徴的に抜きにくいんです。同じ力だったら、出てしまった方が負けにくいかな、と考えていました。1回戦で自分の力も把握できて「駆けたら負けることはないだろうな」とも思っていました。1回戦で感触を得た結果ですね。あとは誰を準々決勝に進出させるかも意識していました。
一緒に頑張ってきたから2人で勝ち上がりたかった
Q:日本人2人で勝ち上がりたい、という思いがあったのですね?
はい。一つは手の内がわかっている選手なので、そのほうが走りやすいということ。あとは……「日本チームだから」ということはあまり考えていないし、考えるのはあまり良くないとも思うんですが、一緒に頑張りたいとも思っていました。
Q:でもレースですから、そうもいかず。
はい。流れのままに走るだけなので。