2016年にトラック競技の短距離ヘッドコーチに就任し、東京2020オリンピックまでに世界の大会でメダルを量産し「世界トップレベル」にまで日本を飛躍させたブノワ・ベトゥ

2021全日本選手権トラック開催期間中に実施された共同記者会見で、今後の日本の自転車競技が発展する上で重要なこと、東京2020オリンピックの総括など、ブノワ・ベトゥ氏の考えを存分に聞いた。

「15年の差」を埋めた”チーム”

Q:東京2020オリンピックまでの活動の振り返りをお願いします。

私がコーチに就任した当時(2016年)、選手は数人しかおらず、設備は椅子しか無い状態でゼロからスタートを切りました。就任1年目に香港で開催された世界選手権では、世界と日本のレベル差を知りました。世界は、遥か遠くに思えました。

しかし私は、当初から日本の選手達に才能がある事を感じていたので、ミゲル・トーレス(HPCJC全体統括)やジェイソン・ニブレット(短距離コーチ)と協力し、5年間に及び肉体面や精神面を強化し、競争力のある選手の育成に努めました。

Miguel Torres

ミゲル・トーレス

2021 Track Cycling World Championships, Roubaix, NIBLETT Jason(JPN)ジェイソン・ニブレット, アリス・ボナミ(JPN)

ジェイソン・ニブレット

選手の強化には、科学面でのサポートも重要で、自転車機材・ホイール・ワンピースなどの開発には時間とエネルギーを要しました。世界トップレベルの選手達とは、肉体面で同レベルだったとしても使用する機材で差がついてしまいます。

私達は限られた時間の中で「15年遅れている」と言われた世界と日本との差を埋めなければならなかった。

そこには裏でサポートしてくれた人々の存在がありました。HPCJCのサポートにより人材が集まり、自転車開発、ヘルメットやスキンスーツの開発など様々な面でたくさんの方々が協力してくれました。

また開発と同時に、選手育成も行わなれけばなりませんでした。短距離チームには現役の競輪選手が多く、トラック競技と日本の競輪が両立出来る事を証明する事が必要でした。

東京2020オリンピックは、パリに向けての一歩を踏み出したきっかけとなった、そう思います。

成績を出すには時間が必要

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