これまでの振り返り

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成績を出すには時間が必要

Women's Keirin / 2021 Track Cycling World Championships, Roubaix, SATO Mina(JPN)佐藤水菜, ジェイソン・ニブレット

パリへの準備も並行していた今年の世界選手権では、女子ケイリンで佐藤水菜選手が初の銀メダルを獲得しました。ガールズ競輪の選手である彼女がナショナルチームに加入したのは、今から2年前の事です。

世界共通の事ですが、育成プログラムが成績に反映されるまでは大変な時間がかかります。世界で最も成功していると言えるイギリスのチームを例に挙げると、成績を出すまでに6〜7年間掛かりました。

この“日本人女子初のケイリン種目での銀メダル獲得”の背景には、日本競輪選手養成所の協力があります。

日本競輪選手養成所(JIK)第121,122回生 第2回記録会

養成所卒業後にナショナルチームへ加入という流れを作ることにより、常に次世代の人材が育っているという環境を築くのです。

パリオリンピックでは、短距離・中長距離共にメダルの獲得を目標にします。同じように高い目標を持つみんなが協力することで、素晴らしい成績が生まれます。

いつでも扉は開いている

そして今後、私たちが強調していきたいのは「ナショナルチームの扉は”いつでも”開いている」ということ。

我々の現状の弱みは、日本国内の高校や大学との“コネクションの薄さ”です。選手自身や高校、大学側からの連絡も歓迎しています。どのように新しい才能を発掘するのかという点が、今までの私達に課された問題でした。今後は新しい才能を発掘する事に注力していきたいです。

子どもが自転車競技に参加できる環境づくりを

「この5年間は永遠に刻まれる」長い冒険も、終わりが間もなく/ブノワ・ベトゥHCインタビュー

今後について触れるならば、そもそも日本が抱えている根本的な問題に触れなければいけません。それは子ども達が自転車競技に関わる機会が少ないことが挙げられます。

日本では一般的に、自転車競技を始めるのは高校生です。そして我々の短距離日本ナショナルチームでの“若手選手”と呼ばれるのは20歳〜25歳の選手です。では空手や柔道はどうでしょう?若手は10代の選手たちを指すと思います。20歳を越えてから本格的な育成を始めたとして、果たして強くなれるでしょうか。

自転車には、子どもの頃から始めないと伸ばせない能力や技術が沢山あります。この事実は「チームスプリントの第1走者が少ない」問題にも繋がっています。

トラック競技だけでなく、今後の自転車競技の発展を考えると、子どもがもっと気軽に参加できる環境作りをしていく事が重要となります。

オリンピックの振り返り等ご質問を頂く事が多いのですが、成績だけでなく物事をもっと全体的に見て欲しいです。橋本(英也)選手や新田(祐大)選手には、高いポテンシャルがあるにも関わらず「自分の全てを出しきれなかった」という事実が残りました。もっと、若い時から準備を始めていればと。肉体的な準備はできても、精神面においては子どもの頃から育てるべき部分もあります。

多くの子どもたちが関われる環境があれば、競技人口も増えて、人々の興味も増していくはずです。そしてその中から強い選手も出てきます。そういった文化的な背景を作り上げていくことが日本の自転車競技にとって今後必要なことになります。

“我々は常にドアを開いている”クレイグ・グリフィン 中長距離ヘッドコーチ インタビュー