第4種目ポイントレース
3種目目までの順位によって得たポイントを持ち点としてスタートするオムニアムのポイントレース。距離は20km、トラック80周回。ここまでの総合順位上位5人のポイント数は以下の通り。梶原としては金メダルも狙えるが、下位との逆転も有りうるポイント差。前後を見ながらのレースとなる。
第4種目ポイントレース開始時点の総合順位
1位 | ジェニファー・バレンテ | アメリカ | 110 Pts. |
2位 | 梶原悠未 | 日本 | 108 Pts. |
3位 | アニータ・ステンバーグ | ノルウェー | 94 Pts. |
4位 | アマリー・ディデリクセン | デンマーク | 92 Pts. |
5位 | キルステン・ウィルト | オランダ | 90 Pts. |
レースは最初のスプリント周回で、いきなり暫定トップのバレンテが1着5ポイントを獲得して暫定2位の梶原を引き離す。
また3回目(残り50周)のスプリント周回でもバレンテがポイントを狙うが、ここは梶原もスプリントに加わって、バレンテが2着3ポイント、梶原は3着2ポイント獲得。この時点の総合順位とポイント数は以下の通り。
3回目のスプリント周回後の総合順位
1位 | ジェニファー・バレンテ | アメリカ | 118 Pts. |
2位 | 梶原悠未 | 日本 | 110 Pts. |
3位 | アマリー・ディデリクセン | デンマーク | 97 Pts. |
4位 | アニータ・ステンバーグ | ノルウェー | 95 Pts. |
5位 | キルステン・ウィルト | オランダ | 94 Pts. |
レースは中盤以降、梶原より下位の選手たちの動きが激しくなる。梶原は上位陣でポイント数が近く、かつ力のあるデンマークのディデリクセンやオランダのウィルトの動きを警戒しつつレースを進める。特にトラックとロードで数々の実績を持つウィルトの動きからは目が離せない。
そしてレース終盤、ウィルトは7回目のスプリント周回で1着5ポイントを獲得して暫定3位に浮上する。中盤以降なかなかスプリントに絡めずポイントを伸ばせない梶原に6ポイント差まで迫ってくる。
そして最後のスプリント周回前には梶原が落車に見舞われる。残りの周回数が「9」となった直後、ウィルトと接触してトラック上に投げ出されてしまった。幸いレースには直ぐに復帰はできたものの、痛んだ体で最終スプリントに臨まなければならない状況となった。
フィニッシュとなる最後のスプリント周回は得点が倍になるため、1着になれば10ポイント、2着で6ポイント、3着で4ポイント、4着で2ポイントを加算できる。計算上暫定トップのバレンテは2位の梶原だけをマークすればいいが、梶原は2位の位置を守るためにウィルトとディデリクセンの2人をマークしなければならない。
7回目のスプリント周回後の総合順位
1位 | ジェニファー・バレンテ | アメリカ | 118 Pts. |
2位 | 梶原悠未 | 日本 | 110 Pts. |
3位 | キルステン・ウィルト | オランダ | 104 Pts. |
4位 | アマリー・ディデリクセン | デンマーク | 103 Pts. |
5位 | アニータ・ステンバーグ | ノルウェー | 95 Pts. |
残り6周で落車から復帰した梶原はすぐにウィルトとディデリクセンが見えるポジションに入る。そして迎えた最終周回。
先頭には少しでも順位を上げたいイギリスのケニー、2番目には金メダルを確実なものにしたいアメリカのバレンテ。そしてその後ろにはウィルト。ディデリクセンは後れをとって集団前方に姿はない。また梶原も落車の影響があるのか後方からこの最終スプリントを見守るのみとなった。
最後のフィニッシュは1着ケニー、2着にバレンテ、そして3着にウィルト。ウィルトは4ポイント獲得にとどまり合計108ポイント。この結果、2ポイント差で梶原の銀メダル獲得が決まった。
自転車競技の日本人女子選手のメダル獲得は史上初、東京オリンピックの最終日に歴史を刻んだ結果となった。
Text:伴達朗