2026年6月12日(金)〜15日(月)に伊豆ベロドロームで開催される『2026全日本自転車競技選手権大会トラック』。通称“全トラ”は各種目の日本一を決めるまさに最高峰の舞台だが、その裏では2025年大会から正式に始まった2つの「アワード」が存在する。

大会2日目の13日(土)、短距離種目コーチ陣の見せ場である「プッシュアワード」、そして最終日の15日(月)、1kmTTの戦いの果てにある栄光「苦しみアワード」である。

“プッシュアワード”とは

プッシュとは、スプリント種目の予選として行われる200mフライングタイムトライアル(200mFTT:ハロン)のスタートで、選手をトラック上に送り込むため、コーチやチームスタッフが選手を押すこと。

その「プッシュ」を審査員のフィーリングで採点し、勝手に賞を授与し始めたことが起源のプッシュアワード。国際大会では各国のコーチがそれぞれ独自のスタイルでプッシュを行っており、過激に飛び上がったり、カエルのように跳んでいたりとバラエティ豊かである。

表向きの評価基準は以下の3点。
実際は「なんとなく」もとい審査員の独断と偏見で選ばれる。

① 芸術点
② 技術点
③ 消費カロリー(なんとなく見た感じ)

昨年の優勝者のプッシュをご覧いただこう

ジョセフ・トゥルーマン, Joseph Truman, マシュー・リチャードソン, Matthew RICHARDSON, 男子スプリント 予選, Men's Sprint, 2026ジャパントラックカップ Ⅱ, 伊豆ベロドローム, 2026 Japan Track Cup Ⅱ, Izu Velodrome, Japan

5月の『2026ジャパントラックカップ』ではジョセフ・トゥルーマンのプッシュをマシュー・リチャードソンが担当するという豪華な一幕も。ジャパトラに「プッシュアワード」があれば優勝候補だったかもしれない。

昨年、優勝候補として挙げられていたのはロバート・K・ハンソン。ナショナルチームの通訳ながら、トライアスロンやアイアンマンレースへ出場するなど高い身体能力を持ち、独特のフォームから繰り出されるプッシュは常に目を引く存在である。

佐藤水菜, 女子スプリント, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

そんな優勝候補を打ち破ったのは福永隼人。

スプリント, プッシュアワード, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

片手で選手をプッシュする独特なスタイルで力強く走り出すと、加速してワンジャンプ。

スプリント, プッシュアワード, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム
スプリント, プッシュアワード, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

着地と同時に右手で力強く選手を押し出し、自身は反動でクルっと回転。

スプリント, プッシュアワード, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム スプリント, プッシュアワード, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

まるで格闘ゲームの技のように、身体を回転させながら押し出す芸術点の高いプッシュを披露し、初代チャンピオンの栄冠を手にした。優勝者には記念のチャンピオンジャージと、副賞としてお米10kgとおかずセットが贈られるなど、気合いの入り方は本気である。

スプリント, プッシュアワード, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

スプリントの予選は選手のタイムだけでなく、ぜひ“プッシュ”にも注目しつつ現地・配信で楽しんでいただきたい。

【2025全日本選手権トラック】コーチ陣の芸術種目「プッシュアワード」を楽しもう!概要・これまでの受賞者・注目選手まとめ/大会2日目(8月23日)に実施

【2025全日本選手権トラック】初代プッシュチャンプに輝いたのは福永隼人/プッシュアワード

“苦しみアワード”とは

1kmTT(タイムトライアル)は静止状態からスタートし、1人ずつ1kmの距離を全力で走り抜け、そのタイムを争うシンプルな種目。しかし、約1分もの間、無酸素運動で全力を出し切る必要があり、体力の限界・肉体的苦痛に耐える精神力も含め、選手への負担は計り知れない。

新田祐大, 男子1kmTT, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

脚に溜まった乳酸が一気に痛みへと変わり、選手たちに襲いかかる。その痛みは、歴戦の猛者たちから以下のように形容されてきた。

走り終わった後は、両脚を鉄パイプで叩かれ続ける感じ(新田祐大)

机の角に、思いっきり足の小指をぶつけに行くような種目(深谷知広)

車のドアを勢いよく閉めて指を挟みに行く(テオ・ボス)

痛みと苦しみに苦悶する選手たちの姿からは、アスリートとして肉体の限界に挑戦する尊さすら感じさせる。その姿に敬意を表して、始まったのが「苦しみアワード」というわけだ。

審査項目は苦しみの表現の仕方のみ。もっとも苦しそうな表現を成し遂げた選手1名が栄光に輝く。

今年は中長距離選手の苦しむ姿に注目……?

実は今年は全トラの直後に競輪のG1レースである『高松宮記念杯競輪』『パールカップ』が開催されることもあり、ナショナルチームの短距離選手の多くが1kmTTのエントリーを見送っている(市田龍生都、尾野翔一がエントリー)。

中石湊, 男子1kmTT, 2025全日本選手権トラック, 伊豆ベロドローム

苦しみアワード初代チャンピオンに輝いた中石湊も今年のエントリーは見送っている

一方で、窪木一茂、兒島直樹、岡本勝哉らナショナルチーム所属の中長距離選手が数多くエントリーしているのが今年の注目ポイントだ。持久力やペース配分は“お家芸”のはずの中長距離選手たちだが、常に全速力を出し続ける1kmTTはあくまで短距離種目。

1kmにわたる自分自身との戦いの先にどんな表情を見せてくれるのか。今からご期待いただきたい。

【2025全日本選手権トラック】1kmTTの隠れた醍醐味? 「第1回苦しみアワード」覇者は……

個性的なアワードのほか、大会を盛り上げるイベントやブースの出店も多数行われる『2026全日本選手権トラック』。More CADENCEでも大会に向けて情報発信を続けていくのでぜひチェックして、現地での観戦を楽しみにしていただきたい。

▼昨年の全日本選手権のイベントの様子はこちら

【2025全日本選手権トラック】観るだけじゃない全トラへ 進化した会場の姿